――4人になって初めて制作したアルバム『Nexus』を聴かせていただきました。発表される作品を聴くたびに思うのは、ストレイテナーは常に最新作が最高傑作だなと。

「ありがとうございます。自分でやっぱりそうじゃないと納得出来ないですよね。自分の中で最高傑作じゃなかったら、世に出せないじゃないですか。みんなそうだと思うんですけど。それがちゃんと聴いてもらって、自分たち以外の人がそう思ってくれるっていうのは、もちろんそうありたいけど、嬉しいですね」

――作り手の方々は常にそう思いながら作られていると思うんですけど、リスナーとのギャップって出てくることもあると思うんです。

「確かにそうですね。自分ではそう思っていても、人は関係ないというか、そうじゃないかもなっていうことを思っている人は多いかも知れないですね」

――かと言って、ストレイテナーがリスナー寄りに、これならより受け入れてもらえるだろうと、狙っているわけでもないと思うんです。自分たちが、やっぱり最高だと思うものを作り、それがイコール、リスナーもそう思ってくれるという自信がある？

「ありますね。そういうバンドだとちゃんと思ってもらえているというか。新しい面を出してくるだろうとか、何かしらビックリするようなことをやってくれるだろうっていうのもありつつ。シンプルなところでメロディやライブで上がれるかっていうか、そういうところも求めているだろうし。より聴いてくれる層を広げたいがために、ちょっとキャッチーなっていうか、ポップなアプローチをしてみようとか、そういう風なことを考え出したら絶対ファンの信頼は裏切るっていう気もしますよね」

――アルバム『Nexus』ですが、大山さんのギターが1本入ることによって、これまで以上に音に深みが出ていますよね。音に奥行きが出て、ホリエさんの描くメロディがより表情豊かに伝わってきます。

「そうですね」

――これまでの作品もホリエさんが自分でギターを2本重ねたりされていたけど、改めて今までの音源と聴き比べてみて、やっぱ違うんだって感じました。

「そうですね。違和感なく違うんですよね。僕がギターを重ねたりする時に出てくるアイデアって、やっぱり限られるというか、自分の解釈の中でのものになるんだけど、自分の解釈以外のそこから全然はみ出て、もっと先へ行ったものが純（大山）くんから出てくるから。だから単純にコードの弾き方ひとつでも違って、響き方が全然違ったり。曲の雰囲気からメロディの雰囲気から変えてくれるっていうか」

――互いに“これがイイ”というツボ、感覚を理解しあえているからこそですよね。

「そこで理屈で分かってる人って訳じゃなくて、全部センスでなんだか分からないけど自由にやってる感じがまたバンドっぽいっていうか。4人とも誰も理屈で組み立てようとしないから面白いのかなって」

――今回の曲っていうのは、4人になってから作られた曲ばかりですか？

「そうですね」

――ということは、もう1本ギターが加わるということを意識しつつ、今まで3人で作ってきたものとはちょっと意識が違いました？

「違いますね、最初っから」

――ホリエさんひとりで曲作りをしている段階から違いました？

「それはなんとなくですね。なんとなくスケールがでかくなることを期待しながら作っていく感じ。メロディも展開ごとに、一番盛り上がるサビ的な展開の時には、より力の入ったメロディを持ってこようとかいう意識も曲によってはあるんですけど。逆に、サビでメロディのトーンが下がっちゃったりしても、そこでバンドのアンサンブルでスケールを広げるようなことが出来ればサビらしくなっちゃうというか。そういう曲もあったりしますね。『Lightning』とかそうですよね」

――それは、4人になってからこそ出来たことでもあるんですか？

「そうですね。自然とそうなっちゃったんですよね」

――他のメンバーも、3人から4人になって違ってきたことはありますか？　ドラムのナカヤマさんは？

「やっぱりライブが違うんですよね。安定感とかグルーヴが違いますね」

――ベースの日向さんはどうですか。

「ひなっち（日向）もベースのプレイが、ベースの枠に収まりきれないプレイっていうか、なんだか凄いな〜みたいな印象が強かったと思うんですけど。ベースのプレイの枠の中で凄いところっていうのを追求出来るっていうか」

