【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】 (up 2005/02/08)
「Shuffle―シャッフル―」
 昨年の「浪人街」で、自分の感情を押し殺しても愛する女性に献身的な想いを捧げる男を演じた伊原剛志が、打って変わって女たらしの刑事を演じる。パルコ劇場プロデュースの「Shuffle」は、演劇界の“大王”こと後藤ひろひとが書き下ろすハイパーテンション・ラブ・コメディ。ハイパーテンションと名付けられた通り、次から次へと事件が起こり、休む間もなく笑いの起きる舞台になりそうだ。伊原が演じるのは、女性を外見で判断し、美人を口説き落とすことを生きがいにしている刑事、通称シャッフル。ある日、捜査中の事故がもとで、目の前にいる人の顔が、他の人の顔と入れ替わって見える不思議な脳内視力(?)を持ってしまった彼が、それを周囲に隠しながら事件を解決するハメに。怖い上司、宿敵の窃盗犯、足手まといのパートナー、捜査を邪魔するジャズシンガーなど、曲者の女性に囲まれて右往左往するシャッフル=クールな二枚目なのにコメディアンな伊原を、たっぷり堪能したい。

≪この舞台のツボ [1] ウェルカムバック! ミセスめぐみ≫

初のタイトルロール(主人公の名前がタイトルになっている作品の主役)をコメディで飾る伊原剛志も必見だが、もうひとつ注目されているのが、結婚を機に休業していた奥菜恵がこの作品で1年半ぶりに復帰すること。
オファーを受けた奥菜は「大好きな舞台で、しかもコメディで仕事を再開できるのはうれしい」とノリノリ。稽古開始を待ち望んでいるという。気になる奥菜の役どころは、チビでメガネで冴えないルックスでベタベタな博多弁を話す元・警備員。担当していた宝石が盗まれてクビになり、責任をとってほしいと事件を担当することになったシャッフルに付いて回る幸子という女性。もちろん奥菜が演じるのだから、どこかのタイミングで「実はすごい美人だった」という展開になると予想されるが、やる気満々の奥菜はきっと、美人になる前の幸子も張り切って演じてくれることだろう。

≪この舞台のツボ [2] 大王こと後藤ひろひとって何者!?≫

「人間風車」「ダブリンの鐘つきカビ人間」「MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子vsザリガニ魔人〜」。いずれもパルコ劇場で上演され、大好評を得た。いずれも奇抜な設定と笑いを無理なく融合させ、いつの間にか観客を感動させてしまうという作品だった。これらの脚本を書いたのが、後藤ひろひと。大阪の劇団・遊気舎で活動していた80年代から「とんでもなくバカバカしい芝居をつくるヤツがいる」と評判を呼び、98年にPiper、01年に王立劇場を旗揚げして劇団として活動する一方、数多くのプロデュース公演の脚本や演出を手がけてきた。それだけでなく、作り物のような立派なヒゲをはじめとする強烈なルックス、一瞬で会場をさらうアドリブセンスなどで、自らも役者として活躍。今回の「Shuffle」は、彼がパルコで初めて作・演出の両方を手がける記念すべき作品。演出面でも、観た人がアッと驚くような仕掛けを練りに練っているらしい。

≪この舞台のツボ [3] 不思議な脚本を掛け算するキャスト≫

とんでもない事件が次々と起きる、つまり、とんでもない人物が次々と登場するのが、この脚本。そしてその「とんでもなさ」を、舞台に出てきただけで納得させるような個性派が見事に揃ったのがこの作品だ。G2プロデュースや阿佐ヶ谷スパイダースなど、ここ数年、舞台のスケジュールが2ヵ月と空かない売れっ子、山内圭哉。一直線でズレた人をやらせたら右に出る者はいない三上市朗。元宝塚・月組トップ娘役の風花舞。巨漢を生かして笑いも取るが、ストレートプレイでの深い演技もすごい平田敦子。関西では人気の漫才コンビ・水玉れっぷう隊の松谷賢示。小劇場界の雄・拙者ムニエルの看板女優・澤田育子。そして本人役で石野真子! ちなみに石野は、シャッフルがずっと憧れ続けている理想の女性像として登場するが、偶然にも伊原は中学生時代、部屋にポスターを張るほどの石野ファンだった。
「Shuffle―シャッフル―」 写真
>> バックナンバーへ
copyright (C) 2005 PIA corporation All Rights Reserved