2008年、“3!”のネタでお笑いの世界を席巻した世界のナベアツは、多才な顔の持ち主だ。そんな彼が、竹馬に乗ったアイドル・紫SHIKIBUをプロデュース。このアイドルの誕生から、完全プロデュースの裏話まで訊きました。
Text●森 朋之 Photo●三浦孝明
紫SHIKIBU
──“紫SHIKIBU”の「竹馬に乗ったアイドル」というコンセプトは、どんなふうに思いついたんですか?
「竹馬で何かネタができないかなって思っただけなんですよ、単純に。最初はね、自分のライブで『シャイニング』っていう映画のパロディをやってたんです。ジャック・ニコルソンが斧を持って奥さんをバスルームに追い込んで、窓の桟からジロッと覗くシーンがあるんですけど、それを“竹馬の間から覗く”っていうことにして……でもね、映画を見てない人にはまったくウケなくて(笑)。じゃあ、竹馬に乗って歌ってみようかな、と。でも、ひとりでやってても寂しいだけだから、今回のメンバーに声をかけさせてもらって」
──雨上がり決死隊、ココリコの田中さん、ガレッジセールのゴリさん。豪華なメンバーですよね。
「すごいですよね。まさかCDが出せるとは思ってなかったんですけどね。宮迫さんは、ライブか何かで1回だけやるネタだと思ってたみたいですし(笑)」
──しかもシングル『LOVEなんだよ』はナベアツさんの作詞・作曲。80年代アイドルっぽい、妙にキャッチーな曲ですね。
「光GENJIの再来ですから(笑)。楽器なんかできないから、ぜんぶ鼻歌で作ったんですけどね。夜中に車を止めて何時間も歌ってたら、パトカーが止まって職務質問されまして。そんな苦労の末にできた曲です」
──(笑)。レコーディングのディレクションもナベアツさんが?
「ええ、一応。“もっとムカつく感じで歌ってください”とか“宮迫さん、歌が上手すぎます”とか、そんな感じですけど。聴いてもらえればわかると思いますけど、本気度はゼロですからね。いい年したオッチャンが何やってんねん、っていうダメな感じが出てると思いますよ」
──でも、この企画もナベアツさんの人気がなければ成立しなかったんじゃないですか?
「いや、あの4人がいてくれれば、僕がいなくてもCDは出せたと思いますよ。まあ、ちょっとはワガママが言えるようになってきたというか、やりたいことを提案させてもらえるようにはなってきてるかもしれないけど。いまも少しずつ、自分のライブで試してるんですよ。“これはイケそうやから、広げてみよう”とか“これをやったら、またPTAに嫌われるな”とか(笑)」
──“3の倍数でアホになる”で、学校関係者からはブーイングが来てるって言いますよね。
「まあ、直接言われたことはないんですけどね。あ、そうだ、『LOVEなんだよ』のカップリングに『竹馬体操』っていう曲が入ってるんですよ。あの曲で子供が竹馬に乗ってくれれば、健康増進にも役立つし、PTAにも好かれるようになればいいな、と」
──そのあたりは計算して(笑)。
「はい(笑)。まあ、僕は基本的に“低俗バンザイ!”なんですけどね。バカバカしいことをやりきる、っていうのがテーマだと思ってるので。僕が低俗なことをやらなくなったら、叱ってください」
──まあ、それも芸人としてのひとつのスタイルですよね。
「そう思いますけどね。ただ、そういう考え方が破滅に導くのかもしれないですね。セルフ・プロデュースというか、TPOに合わせて自分をコントロールできる人が生き残っていくんだと思うんですよ、結局。でも、それをやりたがらないところがあるんですよね。僕、もともとはブラックなネタも大好きなんですよ。自分のライブのネタを書いてると、すぐ動物を殺したくなったり(笑)」
──テレビではやれないネタですねえ。
「そうそう。しかも今、ちょっと子供にも人気だったりするじゃないですか。そうするとね、周りの人から言われるんですよ。“いまはブラックなネタはやめとけ。絶対、引かれるから”って。でもね、どこかで“そんなん知らんがな”って思っちゃってるんですよね。ダメならダメでええやんっていう……まあ、大人になりますわ。もうちょっとがんばりたいので」
──ナベアツさんは放送作家としての顔もお持ちですが、これからも“芸人と作家”は両立させていくんでしょうか?
「そうですね。あの、芸人さんが番組の企画から立ち会えることって、ほとんどないと思うんですよ。それができるのは実力者だけで、たぶん、10人もいない。でも僕の場合は、芸人としての実力が足りない部分を、作家としての経験で補えるんじゃないかと思ってて」
──それがナベアツさんの武器ですよね。
「ただ、いまは破綻しかけてますけどね、作家としては。企画会議には出てるんですけど、台本を書く時間がなかなか取れなくて……。まわりのスタッフさんが“あいつは時間がないやろうから、しょうがない”ってフォローしてくれるから、何とかなってるようなもんで。でも、そもそも作家の仕事が好きやし、いいポジションやと思うんで、できればこれからも続けたいですね」
──やっぱり、やりたいことが実現できる環境が整いつつあるんじゃないですか?
「そうかもしれないですね。ちょっと前までは、とにかく知名度がほしかったんですよ。それによって、やれることが広がると思ったので。だから、ここからが大事なんだと思いますね、僕は」
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ニュース「竹馬に乗ったアイドル・紫SHIKIBUが新宿でフリーライブを実施」
