ストーリー

失うものは何もない!愛する家族を奪われた復讐に燃え、

男はたった一人でローマ帝国に立ち向かった

将軍から裏切り者の奴隷へ、そして最強の剣闘士へ―。
無残に殺された妻と子の復讐を果たすため、
過酷な戦いの場へ身を投じる主人公マキシマス。

 

  将軍


 

西暦180年、大ローマ帝国 ―

時の皇帝マルクス・アウレリウスに全幅の信頼をおかれたアエリウス・マキシマス将軍は、しんしんと雪が降り注ぐ森の中で、何千人もの兵を従え、勢力を拡大するための壮絶な戦闘を繰り広げていた。幾人もの死者を出しながらも、戦いに勝った戦場を歩くマキシマス将軍の姿は、誰の目にも勇ましく映った。そこへ駆けつけたのは、皇帝の息子コモドゥスと、その姉ルッシラ。次期皇帝の座を信じるコモドゥスは、大勢の部下に囲まれ、アウレリウス皇帝からもねぎらいの言葉をかけられているマキシマス将軍を、複雑な表情で見つめた。
戦いの疲れを癒すために野営するローマ帝国軍。その夜、皇帝は将軍に、自らの地位を託す思いを告げた。次期皇帝の座を目の前にしながらも、長い戦闘のために愛する妻と子に会えずにいたマキシマス将軍は、複雑な思いから、その場での決意は避けた。その後すぐ、マキシマスの元へルッシラが訪れた。かつてからのマキシマスへの想いを口にするルッシラだが、彼の眼差しの向こうには、遠くで待つ最愛の家族しかなかった。

アウレリウス皇帝は、息子コモドゥスに残酷ではあるが、伝えなければならないことを告げた。次期皇帝は、おまえではなく、マキシマス将軍を考えていると。愕然とするコモドゥス。彼にとっては、愛する父親としての存在であると同時に、皇帝の地位を自らに約束するはずだった存在であるマルクス・アウレリウス。

しかし今は、愛よりも確実に強い野心がコモドゥスの全身を貫いていた。父親への愛を伝えつつも、皇帝への野心を打ち砕いたマルクス・アウレリウスの顔を、自らの胸に抱いた。そして、コモドゥスは涙ながらに、その手にあらん限りの力を込め、父親そして皇帝の息の根を止めた。

コモドゥスは側近たちを使い、即行動を開始した。まず、自分にとって最も不必要な人物、アエリウス・マキシマス将軍を抹殺すべく、深い森の奥へと彼を連れ去り、処刑を企てた。しかし、歴戦練磨の勇士マキシマス将軍は、絶体絶命の場を間一髪切り抜け、遠い地で待つ最愛の家族の元へ馬を駆った。肉体の限界を越え、瀕死の状態でありながらも、ついに目前に迫った暖かい我家。しかし、時すでに遅く、やっと我家に辿りついたマキシマスの眼前に迫ったものは、信じられない光景、残虐に吊るし上げられた愛すべき妻と息子の姿だった。生きる糧を奪われたマキシマスは、自らの手で妻と子の亡骸を埋め、その側に伏し続けた。

 

  奴隷


 

彼が次に目を覚ました時は、野獣や黒人たちと共に檻に入れられ運ばれていく道中だった。辿り着いた先は、奴隷商人たちが奴隷を買う市場。それも、剣闘士奴隷としての運命を余儀なくされる場だった。そこでマキシマスは、剣闘士を養成する奴隷商人プロキシモに、ジュバという名の黒人奴隷と共に買われた。彼はもはや、大ローマ皇帝の信頼を一身に集めた将軍から、鎖をつけられ自由を奪われた剣闘士奴隷のひとりとなっていた。劣悪な環境の中で、ひたすら相手を倒すべく剣のさばきを教え込まれる剣闘士奴隷たち。しかし、マキシマスにとって剣を持つ意味は、そこには見出せなかった。だが、観衆を楽しませるため円形の闘技場に放り込まれた彼は、迫り来る敵と武器から身を守るため剣と楯を持ち、生き残らなければならない。鋭い剣さばきで次々と敵をなぎ倒すマキシマスは、やがて観衆から歓声を浴びる存在となっていた。

一方、ローマの中心に威容を誇る巨大コロシアム。そこで繰り広げられる剣闘士たちの壮絶な死闘は、ローマ市民にとって最高の娯楽であり、コモドゥス皇帝が民衆の支持を堅固なものにするための場でもあった。

 

  剣闘士


 

プロキシモは、無敵の存在となったマキシマスら剣闘士たちを引き連れ、ローマ帝国の大観衆に埋め尽くされた巨大コロシアムに乗り込んだ。そこでは、虎が襲いかかり、車輪に武器が着いた戦車から矢が放たれ、剣闘士たちにとって絶体絶命の状況が民衆の興奮を煽っていた。しかし仮面をつけた剣闘士マキシマスは、見事な闘いぶりで生き残り、その存在は観戦していたコモドゥス皇帝の目を奪った。死闘が終わると、何万人もの大観衆は、全員が一丸となって親指を上に差し上げた。これは、民衆が剣闘士を英雄として迎え入れ、殺すなという合図であった。闘技場に降り立ったコモドゥス皇帝は、民衆から大歓声を浴びる仮面をつけたひとりの剣闘士に近づき、名を尋ねた。「私はグラディエーター」――

そして、仮面を脱いだ剣闘士の顔を見て慄然とするコモドゥス皇帝。彼の前に立つ男は、自ら処刑したはずのマキシマス。コモドゥスにより地位を奪われ、最愛の妻子を奪われたグラディエーター。コモドゥス皇帝は、民衆の支持を得るため、しかしマキシマスとの宿命に震えながら、ゆっくりと親指を突き上げた。そしてその時こそ、息子を失った親として、妻を失った夫として、マキシマスが皇帝への復讐を新たに決意した瞬間だった…