スピッツが約1年3か月ぶりにシングル『若葉』をリリースした。映画『櫻の園-さくらのその-』の主題歌として書き下ろされた本作について、制作過程からどんな内容となったのか4人に聞いた。
Text●松浦靖恵
――2008年第1弾シングル『若葉』が11月5日にリリースされました。この曲は映画『櫻の園-さくらのその-』の主題歌ですね。
草野「主題歌の話を頂いて今年の春頃に作った曲で。資料として映画のパンフレットみたいなものとか台本を頂いたんですけど、(曲を)作る時は、それをなんとなく頭の片隅に置いておくぐらいで。ただ、映画の内容や映像の色合いから、アップテンポの曲じゃあないなって思ってて。あとは『櫻の園』のエンディングに流れるなら、櫻が散ったあとは若葉だなっていうイメージで作り始めましたね」
――マンドリンの音色がとても印象的でした。
草野「作ってる頃に出たトラヴィスっていうロック・バンドの曲にバンジョーが入っているのを聴いて、バンドの中にない弦楽器が入ってるのっておもしろいかもっていうアイデアが浮かんできて、それを試してみたんですよ」
三輪「結局、バンジョーじゃなくてマンドリンを入れたんだけど」
――このマンドリンは誰が弾いたんですか?
田村「マンドリンマンは、テツヤ」
三輪「一応さ、俺は確認したんだよ。“俺が弾いていいの!?”って」
草野「小さい楽器だし、弦を押さえるのもギターとは違うし、チューニングはバイオリンと同じだし、テツヤは大変だろうなと思ってたんだけど……」
三輪「できる範囲内で頑張った! ギターと弾き方は違うけど、それをいかにギターっぽく、自分が弾きやすいポジションで弾くかをいろいろ試しながら弾いた」
──歌詞は『櫻の園』を意識して書いたんですか?
草野「うーん。それも頭の片隅にちらっと置いておくって感じだったかな。やっぱり主題歌って、映画の世界とあまりにもかけ離れた歌詞には自分自身が強く意識していないとしても、そうならないというか」
田村「なんか、寄り添っているってぐらいの感じがいいよね、主題歌っていう存在は……」
草野「今年、唯一レコーディングした作品なんで、主題歌ではあるけれど、今のスピッツが届けられれば」
──『若葉』は、スピッツの楽曲の中でもスタンダードな部類に入る曲ですよね。
三輪「スピッツってデビュー以来ずっと変わらないですね、なんてよく言われるんだけど、実はいろいろ試してるんだよ。今回も、仮ミックスをそれぞれ自宅でチェックしたり」
草野「PCにデータで送ってもらってダウンロードして、それを各自でチェックするっていうのは初めてやった」
田村「そういう過程って別に聴いてる人たちはわからないことではあるけど、作り手としてはいろんな機材や環境が進歩、進化している中で、まず試してみるっていうのが大事で。で、やってみて自分たちに合うかどうか決めればいいって思ってる」
草野「たぶんね、俺らって好きなものが多くて、やってみたいことがまだまだいっぱいあるんですよ。でね、意外と流行を気にしてて、それを取り入れたりするんだけど、気づいてもらえなかったりして(苦笑)」
田村「でも、その気づいてもらえなさ加減っていうのが、なんか俺らっぽいんだと思うよ」
草野「うん。だから長くやってこられたんだと思う。何をやっても結局スピッツにしかならないっていう着地点がある。でも、何でも試してみたいんだよね、着地点がそこにあったとしても。それがなくなったら、やっててもつまんないんだろうなぁ」
田村「だから、『若葉』もスタンダードな曲ではあるけれど、いろんな楽器の組み合わせを考えると、実はスタンダードな曲の中でおもしろいことをやってる曲で。たぶん、こういうタイプの曲だとストリングスが入るアレンジが正統なんだろうけど、ストリングスは入ってないんだよね」
草野「きっと、俺らに主題歌を依頼してくれた方は、スピッツの変化球を求めてなかったと思うんですよ。でも、俺らの中ではスタンダードの中にちょっとした変化球を入れてる曲なんですよね」
――カップリング曲の『まもるさん』は、おもしろいタイトルですね。
草野「ま、一応“守る人”で“まもるさん”ってだけで、そんなに大した意味はないんです」
三輪「“まもるくん”でも“まもるちゃん”でもなかったっていうのも、たぶん大した意味はなかったと思うよ(笑)」
田村「スピッツのシングルのカップリング曲って、いつもいろんなことを試せる場所になってることが多くて。聴いている人にはわかりにくいところかもしれないんだけど、アレンジとかサウンドで変化をつけたり、おもしろい挑戦をしてみたりしてるから、自分たちにとって新しい次に結びつく何かを見つけられたりして」
崎山「それこそ、ライブではできないかもしれないけど、レコーディングで試してみるか、とかね」
田村「『まもるさん』も、トラディショナルな楽器が入ってるけど、(プロデューサーの)亀田誠治さんと話し合いながら、真面目さと遊びのさじ加減を楽しみながらアレンジを形にしていった曲なんですよ」
三輪「ま、気づく人は気づくだろうし、気づかなくてもそれは別に気にしないっていうか。やることに意義があるっていうの!?」
──さて、現在はツアー中。来年にはアリーナ公演があります。
田村「これ、書いておいてほしいんですけど、アリーナ公演が終わったらスピッツは休むんじゃないかって思ってる人もいるみたいなんだけど、スピッツは休みませんから! 来年はしっかりレコーディングのスケジュールが入ってますんで!!」
