――まずは、『申し訳ないと』ってどういうイベントなのかってとこから聞かせてもらいたいんですが。
宇多丸
普通、クラブでは欧米の楽曲が中心にかかってるけど、そこで普通に日本語曲のダンスミュージックで成立させられるんじゃないかっていうのが、根本の理念なんです。元々は、ミッツィー申し訳さんが、宇都宮のPLANETっていう自分がオーナーのクラブで、Jポップ限定イベント始めてて、そこにあとから僕らが賛同したわけです。
掟
っていうかスカウトされた感じ。最初は、宇都宮にライムスターやロマンポルシェ。のライブで呼ばれて行ったんですよ。そこで、Jポップに興味を持ってそうな人に、ミッツィーさんが「DJやってくれませんか」と声かけた。まあ、みんな社交辞令的に「うん」と答えるけど、その中で、本気でとらえて、しかも肌が合って面白くなっていったのが、現在いる申し訳ナイタズの主要メンバー。我々2人に、ギュウゾウ申し訳Jr.(電撃ネットワーク)、GEE申し訳Jr.…GEEさん、超大物ですよ!(笑)。
宇多丸
ハウスユニットGTSのプロデューサー&コンポーザーであり、(m-floらが在籍する事務所)ARTIMAGE社長! そんなGEEさんが、なぜか三宿の地下でDJをしていると(笑)。
――三宿のWEBで『申し訳ないと』がスタートしてからじわじわと広がっていったわけですね。
掟
三宿WEBで始まったのが、2001年7月からですね。
宇多丸
1回来ると、こんなプレイしてるんだって分かってもらえるんだけど、そこまでが大変。まず、イロモノって見られるし、来ちゃえばわりとあっさりとイケるはずだけど。
――みんな偏見を捨てて来てほしい?
宇多丸
でも、敷居が低いのも嫌なんです。「J-POPだから気軽に楽しめるね」と言われると、そう思われちゃこまるな〜ってとこもあって(笑)。
掟
かといって、洋楽志向のヤツを振り向かせてやるってとこもあるし。
宇多丸
気安くないけど、振り向いてはほしい。
掟
まさに、ツンデレな感じですね。ミッツィーさんが、ミスター・ツンデレだから(笑)。
宇多丸
…おぉ、確かに、DJの姿勢がツンで、客にアピールすることがデレとするなら、ツンデレだな(笑)。
――これまでに、三宿WEB以外の大きなハコでもやってますよね。
掟
J-POP専門ってとこで面白がられて、よそに呼ばれることが多くなっていったんです。去年、青山faiの10周年イベントでは、幕張メッセの1万人以上のお客さんを前に、朝方6時にDJやりました(笑)。でも、2004年のサマーソニックの夜中に出たときは、アーティスト・パスじゃなく、『ベンダー』って業者のパスを渡され、「裏口から出入りしてください」って言われたこともあった(笑)。そんな虐げられたこともあり、今日のお客さんの入りにつながり、宇多丸さんのラジオでコーナーを持つまでになったわけです。
――一歩一歩階段を上ってったと。
宇多丸
そうですね。ラジオをやるにあったっては、申し訳を一番やりたかったんです。でも、FMでラジオ番組やってるときは、なかなかやらせてもらえなかった。そこはTBSラジオ、さすが!ってとこで。1年やってるけど、超人気コーナーですからね。やっぱり、聴いてさえもらえればってとこはあるな。
――ミックスCD『申し訳ないとフロム赤坂』ですが、元々、ラジオでやってるスタイルをCDにしようって発想だったんですか。
宇多丸
そうですね。普通ミックスCDは、1人のDJが最初から最後まで作るけど、これは15分区切りってとこも斬新。もちろん、通してもざっと聴けるようになってますよ。なおかつ、曲のトラック量はヒップホップ的。ハウスだったらこれの4分の1の曲数ですよね。とにかく情報量をつぎ込んでる。ミッツィーさんが、元々ヒップホップDJ的な方法論でやってるんですよ。お客さんにも、どんどん刺激を与えていく感じ。あと、生の手触り感は凄い。今時、みんなコンピューターに入れてミックスしちゃうけど、ここまで、手でつまみをいじってる感じが出てるミックスCDは他に無い(笑)。
――マイクのしゃべり、生々しいミックス感といい、昔のヒップホップのミックステープを思い出しましたよ。そこも重要でした?
宇多丸
そうですね。きれいに作るのは誰でもできるし、逆にミックスを生でやってるのは大事だなと。ヒップホップのミックステープみたいな、僕の好きな感じにはなりましたね。こういうのが良いんだよなって。
掟
でも、一発録りの緊張感はありましたよね。
宇多丸
確かに。やっぱりコンピューターで録れば良かったって気がしないでもない(笑)。よく考えたらムチャですよ(笑)。
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