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Interview

武藤英紀(レーシングドライバー) INDY参戦2年目 日本人初優勝への自信

武藤英紀

世界三大レースのひとつに数えられ、40万人もの大観衆を呑み込むインディ500を核とするインディカー・シリーズ。アメリカンモータースポーツ最高峰のレースで初優勝を狙える日本人が現れた。その名は武藤英紀。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した超新星が優勝を目指し、楕円形のオーバルコースを平均時速340km、最高速400kmで疾走する。

「まずは初優勝。そしてINDY JAPANでの優勝が目標」

――今、改めてインディカー・シリーズ参戦1年目を振り返ると、いかがですか?

「最終戦までかかってしまったけど、ルーキー・オブ・ザ・イヤーという賞を取ることができました。取った瞬間は実感などなかったんですけど、改めて今振り返ると『大きな賞だったんだな』と思います。ルーキーの年にしか取れない賞ですから」

――テストもこなし、2年目に向けて手応えを感じていますか?

「そうですね。マイアミでテストがあったんですけど、去年までの自分に比べると、ドライビングテクニックがかなりアップしていると実感しました。すごく冷静にテストもできたし、『成長したな』と実感しています」

武藤英紀

――逆に2年目の課題は何ですか?

「トラフィック(何台も車が並んだ渋滞)の状態で『自分のクルマのどの位置に風を当てればいいか』ですね。昨年は探りながら走っていましたが、今年はテストの時から良いポジションを取れているので、実際のレースで昨年との違いを見せたいですね」

――ルーキーイヤーの去年も目標に優勝を掲げていましたが、今、口にしている優勝とはまるで違うんじゃないですか?

「全く違いますね。去年とは優勝に対する心構えから違います。目に見えないグループ分けが存在するので、『勝つことによって上のグループに入れるのかな』と思います。トップグループに入ったら、『考え方や取り組み方も変わるのかな』とも思いますし。だから、まず1勝ですね。タイミングさえ合えば、『いける』と思っています」

――インディカー・シリーズでは、コンマ何秒かの差で優勝と2位が分かれますが、その差はとてつもなく大きいですよね。

「そうですね。コンマ何秒差でも優勝しない限り、レースは負けですから」

――昨季第8戦のアイオワで、日本人ドライバー最高位の2位に入った時も悔しそうにしていたのが印象に残っています。

「レース直後は2位フィニッシュで『少しレベルアップしたかな』という思いはあったんですけど、やっぱり負けですからね。2位というのは敗北を一番感じられるポジションだと思うんです。6位でフィニッシュしてもあんまり敗北を実感できないけど、2位で負けると悔しい。一番よかったのが、僕のチームのエンジニアが『なぜ抜かないんだ』って怒っていたこと。怒られたことによって『このチームは良いな』と思いました。
あのレースは抜けるチャンスがあった。自分でも『なぜ抜きにかからなかったんだ』と思ったし、『ドライバーだったら可能性にかけないといけない』という思いもありました。だからすごく悔しかったですね。あのレースではリスクを冒すという割り切り方ができなかった。でも、今なら間違いなくリスクを冒してでもオーバーテイクしにいきます。もしかしたらクルマが壁にぶつかってしまうかもしれないけど、いきますね」

武藤英紀(左)とロジャー安川(右)

今季中の初優勝を誓う武藤英紀(左)とインディジャパンにスポット出場するロジャー安川(右)。記者発表会にて

――ポイント争いを考えるのではなく、あくまでトップしか見ないということですか?

「いろんなドライバーが『勝てはしなかったけど、自分のベストを尽くした』というようなことを言いますけど、僕はそうは思わない。僕は『優勝がすべて』という考えです」

――会心のレース内容で2位になるより、タナボタ的な優勝の方がいい?

「そうです。優勝はどんな内容でも優勝です」

――話は変わりますけどコース上以外で、アメリカでの驚きはありましたか?

「もう、驚きの連続です。シーズンが始まればレースが続くので、ウエイトトレーニングをやっているわけでもないのに、体がドンドンでかくなりました。さすが4G(体重の4倍重力がかかる状態)の世界です。あと、食事も肉食(笑)。日本にいる時、レースウィークは炭水化物しか摂らなかったけど、向こうのドライバーはレース前にステーキを食べています。勝っているドライバーが食べていたから、僕もステーキを食べました。ステーキを食べないと勝てないかもしれないですからね(笑)。
それに勝つドライバーは小さなことを気にしない。本当に大雑把(笑)。アメリカに住んでいて、細かいことを気にしていたらストレスが溜まってしまう。たとえば、アメリカの日本食レストランで親子丼を頼んだら、雑炊みたいなものが出てきたんです。この雑炊みたいなものを親子丼だと思うと食べられないけど、鳥雑炊だと思えば完食できるじゃないですか(笑)」

――アメリカに行って、大雑把な性格になったと。

「とは言えないです(笑)。レース前のジンクスを守っていますから。着る服やグローブはどっちからハメるとか、細かすぎて恥ずかしいほどたくさんの決まり事があります(笑)」

――性格は変えられないですからね(笑)。それでは、レースの話に戻して、オーバルならではの魅力はどこだと感じていますか?

「やっぱりオーバーテイクですかね。オーバルコースでは、ロードコースではあり得ないほどの台数を抜けますから。あとはスピード。平均速度が340kmという世界でバトルしていると『生きているな』と実感できます(笑)」

――今年はツインリンクもてぎでのINDY JAPANが例年の春ではなく、終盤戦にラインナップ(編集部注:今年はシリーズ第16戦、決勝は9月19日に開催される)されました。日本のファンも昨年以上に期待しています。

「僕が一番期待しています。まず第一の目標は、もてぎに帰って来る時には必ず勝者として帰って来たい。何回優勝できるかはわからないですけど、とにかく優勝を経験して帰って来ます。そして、第二の目標がINDY JAPANでの優勝です。それこそ、観客がひとりもいなくても優勝したい(笑)。他の誰よりも僕が一番優勝したいと思っています」

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PROFILE

武藤英紀

むとうひでき

'82年、東京都生まれ。172cm、64kg。'95年にカートデビューし、'99年にレースデビュー。'00年にイギリスに渡り、'02年に帰国。フォーミュラ・ドリーム年間王者を経て、'06年にはナカジマレーシングよりスーパーGT、フォーミュラ・ニッポンに参戦。'07年に渡米し、IPSインディ・プロシリーズ年間2位となる。'08年にアンドレッティ・グリーン・レーシングより待望のインディカー・シリーズ参戦を果たす。最高位は2位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得する。
公式サイト

INFORMATION

  • BRIDGESTONE INDY JAPAN 300mile

    例年春のレース開催だったINDY JAPAN 300mileだが、今年はシリーズ17戦中16戦目にあたる9月19日(土)に決勝を迎える。シリーズチャンピオン誕生の可能性もある今年のレースをどの席で見るか重要となるが、おススめしたいのが武藤英紀スペシャルファンシートだ。なにがスペシャルかと言えば、今年のINDY JAPANで武藤が優勝すれば、武藤英紀スペシャルファンシートの700名全員を翌年のINDY JAPAN特別エリアに招待してしまうという大盤振る舞い。コレは買いだ。応援も一層熱を帯びるだろう。
    チケット情報

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