スチャダラパーとのコラボ・シングル『Hey! Hey! Alright』に続き、自身初のバラードシングルとなる『どこ』をリリースする木村カエラ。この2枚のシングルは、6月にデビュー5周年を迎える彼女にとっては、音楽を楽しむという原点を再確認し、第1章の終わりを象徴する作品となったようだ。
Text●永堀アツオ Photo●三浦孝明 ヘアメイク●フジワラミホコ(RITZ) スタイリング●岡部みな子 衣装協力●ボンジュールレコード■03(5458)6020/mystic原宿店■03(5774)8116/Dual THREAD有楽町マルイ店■03(6738)3637
──まず、スチャダラパーさんとコラボした感想から聞かせてください。
「一緒にやれてよかったなって思いましたね。やっぱり、ずっとひとりでやっていると、気持ちが内へ内へといってしまったり、いろんなことを深く考えすぎてしまうときがあって。その中で、スチャは、楽しみながら音楽を作っていく人たちだったので、その感覚のなかにいれただけで、気持ちがすごく楽になった。それに、自分をカッコつけたり、上乗せして飾ることもないので、ありのままの自分でいる大切さを改めて感じたりもしました」
──4人でのインタビューやミュージックビデオ撮影もカエラさん自身がとても楽しんでる様子が伺えました。
「うん、すごく楽しかったですね。スチャといると、心から『あははは』って笑えるんですよ。それに、しのっぴ(渡邊忍)とやった『どこ』のレコーディングも、すごく安心感があって、楽しかった。しのっぴは、ASPARAGUSとして活動しているけど、『大好きな音楽を仕事として考えたくない』って言ってて。だから、いつも『遊び遊び』って自分に言い聞かせながらやってるんだって。そんなしのっぴが、 “普段使ったらちょっとおかしいんじゃね?”っていう言葉を余裕で使ってくるところが、私としては、原点に戻れるような感じだったんですよ。私は応援してくれる人が増えるたびに、いろんなことを考えすぎて、頭が固くなってきちゃうので、スチャやしのっぴが、固くなった頭をほぐしてくれたなって思いますね」
──いま、「原点に戻る」と言ってましたが、6月にはデビュー5周年を迎えますよね?
「そうなんですよ。なんかね、『どこ』のレコーディングをしたあとに、自分のなかで第1章がパツンと終わった感じがしたんですよ。それが5周年のタイミングとたまたま重なったっていうのもあるんですけど、いま、なにか新しいことを探したいと思っていて。いろんな仕事を成功させるのはもちろんなんですけど、詞の書き方とか物事の考え方とかがガラッと変わる予感がしていて」
──どうしてひと区切りついた感じがしたんですかね? 第1章の終わりを感じた原因は歌詞にありますか?
「歌詞はね、いつも共作で書いてたので、今回も『いつ書く?』っていう話しをしてたんですよ。そしたら、ある日、そろそろ書き始めようかっていうタイミングのときに『全部かけちゃった』っていうメールが来て。それで、歌詞を見てみたら、すごくいい詞だったので、うん、じゃあ、このまんまでって」
──そこに抵抗はなかったの? これまでずっと書いてきたし、初のバラードでもあったじゃないですか。
「ちょっとはありましたよ。初のバラードだし書きたいっていう気持ちもあったけど、自分で書く必要がないなって思ったの。まず、最初にしのっぴが書いてきた歌詞を見たときに、私がデビューしてからずっと書いてきたテーマが1曲にまとめられてるって感じたんですよね。私はなにかに例えてダブルミーニングにしたり、絵本みたいに書いたり、妄想の世界で書いたりしてるけど、結局は、心のいろんな状態を書いてて。いままで50曲くらい書いてきたけど、それを分かりやすく、すごく素直な言葉で、1曲にまとめられた感覚になった。私にとっては共感できる部分が、計り知れないくらいあったし、<ほんの少しの幸せでいいんだ/そのきっかけを探してるよ>という最後の言葉は、デビュー当時に書いた『hapiness!!!』のことでしかないなと思ったし」
──2ndシングル『hapiness!!!』では<全てがちっぽけなつみ重ね/集めてたら届くと思うの>と歌ってましたが、「みんなに日常の小さな幸せを見つけて欲しい」というのは、カエラさんの音楽の本質的なテーマでもありますよね。
「そう。だから、デビュー当時からいままで書いてきたものが、ましてや、私の性格や考えていることもそのまんま形にされたっていう感じなんですよ。私のことを知ってる人だからこそ書ける歌詞だと思うんですけど、しのっぴは、私のことを『しょっちゅう感情に流されて、心に振りまわされてる人だ』って言ってて。確かに、その通りだなって思いましたね」
──じゃあ、『どこ』の歌詞は、カエラさんが誰かに言ってもらいたいことが書かれてるっていう感じですか?
「う〜ん、しのっぴからメッセージを投げかけられてるんだなって思いました。すごく新鮮だったのは、自分の歌なのに、自分がこの歌をすごく好きで、励まされてるような感覚になったんですよ」
──逆に、共感できない部分はなかったんですか?
「えっとね、サビがちょっとうじうじしすぎかなとは思いましたね(笑)。<刻んだ記憶たどって/溢れ出る涙で洗い流してしまえば>みたいな気持ちは、私にはいっさいない。女の人は引きずらないと思うので、サビの部分を見たときに、ここは男の人の感覚だなって思ったんですよ。でも、しのっぴが書いた男の子の感覚を、女の子の私が歌うっていうのもおもしろいなと思って、そのまま言わないでおいたら、あとから『なんでそのときに言わないんだよ』って怒られましたけど(笑)」
──でも、しのっぴらしさとカエラらしさが共存してるからこそ、性別とは関係なく、多くの人の心の共感を呼ぶ歌詞になってる気がします。
「そうですよね。やっぱり、人は、自分の心がどこにいくんだろうっていうことに常日頃悩まされてると思うんですよ。心がどこかに行ってしまって、そこからがんばって這い上がろうとする人もいれば、そのまま落ち込んでしまう人もいる。私は、この『どこ』っていう言葉がすごくポジティヴな意味に感じたんです」
──<心よ今日はどこ向かうのだろう>のあとに、幸せのきっかけを探してますもんね。出来上がったのを自分で聴いてみてどんなことを感じました?
「ひと言ひと言がすごく素直だし、自分のなかにある気持ちでもあるので、口に出して歌ってみたときに、やっぱりなにかを思い出してしまうんですよね。それがなにかは、分からないんですけど、歌いながら情景を思い出して、悲しいとか、恋しいとかいう言葉に対して、素直に感情を入れようとしてた。だから、ピッチやテンポを気にしないで歌ってたんですけど、出来上がった音を聴くと、やっぱり恥ずかしくて。素直な気持ちだけで歌ってる曲なので、声もストレートすