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Interview

「アウトサイダーは全試合激闘!」

格闘王・前田日明

「伝説になりたいワル集まれ!」というシビれるフレーズで、全国の暴走族やチーマー、ストリートファイターたちを呼びかけ、総合格闘技のリングに上げてしまう。そんな漫画のような大会をプロデュースするのが、平成の格闘王・前田日明だ。過去4大会で大成功を収めたアウトサイダーが映画『クローズZEROII』とコラボし、3月15日(日)・両国国技館に進出する。ビッグイベントを前に、アウトサイダーの魅力や自身の武勇伝、さらには伝説のカレリン戦やアンドレ戦の話まで前田に訊いてきた。

Text●ぴあ編集部

ケンカはワンパンですよ、ワンパン

──前田さんの引退試合のカレリン戦からちょうど10年となりました。

「そんな経つんだなぁと思う。試合をして、ああいう人間が世界最高峰なんだと思った。カレリンはスクワットで300kg背負ったとか、背筋力は400kgオーバーとか逸話なんていくらでもある。実際試合をして、クラッチがメチャクチャ強い。アバラの骨が折れるんじゃないかと思った。それにバチーンッと俺がベストなタイミングでタックルで倒しに行って『もらった!』と思ったんだけど、カレリンはビクともしない。タックルした瞬間、『ダンプカーと衝突したんじゃないか」と思ったぐらいの衝撃だったよ(笑)。アンドレでもタックルで倒せたんだけどな」

──アンドレ戦と言えば、伝説のシュートマッチを思い出します。

「アンドレはあの当時の俺の全力のローキックを40〜50発受けても、倒れなかった。あれはあれで怪物ですよ」

──愚問ですが、今現在、現役バリバリで迎えるような年に生まれたかったですか?

「そうやな。そういうことを思わんこともない。今、ハタチぐらいだったら、まずブラジルに行きますね。ブラジルで総合格闘技のトレーニングを積んで、アメリカUFC。日本で試合をするのは一番最後だな」

──でも、もし前田さんが今ハタチぐらいだったら、総合格闘技が今よりも遅れていましたよね。

「逆にプロレスの人気が結構あるんじゃないかな。ある意味でプロレスをブッ潰したのは俺だからな」

──それにしてもアウトサイダーの両国国技館進出は驚きました。

「クローズZEROIIからコラボイベントを提案されて、俺の中でクローズのイベントの中にアウトサイダーの試合を何試合か組み込むつもりだったけど、プロデューサーが『何試合と言わず、アウトサイダーの大会にしませんか?』と言ってきたんだ。そのプロデューサーが相撲協会と太いパイプがあり国技館を使用できるようになった。まだ早いかと思いつつ、『今の勢いがあれば』と思った。でも、そうしたらこの大不況(笑)」

──『クローズZERO』は観ましたか?

「このあいだ漫画の全26巻を徹夜で読破した(笑)。ただのヤンキー漫画ではなく、やってよいこととやってはいけないことを、ちゃんと線引きをしている。すごく良い漫画だね。健康的な不良漫画。そういう面で言うと今の不良というよりも俺らの時代の不良に近い」

──前田さんには武勇伝がたくさんありますが、自分の認識では不良だったんですか?

「俺は不良ではない、ただ腕試しをしていただけ(笑)。空手の先輩に街中で『あれをシバいてこい』『これをシバいてこい』と言われただけ(笑)。漫画の『空手バカ一代』全盛だった。みんなが(登場人物の)芦原英幸にあこがれていた」

──リアル『クローズ』ならぬ、リアル『空手バカ一代』ですか(笑)?

「そう。空手の修行だから武器を持とうなんて夢にも思わなかった。俺らの時代にもチェーンを持っている奴とかがいた。でも、チェーンなんて腕に巻きつけたら終わりじゃん。だから後はボコボコ(笑)。暴走族でバットや木刀を振り回す奴もいたけど、腕を取っちゃえばそれでおしまい。それこそ剣道の有段者とかなら別だけど、だいたい『おりゃー』って叫んでバットを振り回しているだけ。だから振り回している間はバットが当たらない場所で様子を見て、相手が疲れ出したら向かって行く(笑)。ナイフを持っていたら、自分の着ている服を脱いで腕に巻きつけるとか、そういう対処はうまかった」

──前田さんのケンカはワンパンでしょうね。

「ワンパンですよ、ワンパン。ボクシングの試合みたいにずっと殴り合うなんて、ケンカではあり得ない。まあケンカには前口上もあるから。ケンカは口8割、実技1割、あと運1割(笑)」

──全部空手の修行ですよね(笑)?

「そう、全ては空手が強くなるため。1回、高校の時、相撲取りを襲撃しようとしたんだ。大阪場所の時、部屋の外の公園で待ち伏せして。そしたら100kgくらいのザンバラ頭の序二段くらいの奴が出てきた。後ろから髪の毛を引っ張ってシバいて、パンチが効かないようだったら逃げようと思っていた。それで髪の毛を掴もうとしたら、後ろから大きな影が近づいてきたんだ。気配を感じて振り向いたら、当時の大横綱・輪島(笑)。もう、それで作戦中止。『輪島さんお疲れ様です。僕ファンです』って(笑)。そしたら輪島さんが『君、体が大きいね、相撲をやらないか?』って言われ、『いえいえとんでもない。失礼しました』って立ち去った(笑)」

──どんな高校生ですか(笑)。

「そういった意味でいうと、プロになってから怖いなぁと思ったことは一度もない。空手の修行で度胸がついたんだな」

──度胸と言えば、アウトサイダーに出場する選手たちは地元で有名な不良たちだから肝が据わってますよね。

「スタミナ配分も作戦もない。ゴングが鳴ったら、オニヤンマの空中戦みたいなもの(笑)。気持ちが前面に出ているから、つまらない試合なんて1試合もない。本当にダイヤモンドの原石だらけ、素質の宝庫ですよ。アウトサイダーに出場した奴で、素質があって本人がプロを志望するなら、俺は道を作っていくことを目的にしている」

──前田さん自身が選手を育てることはしないのですか?

「もちろん考えている。来年、ジムを開こうと準備はしています」

──アウトサイダーの過去4大会を踏まえ、課題はありますか?

「やっぱり安全管理と場内でのトラブル。前回、試合後に選手がタンカで運ばれる事故があったから、救急救命セットを買った。結構な出費だったけど、どんなアクシデントがあっても大丈夫なように救急救命セットは大事。そもそも試合は街のケンカよりも安全でないといけない。ルールもフラッシュダウンでもすぐカウントを取るし、前回の大会を経てブラインド(死角)からのパンチも禁止した」

THE OUTSIDER

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──早めにストップすることで選手から不満が出ることはないですか?

「そんなもん、『ここのボスは俺だ』のひと言で終わり(笑)」

──選手たちの本気度は凄まじいものがありますからね。

「やれ暴走族だ、チーマーだと頭張った奴らだし、応援団も多い奴だとそれこそ100人くらい会場に来る。子分たちの手前、負けるわけにはいかないのだろう(笑)。それこそ人生をかけている」

──それでは最後に改めてアウトサイダーの魅力を教えてください。

「若さのぶつかり合い。腕自慢が集まって、しのぎを削り合うのがアウトサイダー。全試合が“激闘”ですよ。格闘技に飽きた人が観ても面白いと思うよ。アウトサイダーに出場した奴から将来のチャンピオンたちが生まれる。俺の夢はアウトサイダー出身の奴が、オリンピックの金メダリストで総合格闘技に転向してきた選手から一本取るかKOして、『ざまあ見ろ』と言ってくれること(笑)。近からず遠からずそういうことはあると思う」

記者会見の模様「映画『クローズ』と格闘技『OUTSIDER』が強力タッグ!」
映画『クローズZEROII』特集

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PROFILE

前田日明

まえだ・あきら
‘59年、大阪府生まれ。ご存知、“平成の格闘王”。新日本プロレスから格闘技色の強いUWF、そして世界中の格闘家を集わせたリングスで活躍。’99年にアマレスの五輪3連覇のカレリンとの引退試合まで数々の名勝負を残してきた。引退後、ビッグマウスやHERO’Sのスーパーバイザーを経て、昨年にアウトサイダーを立ち上げる。
リングス公式サイト

INFORMATION

  • 「クローズZEROII公開記念 THE OUTSIDER SPECIAL」
    映画『クローズZEROII』公開記念と題している通り、アウトサイダーとクローズのコラボイベントとして、3月15日(日)・両国国技館にて開催される。大会当日は映画『クローズZEROII』の出演者が登場し、作品の特別映像が上映されるなどコラボイベントらしいサプライズも。

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