――なるほど。それは4人になってからのライブを観させてもらって感じましたね。

「元々やってたベースの域をはみ出したような音を、こちらからリクエストしてた時もありますけどね。今は、ベースの音域の中で、もっと深く掘り下げていくじゃないですけど、曲によってアプローチを変えていく感じがありますね」

――大山さんはどうですか？　ストレイテナーと一緒にプレイしたり曲を作ったりしたことについてどういう姿勢だったというか？

「『Nexus』の段階だと、やっぱり自分が入ったからには、やってやるぜっていうか、違うものをストレイテナーに植えつけてやるじゃないですけど、そういう意識もありつつ。でも、やっぱりストレイテナーというバンドの今まで積み重ねてきた良さっていうのを、凄い大事にしようっていう意識がもちろんあって。その絶妙なバランスで、『Nexus』が出来上がったなと思うんですよね。でも、これから先どうなるか分からないっていうか、純くんが今やりたいギターのプレイとかアイデアみたいなものも多分あると思うし。そういうものから新しい曲が出来ていくっていうのが、これからなんじゃないかって思います」

――今回収録されている『Stilt』は、大山さんがナカヤマさんと昔一緒にやろうとしていたバンドのために作っていた曲なんですよね？

「そうですね。古さが否めない曲ですからね（笑）。それが逆にいい感じになったっていう」

――詞に関してですが、今回日本語でガッツリ書いてる曲が多いなという印象も受けました。

「前のアルバム『LINEAR』でも英語の曲は1曲しかないんですけど。『LINEAR』のころから、自分の書く詞、歌う歌のオリジナリティっていうのは日本語で出す方がいいって思うようになりましたね」

――昨年末のライブ「COUNT DOWN JAPAN」の時に、最後のMCで“2月に『Nexus』（きずな）っていうアルバムを出します。音楽で絆を深めていけたら･･･”っていうことをライブの最後に言われていて。ストレートなメッセージを最後にＭＣで言うっていうことに驚きました。今までのホリエさんとは違うというか。

「あれは曲間で言い忘れたからなんですけど、曲を全部やった後に言ったことで、より印象が強かったんだろうなと思いますね」

――心にとても焼きつきましたよ。

「年末に紅白を観ていたら、同じようなテーマだったんですよ。紅白観ながら、ひとりで赤面しました(笑)」

――紅白のテーマもそうだったんですね（笑）。アルバムの最後の『ネクサス』という曲の中で、“僕らはたまたま同じ船に　乗り合わせただけの赤の他人じゃないのさ　わかっていたんだ”と、歌われていますよね。メンバー、そしてスタッフやリスナー、ファンに向けた強いメッセージを感じました。

「そうですね。内に込める思いとかメッセージっていうのはずっとあったんですけど、でも直接的に歌詞のひとつのセンテンスで分かるようなメッセージっていうのは自分らしくないと同時に、今伝えるべきことっていうか、包んでる場合じゃないって気持ちで書いていますね。それは、10年やってきて思うことなんですけどね。凄く深く聴いてくれるようなコアなリスナーはもちろん何かを感じ取ろうと思って聴いてくれるけど。音楽ってコアなリスナーだけのためのものじゃなくて、やっぱりストレイテナーの名前も知らない人が聴いても何かを感じて欲しいと思って作ってるんで。そこで包んでたら意味がないっていう。ラジオとか有線でかかってるだけでも、耳に残るようなことを歌いたいって思いましたね」

――3月6日(金)からは、「Nexus Tour」も始まりますね。4人でプレイするライブ、さらに楽しくなりそうですね。

「そうですね、気持ちいいですよ」