- 『WILD/Dr.』
- 発売中 / avex trax
- 1890円 / AVCD-31611/B(CD+DVD)
今年の第1弾シングル『WILD/Dr.』を3月18日にリリース。制作面から、曲に込められた思いまで新作についてたっぷり訊いた。
Text●猪又 孝(ドゥ・ザ・モンキー)
──ベスト・アルバム『BEST FICTION』をリリースしてから1発目のシングルになりますが、今回はどんなものを作りたいと思ってたんですか?
「漠然とですけど、ベスト・アルバムにはないような楽曲をやりたいなって思ってました。あのベストを一区切りとするならば、また新しくすっきりやりたいなっていうところで今回のシングルの楽曲は選んだし、自分に新しい刺激が欲しかった感じはありますね」
──実際、『WILD』はこれまでにありそうでなかったハウス調の力強いダンスビートになっていて、刺激に満ちた曲になりましたね。
「すごいかっこいい楽曲になったなと思ってます。ただ、そのままサラッと聞くとわかりづらいですが、歌詞がかなりイケイケな内容なんですよ(苦笑)。けど、どうせやるなら中途半端はいかん、と(笑)。行き切っちゃった方がいいかなって」
──この曲のテーマは?
「表テーマは、楽しくはじけちゃえ! みたいなことですね。で、裏テーマは、少子化対策なんです(笑)。イケイケなダンス曲で裏テーマが社会問題っていうのが面白いなって」
──制作中、安室さんが作詞したmichicoさんに “海外ドラマの「HEROES」が好き”とか“何か超越したものを”っていう話をしてたとスタッフから訊きました。michicoさんはそんな日常会話を見逃さないと、以前、安室さんは言ってましたし、となると、今回の歌詞は「HEROES」がヒントになってるんですかね?
「かも。じゃ、テーマは救世主ですね(笑)。“チアガールを救え”じゃないけど“少子化問題を救え”みたいな。ミュージックビデオも歌詞の裏テーマが反映されてるのでその 意味も踏まえて見てもらえればうれしいです」
── 一方、『Dr.』は疾走感のあるフューチャリスティックな曲になりましたね。
「こっちはライブですごくいい感じになりそうな曲になったなって思います。いろいろ面白くやれそうだなって」
──そもそも『Dr.』というタイトルはどこから?
「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですね。ドクが出てくるじゃないですか(笑)。(プロデューサーの)Naoさんには今回のツアーの音作りもやっていただいていて、ライブも見てもらいつつ、今後も踏まえつつで、ちょっとスペーシーなものがいいんじゃないかって話して作っていった曲なんですよ。で、Naoさんの中で「スペーシーってどういう感?」「宇宙?」「前回のフィクションを超えたい?」「じゃあ、タイムマシーン?」みたいな。そんなところから、じゃあ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だ、みたいな(笑)」
──テクノ、ハウス、オペラと、いろんな曲調が次々に展開されるナンバーですが、どの部分が好きですか?
「私は英語詞の部分、(バレエ音楽の)『ボレロ』のところが好きですね。そこがすごい好きだから、もうちょっと増やして欲しかったなって思ったくらい」
──そこは自分もオペラ歌手になったようなイメージで歌ってたり?(笑)
「うん(笑)。歌ってる自分はきっとかっこいいんだろうなってイメージしてね」
──背筋をぴんと伸ばして、へその前で手を組んで歌ってる、みたいな?(笑)
「あはは(笑)。でも、そういうのは嫌いじゃないんですよ。たとえばmichicoさんの楽曲でも、コーラスとかオペラ歌手っぽく歌って欲しいとかってディレクションされることはあるから。浪々と歌う、みたいなのは嫌いじゃないんです」
──歌詞はヨリを戻したいと願う主人公が描かれた、少し感傷的なラブソングですよね。
「戻ってやり直して、未来につなげたいっていう。でも、結局戻れてないんですよね、この主人公は。切ないですね」
──そういうストーリーにすることで、過去を変えても未来が幸せになるかわからないっていうことを逆説的に伝えてるのかな、とも思いました。
「ですね。過去を見て気づくこともあるでしょうが、過去を変えても未来が幸せになるかわからないし、だったら何も振り返らずにこれからの未来を作っていけばいいんだっていう。そういうメッセージも含まれてます」
──ところで、今回のシングル、ご自身でも「また面白いものができたな」っていう実感はありますか?
「ありますね」
──またリスナーをびっくりさせてあげれるかな、って?
「それはどうなんでしょうね。そればっかり考えてしまうと、やっぱり曲にそれが出ちゃうから。もっとかっこいいものをとか、みんながもっとびっくりするものをっていうのは、できるだけ考えないようにして作ってるんですよ。となると、何が大事になるかっていうと、自分が聴いたときに「あ、かっこいい」とか「鳥肌が立つ」とか、そういうところで。今回は久しぶりにナチュラルにクールなものをやらせてもらった感覚がすごくあるんですね。“歌って踊って”っていうのをシンプルに、どストライクのかっこいいところでやってみたので、そのまんま気軽に受け取ってもらえたらと思いますね」
