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過去のインタビュー

ASKA

CHAGE &ASKAでデビューしてから来年でちょうど30年。ソロとしても21年というキャリアを誇る。その間に刻々と変わりゆく音楽シーン、そして世の中、彼は常にそのただ中に身を置き言葉とメロディをぶつけてきた。現在50歳――その声はどこまでも伸び、届く。
取材・文:島田諭 撮影: 源賀津己 スタイリング:東野邦子 ヘアメイク:咲川倫子
衣装協力:D'URBAN (問合せ:RENOWN PRESS PORT TEL:03(5468)2551)
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2001年にアメリカで起きた同時多発テロは、たしかに世界中の人たちを震撼させた大事件であった。けれども、それ以前にも戦争や紛争、テロは各国で起きていたし、そして以後もなんら変わりがなかったりする。だからなのかもしれない。インタビュー当日が9月11日だったこともあり、そのことをASKAに伝えると、「そうだったね……」と、彼はとくべつ体温が高いわけでも低いわけでもない反応をしたのだ。つまり、平和だったことなんて一度もない世の中に対するASKAの体温は、平熱なのである。中指を立てるだけ、現状を嘆くだけではなんの問題提起にならないし、そもそも、そんなことを歌ったとしても誰の耳にも届かない。みんなで一緒になにかを考え、一緒に答えを探っていくことが重要な時代だからである。この人はそのことがよくわかっている。ソロとしては5年ぶりのシングルとなるASKAの『UNI-VERSE』は、まさにそんな彼の平熱から生まれた楽曲といえる。加えて、ポップスとしての商品価値を持たせるためのロマンもサラリと忍ばせている。音楽シーンに登場してまもなく30年、そして現在50歳の彼の目に映るものはなんなのか。ひとりのミュージシャンとして、ひとりの人間として「現在」をたっぷりと語ってもらった。
――たまたま今日は9月11日なんですけれども。
「そうだったね……」
――7年前の9月11日のことって憶えていますか?
「リハーサルをやってました。なにが起こったんだろうって思いましたね。飛行機がビルに飛び込んだっていう話があって、その映像かと思ったら、ぼくらがテレビで見たのは“2機目”だったっていうね」
――同時多発テロ以降、愛や平和についてあちこちで語られてきているわけですけれども、ASKAさんの中ではあの事件をきっかけになにか芽生えたことはあるんですか?
「いや。特にこの事件がきっかけということはないけれど……テロ以前から世の中が少しずつ変わってきているのは感じられたからね。1996年くらいからかな、人が追いついていない気がすごくしていたんですよ。新しいものって絶えず出てくるでしょ。それを世の中の人は新しいものとして受け止められているだろうか、って。多くの人たちが使いこなせていない気がするんだよね」
――文明が発達して世の中が便利になるのはいいことじゃないですか。
「文明が発達するっていうのは、人間が楽になるってことでしょ。必ず楽になるほうへ進んでいくので、最後はなにもしなくていいようなものを求めるでしょ。人がいなくなるよね」
「ASKA」写真
――人間の思考が停止することに対する懸念があるわけですか?
「なんだろうな? 人が変わっちゃったでしょ。人種が。自分を含めてね。ひとりが企業相手に喧嘩をしかけるような時代になった。写真だってそうでしょ。現像所に出さなくていいし、ビデオだってテレビ局みたいに個人が編集できるようになった。細分化された小国家があって、それを求めて生きているような……。そのうち家庭菜園じゃないけど、自給自足の真似ごとのような、そういう意識を持って生活していくような時代になっていく気がしますけどね。ひとりでやることがひとつの美学、すべてのものに囲まれていたいっていうね」
――ASKAさんがそう感じる環境の中で、自分自身はどうありたいと思うわけですか?
「そこに逆らう必要性はないし、時代に与えられたものなので、自分に必要なものを集めていく。かたやブランド志向、かたや無印というか。構造を知っちゃっているから。名前がついた時点でブランドになるっていうね。人の考え方、生き方がきれいに分かれてきていて、どっちをよしとするのはまた別の話なんだけど。もちろん人の心の豊かさを測ることはできないけれど、どこかでそれを感じたい、感じてしまうのが人間なんでね。もしかしたら、ふたつ併用しながらっていうのもありかもしれない」
――その考えはひとりの人間としても、ひとりのミュージシャンとしても同じですか?
「同じですね」
――豊かさを感じないのはどういうときなんですか?
「自分の今が豊かじゃないとは思わないけれど、人として生まれた瞬間、どうしても消せない寂しさって人間にはあるから。死ぬまでそれは続くでしょ」
――じゃあ、豊かさを感じるときは?
「自分が形にしたものを、好んで聴いてくれている人たちの集まる前でパフォーマンスできる喜びっていうのは、とても豊かな気持ちになりますよね」
――もっと具体的にいうと?
「なんでコンサートに人は来るんだろうと思うわけですよ。お目当てのシンガーが好きだからっていう理由もあるけど、そうじゃない人もいる。付き合いで会場に来ることもあるわけですから。それで足を運ぶ人たちに、なにかいいものが観られるかもしれない、いつもの生活の中で味わえないなにかが得られるかもしれないっていう期待があって当然だと思う。幸せ感覚っていうのはコンサートで一番必要なんだけど、コンサートってのは、6時半に始まったら、そこからフリを作らないといけない。ぼくに興味のない人もいるわけで、だから気持ちをこっちに向けさせないといけない。その作業はぼくらのステージにおける作業、つまりコンサートの中の構成と呼ばれるものなんだけど、気持ちがそうなった瞬間、初めて歌を聴いてみようかなっていう気になるんです。共鳴できるものをステージから投げたときが、初めて興味が強くなっていく瞬間になると思うんですね」
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ASKA
高校時代の友人CHAGEと共に、チャゲ&飛鳥を結成し、シングル『ひとり咲き』でデビュー。1979年チャゲ&飛鳥と並行してソロ活動をスタート。1980年、楽曲提供をした光GENJIの『STAR LIGHT』『ガラスの十代』『パラダイス銀河』で立て続けの大ヒットを記録。1987年、シングル『MY Mr.LONELY HEART』でソロデビューした。
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