シニア海外ロングステイ タイ編
第3回目 海外での高齢者医療
増成 ヒトミ


「今は健康でもいつどうなるかわからない」「持病があるのに海外に住めるのか」――高齢者と医療とは切っても切り離せない密接な関係にある。前回に引き続き、ロングステイコンサルティング(タイランド)株式会社の佐藤裕代表に、海外医療についての疑問点を伺った。


ワット・アルン ●ロングステイをされる方はどんな保険に加入されていますか。

ロングステイに来られる方のほとんどが、保険については無防備であるといえます。まず日本から海外旅行傷害保険を購入してくると保険料が割高で躊躇してしまうことと、タイの医療保険は外資系の商品で、契約やクレームに言葉の不安があるといえます。日本人専用の日本語対応で加入できる商品もありますが、65歳までしか加入できません。どちらもロングステイの保険として見た場合は合格点とはいえません。タイはロングステイを外貨獲得の手段として推進しているのに、こういう部分のインフラが整備されていません。

日本の国民健康保険は、日本の診療報酬制度に合致する部分しか適用になりません。住民票を抜かないでロングステイしている場合は、日本に帰国してから適用部分の証明書を翻訳して給付の申請ができますが、全額認められるとは限りません。

(参考)

・国民健康保険海外療養費支給制度
http://www.kokuho.or.jp/kokuho/kaigai/index.htm
・保険スクエアbang!(海外旅行保険の比較、オンライン契約が可能)
http://www.bang.co.jp/travel/index.html
・外務省「海外安全ホームページ」
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/

●持病がある場合はどうやって治療を受けたら良いのでしょう。
日本で掛かりつけの医師に、英文で申し送りや所見を詳細に書いてもらって持参します。タイ国内の病院を引っ越しやその他の理由で転院する場合、タイの法律では医療機関は所持している患者のカルテやデータを、転院先に提供しなければならないことになっています。食品や薬のアレルギーも命取りになることもあるので必ず記載してもらいます。また、タイで希望する病院に担当科があるかどうかも重要です。

バムルンラード病院の外国人受付 ●高齢者医療の体験談をお聞かせ下さい。
私の母の生前の例です。タイのお正月(ソンクラーン)休暇で、妻の実家があるチェンラーイ県に帰省していたときのことです。母の容態が急変し、入院しなければならないと近所のクリニックの医師の診断で実家から5分ほどの距離にある国立病院へ搬送しました。応急処置はしてくれたものの、国立病院は交通事故等で緊急に救命の必要があるときには外国人も受け入れるが、重体でも命に別状がなければ私立病院に行ってほしいと言われ、入院を断られました。ベッドはたくさん空いているのに非常に冷酷なのです。外国人はお金があるから私立病院に行くのが当然ということなのです。

救急車を手配して1時間かけて私立病院に転送しましたが、病院での待遇は天と地ほどの差があると実感しました。タイでは命も金次第といわれる所以です。私立の有名病院はタイの一般庶民からすればまだまだ高嶺の花なのです。やはり医療も一極集中で、高度医療や特殊治療はバンコクでなければできないものもあります。地方からはよく警察のヘリコプターでバンコクの警察病院に転送したりしています。もし地方に住まれる場合は、医療現場での言葉の問題や医療レベルをよく考えてから決断するべきでしょう。

●タイで医療を受ける場合のメリット、デメリットなど。
例えば、タイの大手私立病院の個室に入院したら至れり尽せりの医療が受けられるでしょう。スタッフが圧倒的に多いので手厚い医療、看護が保証されます。私立病院は日本と違い株式会社なので、サービスや看護体制が非常に充実しています。デメリットは高度医療等で何も保険がない場合、長期にわたる場合医療費が高額になることです。あとはやはり言葉の問題でしょう。但し、バンコクの大手私立病院には日本語通訳のサービスがある場合があります。

(参考)

バンコクの日本語通訳常駐病院
・Bangkok Bumrungrad Hospital
http://www.bumrungrad.com/japanese/
・Bangkok General Hospital
http://www.bangkokhospital.com/japanese/default.htm
・Praram 9 Hospital
http://www.praram9.com/japan/index.htm
・Samitivej Hospital
http://www.samitivej.co.th/

(取材協力)
・ロングステイコンサルティング(タイランド)株式会社
http://www.longstayconsulting.co.th/


<作者紹介>
増成 ヒトミ
97年からバンコク在住。スペースアルク「ヒトミのバンコクな毎日」、キレイコム「世界のキレイ・タイ編」、ウェブコラムマガジンのらり「挨拶は『もうごはん食べた?』」など好評連載中。
ご意見・ご感想は、編集部へ info@stepup.co.jp



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