@ぴあTOP > インタビュー > 川村カオリ

Interview

川村カオリ “歌手であり母である川村カオリの挑戦

川村カオリ

現在、川村カオリは乳がんと闘いながら様々なことへチャレンジをしている。シングルにライブ、そして娘に贈るフォト・エッセイ。生きることにまっすぐ向き合う彼女の現在とは?

Text●今井智子

音楽からいろんなものを貰って、今度は自分が返す番

――ソロ・シングルは12年ぶりですが、この制作に至った経緯は?

「ここ9年くらいはSORROWというバンドをやっていて、今は休止状態なんですが、歌詞は英語で書いていたんです。でもバンドの最後の方では日本語で歌いたいという気持ちがありました。バンドはメンバーの集合体だから、自分の気持ちより皆の気持ちだということがあって、妥協なく自分のやりたいことをスムーズにやるにはソロしかないなという考えは、3年くらい前に固まっていました。だから自分で企画した『Honey hall』というイベントでは、川村カオリとして書き下ろしの曲を毎回やってきて、今の自分に合う歌をずっと探ってましたね。そうするうちに、自分のがんの再発がわかって一時は音楽活動も停止してしまったんですが、ブログで告知してからはいろんな事が変わってきて、ユニバーサルから作品が出せる事になって。いい機会に恵まれた中で、このシングルが大きな意味を持っているかなと思います」

――『バタフライ』は、イベントで歌ったもの? それとも最近書いたものですか?

「3年前と今と、音楽に向き合うスタンスが全然違うんです。音楽は自分の趣味とか好きなものの延長ではなく、カッコよさとかサウンドとかジャンルとかも今の私にはどうでもよくて。もっと初心に戻って、初めて自分が音楽に衝撃を受けた頃の感覚に近いんです。苛められて友達がいなかった自分とか、音楽に慰められたり励まされたり、音楽があれば大丈夫と思っていた自分があって。音楽からいろんなものを貰ってきて、今度は自分が返す番じゃないかなと。きっと私と同じような子がどこかにいるだろうなとか考えながら、バトンタッチできたらいいなという気持ちを込めて書きました」

――未来に向かって羽ばたく蝶をモチーフにした、ポジティヴな歌ですね。苦労したところは?

「メッセージ・ソングというものを長い間書いてなかったので、さてメッセージ・ソングとは何ぞや、というところから始まって(笑)。私はメッセージ・ソングを書くのは意外と不得意なんだというのがわかりました(笑)。私は弱き者の味方でありたいと思うし、そういう人たちのために音楽があると思うし、だとしたら自分の音楽の中に、暖かさとか温もりとか光があってほしい。それをどう表現するかで、改めて日本語の難しさを感じたりもしました。私は曲を書く時、メロディから始めるんですけど、最初に映像を思い浮かべるんですよ。この曲で最初に浮かんだのは、私がビルの上にいた時に、ふと窓の外を見たらアゲハ蝶が飛んでいたんですよ。そんなに高いのに、まだ空に向かって飛んでいる。“やるな、あいつ”って見てた覚えがあって(笑)。あのアゲハ蝶は力強かったな。何かに向かう私たちは、あのアゲハに似ている。じゃここからスタートだ、と」

――シングルと同日に出版されるフォト・エッセイ『MY SWEET HOME』には、娘さんとのロシア旅行での思いも綴られていますが、ご自身のルーツを確認するという意味合いも?

「ルーツと向き合う事で、私は生きる事と真剣に向き合う大きなヒントになったので大事な行為だと思っていて。たまたま去年は娘も一緒に里帰りする事になったので、彼女にもルーツを教えるという気持ちが自分の中にあって。私から娘への、ひとつの愛のかたちを見てもらえたらなあと思って、まとめたんです」

――娘さんとは初めてですか?

「毎年帰っているので、初めてではないんですが、小学2年生ともなると、ものの考え方も話し方も大人になってくるので、感じ方も違ったみたい」

――素敵な親子旅行ですね。

「楽しかったですよ。1週間ぐらいだったんですけど、濃い数日を過ごしました。私が生まれた病院から、通った小学校、夏を過ごした別荘まで、いろいろダイジェストで見せて。だから、音楽とは違う引き出しの、私の母親というチャンネルや女性という部分で、「ああそういうことを考えていたんだ」と思ってもらえるかな。“ママはね”とか、100%母親として書いてるから(笑)。親バカですね」

――またひとつ、表現が広がったのでは?

「いまの私だったら着ぐるみも着れます(笑)。怖いものはない。ロッカーである前に母親なので、娘がよろこんでくれること、ほめてくれることは何でもしたいし挑戦したい。最近は、一緒に『ZOO』を歌ったり、曲を決める時に彼女の意見も入ってるんですよ」

――5月5日にはライブも決まっていますね。

「このCDや本も、売り上げの一部を寄付するんですが、ライブもチャリティで、乳がんと小児がんの団体に寄付します。5月5日ということもあるし、その日ならではの、いつもと違う事をしたいなと考えています」

――素晴らしいライブになりそうですね。

「自分が当事者だからやりやすいですけど、私の願いとしては、一人でも多くの女性が検診に行って、乳がんになる人が少なくなればいいな、と。自分のやれる範囲でしかできないけど、賛同してくれる人が増えてくれたらいいなと思いますね」

インタビュー一覧へ戻る

おすすめトピックス

オススメキーワード【PR】

PROFILE

かわむら・かおり
1971年、日本人の父親とロシア人の母親との間にモスクワで生まれる。1988年、シングル『ZOO』でデビュー。1998年にバンド“SORROW”をスタート。DJとしても活躍し「696」というイベントを立ち上げる。また、女優、モデル、作家としても活躍中。2008年10月、乳がん再発、転移を告白しながらも、ソロの音楽活動の再開を宣言した。

公式サイト

INFORMATION

  • ★CD&BOOK発売記念トーク&ライブ&サイン会
    3月22日(日)14:00
    HMV渋谷店3Fイベントスペース


  • ★デビュー20周年を迎えた彼女のアニバーサリー・ライブが開催!
    5月5日(火) 16:30
    渋谷C.C.Lemonホール
    全席指定-5250円
  • チケット情報

SINGLE

川村カオリ『バタフライ〜あの晴れた空の向こうへ〜』

『バタフライ〜あの晴れた空の向こうへ〜』
発売中/1200円
UMCC-5008/ MILESTONE CROWDS

Amazonで購入

BOOK

川村カオリ『「MY SWEET HOME」〜君に伝えたいこと〜』

『「MY SWEET HOME」〜君に伝えたいこと〜』
発売中/1470円
ぴあ

Amazonで購入

@ぴあに掲載されているすべてのコンテンツ(記事、画像、音声データ等)はぴあ株式会社の承諾なしに無断転載することはできません。

ページTOPへ