TOP > 今週のこの人 > 曽我部恵一(曽我部恵一BAND)

「毎年出ているから色んな変化が客観的に分かるんですけど、お客さんには、今年もあそこに集まれて良かったね、という気持ちはあると思います。僕らは精一杯歌うだけですね。

曽我部恵一BAND名義としては3枚目となるアルバム『曽我部恵一BAND』が到着。シンプルなロックンロールの強さを打ち出したこれまでの作品から一転、今作はロック、フォーク、ソウル、ブルースなど、彼自身の幅広い音楽的ボキャブラリーを惜しみなく注ぎ込んだ、情熱的かつ洗練されたバンド作品に仕上がっている。昨年の大震災以降、音楽をやることの意味を考え続けたという曽我部恵一が、本作が生まれるまでのプロセスを語った。

――曽我部恵一BANDの1stや2ndは、パンクロック的なシンプルな演奏が中心でしたが、今回のアルバムはソウルやブルース、ディスコなど色んな要素が入っていて、曽我部さんの音楽性がトータルで出ている作品ではないでしょうか。

「2ndと今回の間で、シンプルなロックンロールに熱いメッセージを乗せる曽我部恵一BANDのスタイルは一度終わっているんですよ。ライブで色々と試行錯誤する中で、たどり着いたところではありますね」

――1st、2ndは音楽家としての曽我部さんの一部分を取り出し、それを研ぎ澄ました印象でした。

「そういう風に機能しているバンドだったから、自分のロックンロール的なノイジーな一面を大音量で聴かせることが、そもそもの目的としてありました。今はこのバンドでこの曲を全国で演奏したいという思いだけで、約束事や決まりごとは一切ないんです」

――作詞家、作曲家としてのポテンシャルをすべて注ぎ込んでいく感じがしますね

「たとえば『満員電車が走る』は、作詞の部分でもスキルフルに、自分の持ちうる技術や能力をすべて注ぎ込んだ曲です。『ソング・フォー・シェルター』あたりは瞬発力なんですけど、『満員電車は走る』はそう思える曲ですね。そういうエネルギーが持ち得たのはすごく良かったなと思います」

――新作の制作はいつ頃から始まったんでしょうか。

「曽我部恵一BANDのアルバム3枚目を作るというのは、3年前からずっとやってました。前作が出た後からちょくちょくスタジオに入っていたけど、なかなか満足いくものが録れなくて。そのうちバンドでやる必要があるのか、なぜバンドで3枚作らなきゃいけないのかと色々考え始めて、その間に(ソロアルバムの)『PINK』を出しましたね。で、2011年に入って『満員電車は走る』ができたあたりから、もう一度バンドでやってみようという気持ちになったんです。スタジオミュージシャンたちといい感じでレコーディングするのではなく、バンドでの化学反応、エネルギーの増加をめざそうと」

――バンドでやることの意味を、そこで見出すことができたと。

「『満員電車は走る』をバンドに持って行こうと思った時点で、ひとつ動き始めたのかなって思います。この曲が入るアルバムを作ろうというのが、出発点かもしれない」

――この曲ができたのは、震災があった3.11の前後あたりでしょうか。

「曲ができたのは、震災の直後の花見の時期でした。下の子どもを二人連れて、花見に行ったんです。近所に遊歩道があって、そこにゴザを敷いて三人でお菓子を食べただけなんですけど、そのときに感じたことが歌になったんですよ。その遊歩道は花見のメッカで、桜が咲くと日曜日には人でいっぱいになる。以前からちょくちょく友達や家族と行ってたんですけど、去年はすごく閉塞感があって、花見客も少なかったし、現実から乖離してしまっているような感じで。そこにいる楽しそうな花見客、毎年来てるんだけど来なかった花見客、地震直後の東京の状況、被災地の状況、それとは関係ないもっと遠くの街の状況、自分の心、子どもたちの心、それらが全部バラバラに乖離してしまっているような気がして――そこから生まれた曲ですね」

――満員電車の中で、色んな思いを抱えた人が乗り合わせている、という歌の風景には独特のリアリティがあります。

「夢や悲しみ、優しさや憎しみなど、みんながバラバラに色んな思いを抱えて、一つの場所に閉じ込められている。その中で誰もコミュニケーションできずに次の場所に移動させられる……みたいなことかな。ロジカルに作ったわけではないので、今思い返してみて感じることですけど、『一億二千七百六十万の叫びを切り裂いて』というフレーズが一番言いたかった気がします」

――そこには、震災後の日本の状況や音楽シーンに対する曽我部さんの考えが入っているわけですよね。昨年3月の『PINK』の取材のとき、震災後に絆ソング″や反原発ソング″が生まれつつある状況に対して、曽我部さんは何かしっくりこない、そういうものを作りたいんじゃないと仰っていましたが、本作はひとつの回答になっているようにも感じます。

「アルバム制作を通して『ロックってこんなもんじゃないだろう』っていう気持ちがすごくありました。“みんな早く立ち直って一つになろう”という絆ソング、それはそれでいいんだけど、僕はそういうものをロックと考えてこなかった。というのも僕にとって、人間が生きていることを見せてくれるのがロックだったから。でも、震災の前からの話ではあるけど、メッセージを共有したり、有益な話や共感できたり泣けたりする話を打ち出していくのが歌なんだ、というところに(音楽の世界が)スライドしているような気がしていて。そういうものが歌として商売になっていくことに、僕としては違和感を持っていた。今度のアルバムが決して答えとは思わないけど、そういう状況に対して自分なりにやってみた作品だと思います。自分にとってすごく重くて、付き合うには体力が必要だけど、生きている実感が持てるアルバムですね」

――暗喩的な表現を散りばめた「ソング・フォー・シェルター」や、現実に起きた事件を題材とした「街の冬」など、非常に深くてシリアスな楽曲が多いアルバムです。

「暗くて重くて、本当に聴きにくいアルバムにしようという出発点がありました。『俺は重いぞ? 俺と本気で飲む気か?』というような(笑)、自分そのものであろうと思ったんです。自分そのものだったら、すごく理解されづらいだろうし、存在感があるなって。例えば、ピンク・フロイドの『狂気』なんかは、良いとか泣けるとかの曲じゃないですからね。音楽として厳然と存在している、というか。今度のアルバムとは音楽性は違うんですけど、そういう風にしたかった。だから、ウケるポイントなんて意識せず、自分の中に深く入り込んでいく作業でしたね」

――ただ、ディープな作品だけど、暗い印象はないですね。

「僕が言っている暗い″というのは、ラブソングやポップソングではないという意味ですね。自分にとって本当に捏造がない曲というか。それが良いか悪いかは分からないけど、自分が一生懸命ずっと歌っていける作品はそういうものが多いです。思いっきり歌ったら、3分なり5分なりは自分でいられるような作品にしたつもりです」

――1曲目の「ソング・フォー・シェルター」では、 “おお坊や、そっちはどうだい”というフレーズがとても印象的です。ある意味で洋楽的というか、ロックの伝説的シンガーが歌っていそうなフレーズで。

「ボブ・ディランや友部正人さんが言いそうな感じですよね。“おお坊や、そっちはどうだい”って、いきなりの上から目線じゃないですか。昔は、ロックにそういう感じで語りかけられたと思うんです。“大丈夫、君と僕は一緒だよ”ということじゃなく、“お前ちゃんとやっているのか?”って問いかけられていた。自分も道に迷っている坊やだとして、自分の子どもたちに問いかけるような。そういう毅然とした強さや冷たさが、この曲には欲しかった」

Text●神谷弘一(blueprint) Photo●吉田圭子

PROFILE

曽我部恵一(曽我部恵一BAND)
‘95年、サニーデイ・サービスのボーカル&ギターでデビュー。’01年にソロ活動をスタート。’04年には自身のレーベル「ROSE RECORDS」を設立。’06年には活動の拠点となる曽我部恵一BANDを結成し、精力的に活動を展開中。

オフィシャルホームページ


TICKET

『曽我部恵一BAND TOUR 2012』

4月06日(金)千葉 LOOK
4月07日(土)福島 Out Line
4月08日(日)埼玉 西川口 LIVE HOUSE Hearts
4月12日(木)鹿児島 SR HALL スペシャルゲスト:ボヤケルズ
4月13日(金)熊本 Django
4月14日(土)大分 AT HALL
4月15日(日)福岡 Kieth Flack
4月20日(金)広島 NAMIKI JUNCTION
4月21日(土)岡山 CRAZY MAMA 2nd room
4月22日(日)山口 LIVE rise SHUNAN
5月02日(水・祝前)京都 磔磔 スペシャルゲスト:笹口騒音ハーモニカ (太平洋不知火楽団)
5月03日(木・祝)鳥取 米子 AZTiC laughs
5月10日(木)徳島 club GRIND HOUSE
5月11日(金)香川 高松 オリーブホール スペシャルゲスト:島津田四郎 tonari session's
5月12日(土)愛媛 松山 サロンキティ
5月13日(日)高知 X-pt.
5月18日(金)福井 CHOP
5月19日(土)石川 金沢 van van V4
5月20日(日)富山 Soul Power スペシャルゲスト:イルリメ
5月24日(木)奈良 NEVER LAND
5月25日(金)兵庫 神戸 VARIT.
6月02日(土)北海道 札幌 BESSIE HALL
6月03日(日)北海道 函館 club COCOA スペシャルゲスト:スモゥルフィッシュ
6月07日(木)山梨 甲府 桜座
6月08日(金)静岡 Sunash
6月09日(土)静岡 浜松 窓枠
6月10日(日)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO スペシャルゲスト:前野健太
6月15日(金)岩手 盛岡 CLUB CHANGE
6月16日(土)秋田 LIVE SPOT 2000 スペシャルゲスト:金田康平 (THEラブ人間)
6月17日(日)宮城 仙台 CLUB JUNK BOX
6月22日(金)新潟 Live Spot WOODY
6月23日(土)長野 LIVE HOUSE J スペシャルゲスト:MOROHA
6月24日(日)神奈川 横浜 club Lizard スペシャルゲスト:三輪二郎
6月29日(金)大阪 梅田 CLUB QUATTRO スペシャルゲスト:島崎智子
7月01日(日)東京 渋谷 CLUB QUATTRO

公演・チケット情報



RELEASE

『曽我部恵一BAND』
4月4日(水)リリース
2500円
ROSE RECORDS
ROSE-129
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2012.04.03更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
    小澤征爾も実力を認める注目の指揮者。クラシック音楽界が熱い視線を注ぐホープの“今”に迫る!
  • さまぁ〜ず
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  • 遠藤保仁(ガンバ大阪)
    10年連続Jリーグベストイレブンにも、代表最多出場記録にも歩みを止めない。稀代のMFの飽くなき向上心に迫る
  • 堀北真希
    あくまでも、自然体。 2度目の舞台に挑戦する“国民的女優”の素顔
  • 藤原竜也
    舞台で演じ続けてきた実体験を、 「人生の蓄積」と呼んで胸に刻む。若き天才の次なる挑戦とは…。

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