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佐藤タイジ・TAIJI at THE BONNET

TAIJI at THE BONNET

佐藤タイジが、ウエノコウジ(b)、阿部耕作(ds)、うつみようこ(vo&g)、奥野真哉(key)とともに新バンド、TAIJI at THE BONNETを結成。リリースされたばかりの1stアルバム『ROCK STAR WARS』に込めた思いを語った。

「今だからこそ、歌いたいことがある」。笑顔でそう言い切る佐藤タイジが新たに結成したバンド、TAIJI at THE BONNET。ウエノコウジ(b)、阿部耕作(ds)、うつみようこ(vo&g)、奥野真哉(key)という同世代の強者ミュージシャンたちからなるその1stアルバム『ROCK STAR WARS』に貫かれているのは、映画『スター・ウォーズ』の騎士、JEDIの守護スピリット。希代のロックスター、タイジお得意のエロティックなファクターを随所にちりばめつつ、<闘うなら/今しかない>と歌い鳴らすロックンロール・ジェダイたち。そこにあるのは、明らかに危機的状況にある今の日本にとってきっともっとも必要な、愛とユーモアと情熱あふれる声と歌と音。

楽曲やアルバム・タイトルからも想像できるように、今タイジさんが目指すものというのは、映画『スター・ウォーズ』の世界とシンクロしてくるわけですよね。

「まさにまさに。バンド名だけは震災前につけたので、ひどい下ネタなんですけどね。でも今さら変えるのもなんですし、もし変えるなら“サイトウカズヨシ”とかかなって(一同爆笑)。斉藤くんは「いいよ」って言ってくれると思うけどね。だからバンド名の説明はもう、割愛させていただきます(一同爆笑)」

わかりました(笑)。やはり東日本大震災以降、いろんなことがタイジさんの中で大きく変わった、と。

「そらそうっすよね。日本中がそうじゃん? それに対して、だからこそ変えなきゃって思う人と、変わってもらうと困るんだよねぇっていう人の構図が、『スター・ウォーズ』の帝国軍と反乱軍のように見えて仕方ないってことですよね。最近CMでヨーダが“日本人よ、フォースとともにあらんことを”っていうのを観て嬉しかったんだよね。フォースって日本語では「理力」って訳されてるけど、ヨーダとかオビ=ワン・ケノービのいうフォースって、超能力みたいに映画では描かれてるやん? でも「理力」って実際にあっていいものじゃないっすかって思うし、まさに「理の力」こそ今必要な時やないかなって。たとえば、地震学者の人とかが阪神淡路大震災のときも東日本のときも予測できなかったのって、ものすごい無力感だったと思うし。だから、「理力」を信じるためにもがんばらなあかんなぁって思うけどね」

あと『ROCK'N ROLL JEDI』という曲を筆頭に、<JEDI>という言葉も象徴的に使われてますよね。

「なんで俺がJEDIって言葉を使いたいと思ったか、この間わかったんだよね」

おおっ。なんだったんですか?

「『ヤギと男と男と壁と』っていうすっごい面白い映画があって。ベトナム戦争を経験した男が軍に戻って新しい部隊を結成するんやけど、それが超能力部隊で、銃を構えた敵の戦意を花と歌でくじく、みたいな(笑)。で、新たにそこに入隊した男がほんとに超能力を身につけて、念力でヤギをパタンとか倒しちゃうわけ。で、そいつらが「俺たちはJEDIや」って言いだすんやけどそこで俺は、そうか。JEDIって言っちゃえばいいんだ!って思っちゃったんだよね。で、『ROCK STAR WARS』ってタイトルになっていくわけだよね」

となると、アルバム全体の方向性も自ずと決まっていきますよね。

「だから今までで最も自然にコンセプトが出てきたアルバムですよね。ざっくり言うと、ロックミュージシャンとして、20代のときに置いてきたものをもう一回やり直そうとしてるんよね。俺、THEATRE BROOKではエゴイスティックに、演奏技術に特化してやってきたと思うんだよね。けどTAIJI at THE BONNETは、お互い同じ年代でロックバンドをやってきて、ライブハウスのシーンとかで似たようなことを経験してきた連中とやってて、THEATRE BROOKとは違う言語があるんだよね。THEATRE BROOKは俺が全部曲書いてるけど、TAIJI at THE BONNETは、みんなで曲書いてみんなで演奏する風にしたいと思ってるんよ。今回ようこちゃんは一曲書いてくれたけど……もっと書いてくれ(笑)。だから、THEATRE BROOKでは達成できなかったロックバンドに対するもうひとつの俺の理想というか、初期衝動みたいなものがあるんよね」

その初期衝動的を今このタイミングで形にしてみよう、と思ったのは?

