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「大将浪漫」週刊サッカーダイジェスト連載コラム

 連載第56回 【今週のキーワード】今年の仕事

  今年もメディアの仕事が中心だった。でも、新しいことにチャレンジした年でもあったんだ。それはテレビ朝日系列で放送されている『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めたこと。ただ試合を解説するだけじゃなく、いろいろなことにトライした。生放送だから、つねに高い緊張感を持ってやっていたよ。サッカーはかなり注目されているコンテンツだから、それを伝えていくことにやりがいはあった。でも、うまくいった点と、全然うまくいかなかった点がある。

  とにかく手応えが1回、1回違った。良かったり悪かったり…。最初は何も分からずに一生懸命だった。ルーキーみたいなもんだね。出始めの頃は一時的に勢いがあって良かった時期もあったけど、だんだんキャスターの難しさが分かってくる。それと、慣れてくると欲を出してしまうんだよね。もう少しこうしたほうがいいんじゃないかとか。そうすると最初の頃の初々しさがなくなってしまう。スポーツと一緒だね。やればやるほど奥深くなる。一番痛感したのは、「俺って言葉を知らないな」ってこと。もう少し表現方法をたくさん知らなきゃ駄目だなって。それが分かったのは大きい。

  また、今年は海外に行かせてもらった。ポルトガルで開催されたユーロ2004に行ったし、アテネオリンピックの取材もさせてもらった。あと、ロンドンやオマーンにも行った。海外でサッカーを観るのは、もともとサッカーを辞めてからやりたいことのひとつだった。だから、忙しかったけど、非常に充実していた。

  去年はスケジュールに追われていた感がある。仕事が不慣れだったこともあってアタフタしていた。でも今年は、緊張感のある仕事が多かったけど、すごく中身が濃かったな。仕事を整理することができて、やりたい仕事を少しできつつあるのかな。

  とにかく現場でサッカーを観られたのが大きい。現場に行かないと分からない部分ってある。その場所の空気を知ることができる。また、そこで何を感じるかが重要なんだよね。

  オリンピックでは世界との差を感じた。山本監督は「日本も世界に通じる部分があった」と言っていたけど、僕は逆に差を痛切に感じたね。ユーロも勉強になった。ダークホースだったギリシャが優勝したわけだけど、彼らは監督が代わって、あれだけの実力を身に着けた。サッカーに型はないんだなって思った。古い、新しい、評価する、評価しないと、いろいろな見方があるけど、結果を残すために戦術を徹底することの素晴らしさをギリシャには感じたね。守っているだけじゃ試合には勝てないけど、リスタートを磨けば活路を見出せる点とかね。

  いろいろなサッカーを観たけど、とくにアーセナルのサッカーは素晴らしかった。僕が理想とするサッカーだと思う。無理がないし無駄がない。美しいサッカーだよね。チーム全体に力が入りすぎていないし、個人も余分な力を入れていない。こんなサッカーができたらいいなというものを観られたのは良かった。どうしたらこんなサッカーができるのかとも思ったけどね。高い目標ではあるけど、アーセナルのサッカーは目ざしたいスタイル。まあ、あそこまで行き着くには、それなりのトレーニングが必要だし、メンバーも必要だと思うけどね。

  でもね、理想とするサッカーがありながら、そのチームが必ず勝者になるわけでもないところもサッカーの楽しさなんだよね。国によってサッカーに対する価値観が違う。勝つことを優先するのか、美しさを優先するのか。その違いを楽しむこともできるでしょ。

  でも、僕はやっぱり楽しいサッカーが好き。頭では理解しているんだよ。戦術が進歩するほど、しっかりとした守備がベースになければいけないということは。でも、そういうなかでもファンタジーを魅せてくれるようなチームに勝って欲しいんだよね。
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