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「大将浪漫」週刊サッカーダイジェスト連載コラム

 連載第60回 【今週のキーワード】北朝鮮戦

 ワールドカップ・アジア最終予選の初戦、北朝鮮戦は難しい試合だったけど、勝点3が取れて良かった。この勝利は大きいね。日本と北朝鮮との大きな違いは選手層なんじゃないかな。日本には切り札、流れを変えられる選手がいる。北朝鮮にはいなかった。それが明暗を分けた大きな要因だと思う。

 苦戦した最大の要因はプレッシャーだと思う。勝って当たり前、ワールドカップ出場を決めて当たり前という風潮のなかで最終予選の初戦を迎えた。そのようなプレッシャーを受けるとどうなるのかと言うと、まずリスクを冒さなくなる。ほんのちょっとしたことなんだけど、それが消極的な戦いを生む。足元へのパスが多くなって、動きが少なくなって横パスが増えるんだ。また、1点目が早い段階に入ったことで、北朝鮮にしてみたら、もう攻めるしかなくなった。吹っ切れたと思う。そうすると、日本は受けざるを得ない。そして、2点目を早く取れなかったことも北朝鮮の逆襲を許した大きな要因だろうね。

 今回、ジーコ監督は国内組を先発させた。選手たちの動きは少し重そうだったけど、調子自体はそんなに悪いとは思わなかった。宮崎キャンプ、親善試合を経て積み上げてきたものが形になっていた。だから日本が悪かったというより、北朝鮮の出来が良かったのではないかな。北朝鮮は日本への対抗心を強く持っている。彼らは昔から球際の強さと90分間走り続ける体力を兼ね備えている。それが彼らのスタイル。今回もそれを前面に押し出して主導権を握る時間があったね。しかも、思った以上にワンタッチ、ツータッチで判断良くボールを回すシーンが目に付いた。北朝鮮の得点シーンなんて、まさにそう。非常に洗練された動きで日本ゴールを陥れたでしょ。なかなかあんなゴールは見られない。くさびに入った時の角度、パスの出し方、パススピードが的確。彼らは同じチームで長く練習を積んで、合宿も長く行なうことができた。だからコンビネーションが良かった。

 一方の日本は、ロスタイムの大黒のゴールで辛くも逃げ切った。大黒は短い時間で少ししかチャンスがないなかでゴールを決めた。あのゴールは非常に難易度が高い。真後ろからきたボールに対して反転してノートラップでシュートを打っている。あのポジションを取っていたのはストライカーらしいなと思ったね。それに、利き足じゃない左足でのゴールでしょ。普通、あのシーンではボールを止めたくなるんだよね。それを直接振り抜いたのは素晴らしい。大黒はゲルト・ミュラー(元西ドイツ代表)のようなタイプだね。基本的にはワンタッチゴーラーだけど、反転する力や一歩前に抜け出す早さがある。昨季、Jリーグで20得点しているけど、それも納得できるね。ただ、彼の場合はこれからが大事。ジーコ監督はおそらく、今後2、3回はチャンスをくれると思う。その期待にしっかり応えないと、アピールできない。代表のFW争いは熾烈だから、チャンスを逃したらすぐにポジションを失ってしまう。今後も頑張って欲しいね。

 中村と高原は、意地を見せてくれた。流れを変えたし、存在感があった。出場した時のシチュエーションもモチベーションが高まるような場面だった。必要とされて出るわけだから意気に感じたことだろう。いまの日本代表は11人だけで戦っているわけではない。12、13、14番目の選手が試合を決めることもある。それを改めて感じた一戦だった。

 今回は最高のスタートが切れた。次のイラン戦は良い雰囲気で臨めることだろう。最終予選で大事なことは勝点を積み上げていくこと。内容はその次だ。ホームの初戦、勝点3を獲れたことで、今後のプランも立てやすくなるだろう。
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