|
|
 |
 |
| 連載第45回 【今週のキーワード】山本監督の決断 |
 |
アテネオリンピックに出場する18人が選出された。山本監督としては、本大会への出場権を勝ち取った選手の何人かを外さなきゃならなかったから苦渋の決断だったと思う。
ただ、選手選考に関しては妥当な選出だったという気はする。まずは、いろいろなポジションをこなせる選手が優先された。もしひとつのポジションしかできない選手だったら、スペシャルな能力を有していなければならない。また、アテネでは限られた人数で戦わなきゃならない。だから、単にうまい選手というだけでは駄目だ。レギュラーに何らかのアクシデントがあったときに、その穴をしっかりと埋められる選手というのも選考基準のひとつだったんだろう。
山本監督は「アテネ経由ドイツ行き」という標語を打ち立てている。メダルを獲得することも大事だけど、真剣勝負を通じて若い選手が経験を積んで大きく成長して、最終的にはドイツの舞台に立ってほしいと思っている。オリンピックの位置づけはそこにある。
オーバーエイジに関しては、予選よりもチーム力を上積みしなければならないという考えから選出したんだろう。また、山本監督はオリンピックに対する意欲が高い選手しか選ばなかった。いまのオリンピック代表の面々はモチベーションが高い。だから、意識が高い選手じゃないと浮いてしまうと、監督は言っていた。選考された選手を見れば分かる。曽ヶ端、小野、そして高原。結局、高原は病気の影響で選出されなかったけど、納得のいく人選だ。3人はオリンピックに高い関心がある。そして、経験がある。
また、その選手のパーソナリティも大切だと思う。このオリンピック代表は誰かひとりの力で勝ってきたわけじゃない。そのなかに途中から入るわけだから、あまりに異質なキャラクターだとチーム全体が変に反応してしまう。その点、伸二などはまったく問題ない。彼はどこのポジションでもできるし、周りに合わすことができて戦術理解度が高い。そして、人間性は申し分ない。伸二がオリンピック代表に入ることに誰も異論はないはずだ。
山本監督は、しっかりと育成を考えて、選手を成長させるための方策を採っているように思う。オリンピックの最終目的はメダルじゃない。メダルを取るには予選の3試合以外に真剣勝負を3試合できる。あの年代で真剣勝負を数多くできれば、その後のサッカー人生に大きく作用する。そのためにメダルを目ざすんだということ。
そして、選手も順調に成長している。それは合宿、試合、すべての狙いが明確だから。この間のチュニジア戦も選考試合ということで選手にプレッシャーをかけた。「この時期にそんな選考をしていいのか」、「チームになっていないのでは?」という意見もある。でも、狙いがはっきりしているから納得できる。トップとは違って、育成の意味合いが強いカテゴリーであることを山本監督は認識している。もしA代表を率いていれば、違った手法を採るはず。トップには選手を育てるという意識はなく、結果が重要になるからね。
外から見ただけでは山本監督の本当の考えは分からないけど、明確な意思表示が出来ているところは僕も勉強になる。外部に発する言葉も非常にシンプル。その裏には複雑な戦術理論あるんだろうけど、分かりやすい。例えば、ボールを奪ったら15秒以内に攻めきるとかね。数字を提示することで選手に理解しやすくしている。
選手たちには、せっかく本番の舞台に立つ権利を得たわけだから、自分の通用するプレー、通用しないプレーを確かめてきて欲しい。そのためには自分の持っている力をすべて出し切ることが大切。チャレンジをしつづける選手が大きな自信をつかむことができる。つねに失敗しないようにと振舞っている選手は、大会に出場する意味がない。もし失敗しても今後の課題を見つけることができるんだ。戦うべきは相手ではなく、自分自身。その気持ちがあれば、結果は自然についてくると思うよ。 |
 |
|
 |