TOP > 今週のこの人 > 曽我部恵一(曽我部恵一BAND)

「毎年出ているから色んな変化が客観的に分かるんですけど、お客さんには、今年もあそこに集まれて良かったね、という気持ちはあると思います。僕らは精一杯歌うだけですね。

――今年1月に札幌で起きた姉妹の孤独死事件を題材にした「街の冬」も心に響く曲ですね。曽我部さんが現実の事件に触発されて曲を書いたことも新鮮でした。

「実はそういうことって、やってこなかったんですよね。今、震災に触発された曲がありますけど、僕にはあまり響いてこなくて、現実の出来事にリアクションして生まれたはずの曲が、なんでこんなに薄っぺらいんだろうって思ったりします。僕はこの事件をネットのニュースで見て、すごく衝撃を受けたんです。すごく悔しかった。それを曲にしようなんて思っていなかったんですけど、プリントアウトして持っていました。ある日、この曲がぱっとできて、悲しいだとかこんな世界は間違っているという感じではなく、ただのニュースみたいに歌いたかった。これがロックだと思うんです」

――なるほど。サウンド面ではアレンジの幅が広がった分、演奏面のハードルは高くなったのではないでしょうか。バンド内でのコンセンサスはどのように?

「バンドのメンバーはついてきてくれました。もちろん『この曲、どうかな?』みたいな話もしながら進んでいくんだけど、僕が曲を作ることにひたすらついてきてくれましたね。レコーディング前に何十回も練習をして、新曲だけのライブをやって試してみたり、アレンジを考えたり、どうすればもっと良くなるかをテストしながら作っていきました。全部の曲を生演奏できるところに自信を持っていて、それは自分にとって大事なことのひとつなんです。どんな場所の、小さなライブハウスに行っても全曲できる。素晴しい芸術作品でありながら、パッと生演奏で見られるのはロックンロールの強みだと思います」

――生演奏できることを重視する理由とは?

「次にどんな音楽をやろうと考えるよりも、自分の歌を歌うというところに来ているからだと思います。明日大地震が起きてあっさり死ぬかも知れないし、とにかく自分の魂を燃やせるような歌を探すスタイルになっていて。地震が起こったとき、『自分も死ぬかもしれない』って思ったんです。そんな瞬間って今までなかったので、それをきっかけに変化した部分はあるかもしれない。だからといって、みんなで生きていこうとは思わなくて、どうせ死ぬんだからやり残すことがないように、どうせ売れても売れなくても同じだし、好きなことをしようって思う。何かあきらめがついたというか、腹をくくったというか……」

――その分、音楽を作ることに集中すると?

「自分の歌を5分間だけ思いっきり歌うことにしか興味がない。歌い手としてはそうあるべきだと思います。格闘家が格闘技のことを置いておいて平和運動をしてても、強くなって良い試合を見せてくれよって思うのと同じで、音楽家というのもそういう職業なのかな。もちろん歌や音楽を通して、色々とできると思いますよ。そこは否定しません。例えば反原発フェスとかをやって音楽を軸にした利益が誰かにとって有益に動いていくのは素晴しいことだと思います。ただ、僕は自分の歌を自分の歌として歌いたい、というだけの話です。芸術や表現、音楽って自由なもの。それがなくなったら、誰も興味を持たなくなるんじゃないかな。音楽はお金のために使うこともできるし、お題目を唱えることもできる。そして誰かが生死を賭けてただ歌うこともできるし、色んな風に存在しているんだと思う」

――この一年の経験の中で、曽我部さんのそうした音楽観もまたクリアになったと言えますか。

「そうですね。だからライブもずっと一生懸命やっています」

――楽曲の話に戻ると、14曲目の「ポエジー」のように、ロックサウンドの一つの完成形のような曲もあります。タイトなロックロールだけど、どこか優しい感じもあって。

「一皮むけた瞬間かもしれないですね。これは、下北で活動しているような若いインディーバンドを起用するCMの企画があって、僕らもピックアップされて作った曲なんです。“あなたの夢に応援歌”というキャッチコピーが用意されていて最初はちょっと『また応援歌かぁ……』って思ったんですけど、企画した皆さんに色々と話を聞くうちにすごく分かったんですよ。夢へ向かう気持ち、モチベーションを上げるエネルギーを与えるような曲、というものが今の時代に必要だという気持ちが。この曲は、少年少女が荒れ地の中に佇んでいるイメージ。呆然と立ち尽くしてるんだけど、心の奥に炎は燃えている、そういう風景の歌になったんじゃないかな。最初は『キラキラ!』や『魔法のバスに乗って』のように“まっすぐ行こうぜ”“輝こうぜ”というまっすぐな歌を作ろうとしたんだけど、作っていくうちに、よく分からない漠然としたところに着地した感じ。この分からなさって、今の自分にとってリアルなんです」

――その分からなさというのは、アルバム全体の印象でもありますね。完全な答えが出ているのではなく。

「情熱があるのと同時に、輝いている人なんて本当にいるの? まっすぐこの道を進めば本当にいいのか? という疑問を抱えているような曲ができたと思います」

――さて、4月6日(金)からは全国ツアーも始まります。

「今回は35箇所の長いツアーになります。基本はアルバムの曲をやるんですけど、色んな曲をやります。人間が音楽をやることのすごさ、本物のロックのライブを見せたいですね」

――「聴けや!」みたいな、攻撃的な気持ちもあるんでしょうか。

「いや、極めてフレンドリーなんですけど(笑)、命を賭けてやる感じです」

――メンバーの皆さんの気持ちも高まってきているところですか?

「今、バンドで練習中ですね」

――練習中、曽我部さんが怒ったりすることはあるんですか?

「怒るというわけではないけど、厳しい方だと思います。なかなか満足いかないから何度もやりますね。はっきり言うと、僕とバンドをやってもあまり楽しくないと思いますよ。ニコニコして、バンドって楽しいよね、みたいなことはないです。本番が終わって最高だったと言えれば、それでいいから。練習は面倒臭いことの積み重ねでいいかなって」

――なるほど。4月28日(土)にはARABAKI ROCK FESTにも出演されますね。

「毎年出ているから色んな変化が客観的に分かるんですけど、お客さんには、今年もあそこに集まれて良かったね、という気持ちはあると思います。僕らは精一杯歌うだけですね。

……震災があった3.11に、下北のライブハウスの前で途方に暮れたバンドマンがいて、『鹿児島から来て、今日ライブが中止になった』って話し掛けてきて、彼らのCDをもらったりして、『いつか一緒にできたらいいね』って別れたんです。ボヤケルズというバンドなんですけど、今回のツアーの鹿児島公演で出るんですよ。あれから一年経って、一緒にできることになって良かったなと思います。彼らは熱くて一生懸命歌ういいバンドですよ」

――鹿児島公演は4月12日(木)。今回はARABAKI を挟んでのツアーという感じですね。

「ツアーの息抜きにもなるし、楽しみですね。ARABAKIは商業的なロックフェスとは少し違っていて、お客さんの顔を見ていると、なんかスーパーに来たみたいな感じで、ほのぼのしていて良いんですよね。東京には整備されたフェスがいっぱいあって、それが自分にとっての身の丈だと思いがちだけど、それって本当に地に足が付いているものなのか。ものすごく作り上げられたものだったり、現実の生活とあまり接点がなかったりもするんじゃないかな。ARABAKIは、家に持って帰れるような気持ちであふれている。他のフェスと何か違って、ホッとしますね」

Text●神谷弘一(blueprint) Photo●吉田圭子

PROFILE

曽我部恵一(曽我部恵一BAND)
‘95年、サニーデイ・サービスのボーカル&ギターでデビュー。’01年にソロ活動をスタート。’04年には自身のレーベル「ROSE RECORDS」を設立。’06年には活動の拠点となる曽我部恵一BANDを結成し、精力的に活動を展開中。

オフィシャルホームページ


TICKET

『曽我部恵一BAND TOUR 2012』

4月06日(金)千葉 LOOK
4月07日(土)福島 Out Line
4月08日(日)埼玉 西川口 LIVE HOUSE Hearts
4月12日(木)鹿児島 SR HALL スペシャルゲスト:ボヤケルズ
4月13日(金)熊本 Django
4月14日(土)大分 AT HALL
4月15日(日)福岡 Kieth Flack
4月20日(金)広島 NAMIKI JUNCTION
4月21日(土)岡山 CRAZY MAMA 2nd room
4月22日(日)山口 LIVE rise SHUNAN
5月02日(水・祝前)京都 磔磔 スペシャルゲスト:笹口騒音ハーモニカ (太平洋不知火楽団)
5月03日(木・祝)鳥取 米子 AZTiC laughs
5月10日(木)徳島 club GRIND HOUSE
5月11日(金)香川 高松 オリーブホール スペシャルゲスト:島津田四郎 tonari session's
5月12日(土)愛媛 松山 サロンキティ
5月13日(日)高知 X-pt.
5月18日(金)福井 CHOP
5月19日(土)石川 金沢 van van V4
5月20日(日)富山 Soul Power スペシャルゲスト:イルリメ
5月24日(木)奈良 NEVER LAND
5月25日(金)兵庫 神戸 VARIT.
6月02日(土)北海道 札幌 BESSIE HALL
6月03日(日)北海道 函館 club COCOA スペシャルゲスト:スモゥルフィッシュ
6月07日(木)山梨 甲府 桜座
6月08日(金)静岡 Sunash
6月09日(土)静岡 浜松 窓枠
6月10日(日)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO スペシャルゲスト:前野健太
6月15日(金)岩手 盛岡 CLUB CHANGE
6月16日(土)秋田 LIVE SPOT 2000 スペシャルゲスト:金田康平 (THEラブ人間)
6月17日(日)宮城 仙台 CLUB JUNK BOX
6月22日(金)新潟 Live Spot WOODY
6月23日(土)長野 LIVE HOUSE J スペシャルゲスト:MOROHA
6月24日(日)神奈川 横浜 club Lizard スペシャルゲスト:三輪二郎
6月29日(金)大阪 梅田 CLUB QUATTRO スペシャルゲスト:島崎智子
7月01日(日)東京 渋谷 CLUB QUATTRO

公演・チケット情報



RELEASE

『曽我部恵一BAND』
4月4日(水)リリース
2500円
ROSE RECORDS
ROSE-129
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2012.04.03更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
    小澤征爾も実力を認める注目の指揮者。クラシック音楽界が熱い視線を注ぐホープの“今”に迫る!
  • さまぁ〜ず
    2年ぶり、9回目の 『さまぁ〜ずライブ』開催。 稀代のコント芸人が、ライブにこだわり続けるそのワケは?
  • 遠藤保仁(ガンバ大阪)
    10年連続Jリーグベストイレブンにも、代表最多出場記録にも歩みを止めない。稀代のMFの飽くなき向上心に迫る
  • 堀北真希
    あくまでも、自然体。 2度目の舞台に挑戦する“国民的女優”の素顔
  • 藤原竜也
    舞台で演じ続けてきた実体験を、 「人生の蓄積」と呼んで胸に刻む。若き天才の次なる挑戦とは…。

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