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Text●大石始 Photo●源賀津己
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crazykenという男は本当に格好いい。ダンディーで粋、ユーモアがあってオシャレ。SMAPやTOKIOにも楽曲を提供し、お茶の間にまでその名を知られることになった彼だけど、その佇まいには、どこか不良っぽくて過剰な格好良さがある。口あたりのいいだけじゃない、ハミ出したところのある格好良さ。crazykenとクレイジーケンバンドは、やっぱり存在自体がロックンロールだ。
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「昔、そうなりたいと思っていた自分に近づいて来た感は多少ありますけどね。ロックンロールと言っても音楽だけを指すものじゃなくて、清濁併せ持った、必ずしも清く正しいだけじゃない。悪魔的に甘美なもの。お菓子でいったらチクロですね（笑）」
crazyken自身「これが“私の考えるロックンロール”。“間違ってる！”と言われたら“スイマセン”って感じですけど（笑）」と話す新作『ZERO』は、CKBにとって10枚目となるアルバム。結成10年目の節目である昨年発表された『SOUL電波』はCKB史上最高の6位というチャートアクションを示した。しかし彼は「今までのことはなかったことにしてもいいぐらいの気分」と言って笑う。
「点検整理したかったんですよ。経験値によるおごりとか勘違い、キャリアの上にあぐらをかいている部分がないかどうか。“CKBってこういうものなんじゃないか”って自分たちで定義づけてるところがある気がして、もう一度ルーキーの気分に戻ってみようと」
タイトルは思い切って『ZERO』。ジャケットもこれまでにないほどシンプルなものだし、曲名も『猫』『亀』『夏』などと一文字で表現されたものが多い。
「10枚もアルバムを出してるので、フラットになったんだと思うんですよね。“これが新作です”と言うだけでいいんじゃないかと。ジャケットに関しては、“ここには音楽しかありません”、そういうメッセージを込めてみたんですね。暗いニュースが多いんで、ピンクの丸でランタンを灯す、そんなイメージ」
『ZERO』に入っているのは、普通にいい歌・いい曲。crazykenも“音楽力”や“歌力”をキーワードとして挙げる。
「ガキの頃から自分のざらついた声にコンプレックスがあったんですよ。だけど、ジョン・レジェンド、エイミー・ワインハウス、エステルといった個性的な声を持つ歌力のあるシンガーが台頭してきて、“俺のファニーな声もひとつのIDなんじゃないか？”と考えた途端にアグレッシブな気分になれたんです」
常に新しいものに対してアンテナを立て、刺激を受けながら作品制作を続けてきたcrazyken。今回のアルバムでもFull Of HarmonyやISO、ゴスペラーズら一回りも二回りも年下のゲストを迎えているけれど、それら競演曲からは大人げないほどの本気具合が窺えるよう。彼は「中年オヤジの絶倫モードというかね」と言って豪快に笑う。
「これでも残尿感いっぱいなんですけどね。曲がどんどん出てきちゃって休ませてくれないんですよ。止めたくても止められない」
近所の食堂的な大衆性。そしてどこか危うい不良性と垢抜けた都会性。そんな相反する要素は、CKBの中で奇跡的に同居し、誰も真似することのできない格好良さとして結実している。
「キャロルのような哀しみのある不良性に対しては、僕自身憧れもあるんです。その一方で、港区的で垢抜けたおぼっちゃんの格好良さもある。僕のなかではその両方が結びついてるんです」
新作からのリード曲『湾岸線』のプロモーションビデオでは、なんと高田純次とも競演。そこでのcrazykenの姿は、男の僕でも惚れてしまうほど格好いい。年を重ねようとも変わらない不良っぽさと都会的なクールさ。『ZERO』にはそんな不良中年の格好良さが詰まっていて、何度でも「イイネ！」と叫びたくなってしまうのだ。
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