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20周年を迎えたスカパラ。ここまでの道のりは決して平坦なものではなかったが、彼らは一度もその歩みを止めることなく走り続けてきた。やはり彼らに迷いはない。
Text ●島田 諭
'89年のデビュー以来、幾度となくあったメンバーの脱退。その中には、不慮の事故死もあれば病死もあった。しかし、いつどんなことが起きようとも、東京スカパラダイスオーケストラは止まることがなかった。いっさいの言い訳を持たず、転がり続けながら、リスナーやオーディエンスをつねにハッピーにしてきた。そして今回も然り。オリジナル・メンバーである冷牟田竜之の脱退をポジティブなモチベーションに換え、またもやぼくたちを笑顔にするニュー・アルバム『PARADISE BLUE』を完成させたのである。メンバー9人を代表し、バリトンサックス担当の谷中敦とギターの加藤隆志に話を訊いた。
──「やっぱりスカパラって普通じゃないな」って思わせるパワフルなアルバムだったんですけれども。
加藤「うん、うん」
──冷牟田さんが7月に脱退して、けれども11月にはレコーディングが終了して、これってどういうことなのかなと。どうしてスカパラって止まらないのかなと。
加藤「夏のフェスティバルでは(前作となるアルバム)『Perfect Future』の楽曲を“10マイナス1”の形で乗り越えたので、“マイナス1”じゃないものを早く世の中に届けたいっていう気持ちがあった。9人でできる、『Perfect Future』を上回る作品を作るという思いで、かなり覚悟を決めてレコーディングを始めたんですよ」
──それはメンバー全員、一致した思いで?
谷中「そうですね」
加藤「それがアルバムには込められたと思うので、いまはすごく誇らしい気持ちです。また新しいことが始まるなっていう期待も自分たちの中にありますし」
──相当な短期間での完成だったと思うんですけど。
谷中「いつもこんな感じですよ。録るのは1日1曲、だから全部の作業あわせても1ヵ月くらい……かな?」
加藤「やるぞって決めたら早いんですよ」
谷中「メンバー全員が作曲するっていうのも強みかな」
──どうしてこのアルバム・タイトルになったんですか?
加藤「『Paradise Blue』って表題曲があって。これ、川上(つよし)さんが20年前に作曲したものなんですよ。今回のアルバム用に書き下ろした曲は30曲以上あったんだけど、昔の曲を引っぱりだして、当時……結成したときの気分や初期衝動に戻れるのかなあとか思いながら、まずそれを最初に録ったら、『Paradise Blue』がアルバムの核になるなって感じた」
──その曲のレコーディングがうまくいったから、あともうまくいったわけですよね?
加藤「そうですね」
──川上さんがやろうって持ってきたんですか?
加藤「マネージャーが“昔のこういう楽曲があるんだけど、これめちゃめちゃかっこよくないっすか”って。最初は、それをいま演奏してどうすんだろう……みたいな気持ちがあったんだけど、演奏することになにか意味があるんじゃないかってだんだん思えてきて」
──タイトルも20年前から『Paradise Blue』だったんですか?
谷中「いや、違う」
加藤「録り終わってから川上さんがタイトルを付けて。ブルーはブルース、憂いの意味で、その対比にあるパラダイスを付けることで、自分たちの立ち位置も含めて表現できるんじゃないかって。パラダイスに向かっているっていうね」
──非常にいまの時代にぴったりなタイトルでもありますよね。
谷中「そうだね。20年前の曲をやって、自分たちの立ち位置がブレていないか確認ができてよかったよ」
──スカパラは今年デビュー20周年なんですけれども、その09年は、「外」で迎えたんですよね(※大晦日、渋谷のストリートで告知なしのカウントダウン・ライブを敢行した)。
谷中「20年前にやっていたストリートで、『Paradise Blue』をプレイしたけど、やっぱりブレがなかった」
加藤「そういうところでスイッチが入るメンバーっていうのがいいなと思うんですよ、スカパラは」
──スカパラって、ライブできるならどこでもいいんですね。場所を選ばないというか。
加藤「聴いてくれる人がいれば……いや、いなくても、全員聴いてくれる人にする!(笑)。そういう力があるのが、ストリートっていう場所でもあるわけですし」
──広大な場所、つまり夏フェスなんですけど、後ろのほうで自分たちのパフォーマンス観に来ようと走っている人たちって、ステージから見えます?
谷中「見える」
──あれね、「スカパラだ! スカパラだ!」って、音に吸い寄せられるように走ってるんですよ。
加藤「うれしいねえ」
谷中「『ライジング』(RISING SUN ROCK FESTIVAL)だったかな? ラーメン買って走ったら、汁がなくなっちゃったっていう人がいて(笑)」
──その人、食べたいのと観たいのと、両方の欲を抑え切れなかったんですね。
谷中「うはははははっ!」
加藤「そのラーメン、谷中さん弁償してあげたほうがいいんじゃない?(笑)」
