SPECIAL OTHERSが、5thアルバム『Have a Nice Day』を完成させた。昨年はコラボイヤーと称して、様々なアーティストとコラボレーションした作品のみをリリースしていたため、フルアルバムとしては『THE GUIDE』以来、2年ぶり。歌うようなインストバンド、親しみやすいジャムバンド、といった彼らのイメージに留まらない、渋味や奔放さも内包した、これが俺たちだ!という自信が伝わってくる1枚になっている。また、初回限定盤には、今年3月に行われた、アメリカでの8日間に及ぶゲリラライブツアー『物凄い規模の全米ツアー!?』の密着ドキュメンタリー完全版を収録したDVDもついてくる。こちらも必見!
――昨年のコラボイヤーがあったからこそ、今作が生まれたというところはありますか?
宮原「ありますね。やっぱり、コラボでいろんな人たちと組んで、違いを知ったというか。この人にできても、俺たちには真似できないっていうことがあるっていうことを」
又吉「やれることを全うするというか」
宮原「そうだね。餅は餅屋っていう感じで、一人一人がひとつのプロフェッショナルであって、全部はできないって痛感させられたっていうか。例えば、凄く歌が上手かったりすると、俺たちにできないことをこの人たちは一生を掛けて自分のものにしているんだなって。そう考えると俺たちは、インストバンドとして楽器の鳴らし方を追求しているんだって思えるようになって」
宮原“TOYIN”良太(ds&perc)
柳下「そういうことを、コラボイヤーによってより強く思ったっていうかね」
宮原「だから、その反動というか」
柳下「インストバンドらしいものを作りたかったっていう」
芹澤「だから、今作は俺たちの餅屋の部分で、他の人にはできないことなんだと思う」
――だから等身大に聴こえてきたのかもしれない。
宮原「ああ、やっぱり。無理をしていない感じが出ているんだと思う」
柳下「テンション的にも、無理できなかったというかね。やっぱり、俺たちは俺たちのやりたいものを出して、それでついてきてくれたら、俺たちがやってきた甲斐があったぞっていう。全然無理せず、満足した作品が作れました」
――自分たちのキャパシティを知ることも大切なんですね。
宮原「そうですね。でも、注意したいのは、己を知ったのは今年だけかもしれないんですよね。来年からは背伸びしたいと思うかもしれない(笑)。今回は、コラボイヤーが明けたからこそのベクトルだったというかね」
又吉「うん、この作品を出して結果がついてきたら、次はああしようこうしようって考えるから、その時は背伸びしようって思うかもしれない」
宮原「その方が、いい作品ができるかもしれないしね」
柳下「今までは『THE GUIDE』とか『PB』でロック寄りなアプローチもやってきて。その反動が今きてるっていう。今作では、インストバンドとか、楽器の鳴らし方っていうところに注目していたんで」
芹澤「結局、いい作品ができる方向に自分たちが向いていけばいいだけの話で。信念思想に基づいたものしか作らない、っていう方が音楽的じゃないっていうか。こういうやり方の方が健全っていうか、自分たちとしてはしっくりきますけどね。だから背伸びするのも、その時に音楽がカッコよくなるからしてるだけだし」
芹澤“REMI”優真(key)
――初回限定盤には、アメリカでゲリラライブツアーを行った模様を収めたDVDも付いてくるんですよね。その時の経験も、今作には活かされていますか?
宮原「そうですね。いろんなプレイヤーがいるっていうものわかったし。グルーヴを学んで、演奏も変わって、アルバムに反映されたのかもしれない」
又吉「昔を思い出したところもあって」
芹澤「今思うと、アメリカに行ったことが、他の生活を変えたっていうか。音楽と密接に関係する出来事だから。全ての出来事が音楽を変えるキッカケになると思うんだけど。例えば、シャンプーを変えて、髪の毛が引っ掛からなくなって、ストレスがなくなっただけで、音楽が変わるかもしれないし。そういう意味ではアメリカに行ったことは直接的だから、もちろん音楽性にも出ると思う」
――会議室に呼びだされてアメリカ行きを知らされてましたけど、あれはガチだったんですか?
芹澤「ガチですよ(笑)。向こう行くまで知らなかったこともいっぱいあるし。300キロ走って、ニューヨークの外れのライブハウスに、シム・レッドモンド・バンドっていう俺たちの大好きなバンドが出ていいたんですけど、それも行ってから知ったんですよね」
又吉「スタッフ含め、誰も何も知らないまま行ったんで。だから、地図でこっからここまで行きますってなっても、実際歩いてみるとめちゃめちゃ遠いとか」
柳下「それをスタッフに問い詰めたら『わかってる人がいたら面白くないでしょ?』って言っていたけど(笑)」
芹澤「ざっくり行き場所だけは決まっていましたけどね。電波少年的でした」
――相当鍛えられたんじゃないですか?
宮原「そうですね。時差のない移動は何ともねえやって思うようになった(笑)」
柳下「もちろんライブをやっても、向こうの人たちは俺らのこと知らないし。たまーにファンの人が来てくれましたけど。でも、そういうのって実は、昔日本でやっていたことと全く同じことだったりして。そういうのを思い出しました。あと、ニューヨークやニューオリンズっていう、昔俺たちが聴き漁ってた人たちが活動していた場所で、その空気感を知れたのもよかったですね。それでも昔のことをいろいろ思い出して。あの頃カッコいいなって思っていた音楽は、この空気感の中で生まれたんだ! っていう」
柳下“DAYO”武史(g)
芹澤「ヤギ(柳下)とふたりで行ったニューオリンズのライブハウスでさ、ドクター・ジョンとセッションしていたっていうホームレスのおじさんがいたりして」
柳下「リアルだったね」
――今回のアルバムの曲は、アメリカから帰ってきて作ったんですか?
柳下「作ってた曲もあったし、帰ってきてから作った曲もあります。でも、アメリカに行くってわかって作ったものが多いですね。唯一『beautiful world』だけは10年近く前に作った曲なんですけど、これはタイミング的に今だなってみんなで話して」
――ある意味、これまでのスペアザのイメージで聴くと驚くような楽曲も多いですけど。
柳下「コラボではなく、4人がぽつんと残って、そこで何を考えるかっていう。そこで原点に戻って。自分たちのことを見詰め直した期間でしたね」
芹澤「らしさって言ったら、こっちの方が自分たちらしいんじゃないかな、って自分たちでは思っちゃうくらい。今までは、いろんなことをイメージしながら作ったものが、結果らしさって思われているのかもしれないけど、自分たちがリハーサルとかで発揮しているらしさは、こっちなんですよね」
宮原「あとは、ライブでセットリストを組む時に、こういう曲をやりたいのにないなあ、っていうものが入っているかもしれないですね。だから、今までにないタイプを求めていたのかもしれない」
又吉「まあ、今までいろいろやってきたじゃないですか。だから、次はこういうのですっていう、それだけじゃないですか? これも、僕らの中の引き出しの中にあって、今回はこんなんだけど、みんなどう? っていう」
又吉“SEGUN”優也(b)
――私の印象としては、経験や年齢を重ねてきたならではな作品なのかな、という気もしたんですよね。
宮原「ああ、今までやってなかったことをやりたいっていうのも、年を取ったからですもんね。絶対にふたりがソロをやらなきゃいけないって思っていたのも、今はなくなったし。芹澤の方が長かったら、ヤギは弾かなくてもいいとか。若い時は足し算の音作りがカッコいいと思っていたけれど、今作は引き算の音作りも入ってる」
柳下「ルールがあったわけではないけれど……」
芹澤「一番は俺がやったら次はヤギね、みたいな」
柳下「暗黙で対になると思っていたから」
宮原「でも、それは一曲の中での話だから。ライブ全体だと、大丈夫だったんだよね」
芹澤「もっと違うアプローチがあることに気付いたというか。いろんな人とやっていく中で、拳を突き上げない盛り上げ方も取り入れられたというか。もっと黒人的なノリとかが、どんどん面白くなってきて」
宮原「会社的にはね、万人に受けるものを出して、コラボで知ってくれた人たちを刈り取る、みたいなものを出して欲しかったんでしょうけど(笑)、どうしても俺たちはそういうモードに入れないから、好きなようにやるわって言って。でも、結果的に、毎回言ってるけど最高傑作を更新していると思っています」
芹澤「世の中に対して、俺らがどうですか? ってこのアルバムを持って寄っていくんじゃなく、俺らがこれを作ったからみんなに寄ってきてもらうっていう。寄っていくのも楽しかったけど、“今度は俺らの畑に寄っといでー!わかってくれるならこっちで盛り上がろうよ”っていう」
宮原「頑固なラーメン屋みたいな感じですね(笑)。俺の味を食え! みたいな」
Text●高橋美穂 Photo●中川有紀子
‘95年、高校の同級生だったメンバーで結成。メンバーは、柳下“DAYO”武史(g)、宮原“TOYIN”良太(ds&perc)、芹澤“REMI”優真(key)、又吉“SEGUN”優也(b)。2000年より本格的に活動開始。'06年6月ミニ・アルバム『IDOL』でメジャー・デビュー。デビュー時より、「FUJI ROCK FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」他、様々なフェスに出演、抜群のグルーヴ感あふれるサウンドとピースフルなパフォーマンスで人気を集める。'11年はコラボイヤーと銘打ち、様々なアーティストとのコラボレーション作品が話題に。これまでに4枚のオリジナル・フルアルバムをリリース。10月10日(水)に発売となる5thアルバム『Have a Nice Day』を携え、11月3日(土)より全国ツアー「QUTIMA Ver.15 Tour“Have a Nice Day”」をスタートする。日本のジャムバンド・シーンを牽引する存在。
オフィシャルホームページ
SPECIAL OTHERS QUTIMA Ver.15 Tour ”Have a Nice Day”
11月03日(土)横浜Bay Hall
11月04日(日)浜松窓枠
11月10日(土)新潟LOTS
11月11日(日) 金沢EIGHT HALL
11月15日(木) 札幌ペニーレーン24
11月17日(土) 青森QUARTER
11月18日(日) 仙台Rensa
11月22日(木) 松山サロンキティ
11月24日(土) 広島クラブクアトロ
11月25日(日) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
12月01日(土) 福岡DRUM LOGOS
12月02日(日) 長崎DRUM Be-7
12月07日(金) ZEPP NAGOYA
12月08日(土) なんばHatch
12月14日(金) 長野CLUB JUNK BOX
12月15日(土) 高崎club FLEEZ
12月18日(火) Zepp Divercity
12月24日(月) 沖縄桜坂セントラル
『Have a Nice Day』
10月10日(水)
3500円
VIZL-475(CD+DVD初回限定盤)
2800円
VICL-63882(CD 通常盤)
SPEEDSTAR RECORDS
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