「なんかね、もともとはTAIJI BANDって名前だったのをTAIJI at THE BONNETに改名するぞっていうミーティングを、3月11日の午後3時に事務所でやることになってて。ぐらぐら揺れてる中、電車に閉じ込められたウエノくんが遅刻、みたいな」

ものすごいタイミングですね、それ。

「奥野にも、<地震大丈夫やった? ところで一緒にバンドやれへん?>っていうざくっとしたメールを送ったわけ。したら、<今?! >って(笑)。今する話かっていう感じだったんだろうけど、かといってそのタイミング逃したらいつ連絡していいかわかんないからね。でもTVとかで現実をみて、とんでもない状況になっとるな、なんかせなあかんって思ってミュージシャン仲間に、<なんとかせなあかん。いいアイディアがあったら合流な>ってメールをびやーっと送って。そん中にもちろんようこちゃんもおって。で、彼女から返ってきたメールが、<我々ミュージシャンの仕事は、震災後2週間以降になるから今は自分の身体を守って枕もとに靴置いとき>って。阪神のときにソウル・フラワー・ユニオンで被災地行ってた人やから、そこの経験値がやっぱりすごいよね。ようこちゃんとは前から何回も一緒に演奏してるし、すぐやれる曲もいっぱいあるから、ようこちゃん呼ぼうってことになって。で、最初に『ROCK'N ROLL JEDI』を演奏したんやけど、女子ボーカルがいるつもりで曲書いてなかったのに、アンサンブル完璧じゃん? だからこういうのが流れっていうんだなって。みんなすごいミュージシャンやし、やってて単純に楽しいんよね。阿部くんがいて、いっちゃんでっかいやつが年下で(ウエノ)、いっちゃん小さいのが年上(うつみ)っていうのも具合ええし、奥野くんがいることでずうっと爆笑トークが続くっていうのもこのバンドの大きなパーツやなって」

『100% SOLAIR BUDOKANの歌』という曲もあるように、武道館公演も宣言されてますよね。

「THEATRE BROOKの最新アルバム『Intention』を出したとき、沼澤さんもエマーソンも何かで武道館に立ってるのに、俺だけ一回も武道館に立たずに死ぬわけにはいかないっすよね、みたいな話になって。で、なんとなく2010年の年末ぐらいからミーティングもしてたんです。そこに3.11があって、まぁ、ひるむじゃないですか。でも『LIVE FOR NIPPON』を初めてやったのが3月17日で……」

『LIVE FOR NIPPON』はタイジさんが立ち上げられた、Ustreamで配信されている復興支援のインターネット・チャリティ・ライブですね。

「そう。漠然とした自粛ムードの中、斉藤和義くんも飛び入りで来てくれた……あれほんと、やってよかったんだよね。チャリティだからいいってことじゃなくて、今も毎月やってるから、とりあえず音楽を介してみんなの無事を確認し合う場にもなるし。それがあったから武道館を100%自然エネルギーでやりたいっていう思いも発見できたというか。原発はもちろん危ないけど、ただ反対!ってネガティブなことを言い続けるのって気持ちが殺伐としてくるというか、キツいんよ、俺にしてみたら。同じこと言うなら、次のエネルギーでやることとかに賛成!って言いたい。それを思いついたときにすごいやる気になったよね。もともとは俺が武道館に立つっていうモチベーションやったけど、もう俺どうこうの話じゃなくて、次の時代へ向かうためのっていうコンセプトの方が先やから、逆に理想的やなって思うし、成功させなあかんと思うし。もちろん省電力スピーカーに省電力照明にはなるんだろうけど、蓄電技術とかもすごいスピードで進化してるので、技術的には実現可能なんですよ。原発が安全やと思ってる人はもう、この国には一人もおらんと思うわけ。だったら、俺みたいなロックのやつがこういうこと言い出す方がみんなラクなんちゃうかなって」

歌いたいことがないっていってるバンドもいるようですけど、TAIJI at THE BONNETには、明確に歌いたいことがある。そしてそのメッセージがエンターテイメントとして楽しめる、というところが強者揃いのこのバンドならではだな、と思います。

「忌野清志郎さんって自由であることが好きで、そこにとても重点を置いてた人なんですよね。だから今、清志郎さんがおったらなんて歌ってたやろうなぁって。クリエイトする人間にとってみたら、いっぱいアイディアが出て来るときやと思う。歌詞が書けないって言ってるやつも、今や書ける時代だよ、言いたいことを言いなさい自由やでって、先輩ミュージシャンとして言ってかなあかんなとは思うよね。俺、大した力はないかもしれんけど、この国でロックスターである意味をやっと見つけたんよ。多くの人が聞いてくれたら嬉しいけど、多かろうが少なかろうがそれを言いたいから言ってるだけであって、みたいな。斉藤和義くんが反原発ソングを歌ったときに、批判的な声もあったけど、俺も微力ながらニール・ヤングの替え歌で賛同したし、彼は完全に仲間やなっていう意識はすごい強いよね。ま、モテるのは完全にあっちやけどな(一同大爆笑)」

Text●早川加奈子

PROFILE

さとうたいじ。1986年にTHEATRE BROOK結成し、1995年にメジャーデビュー。カリスマ性を感じさせる強力なサウンドとステージで人気を博す。森俊之とのユニット=The SunPauloや、ソロとしても活動し、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも手がけている。2011年3月11日にTAIJI at THE BONNETを始動。
オフィシャルホームページ


TICKET

TAIJI at THE BONNET「2012 We are the Jedi Tour」
▼3月27日(火) 名古屋・池下CLUB UPSET
▼3月29日(木) 仙台・CLUB JUNK BOX
▼4月14日(土) 札幌・cube garden
▼4月19日(木) 徳島・club GRINDHOUSE
▼4月21日(土) 大阪・梅田Shangri-La
▼4月22日(日) 東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE


「ARABAKI ROCK FEST.12」
▼4月28日(土)・29日(日・祝) エコキャンプみちのく

公演・チケット情報



RELEASE

TAIJI at THE BONNET
1st album『ROCK STAR WARS』
2012年1月25日発売 3000円
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2012.01.31更新

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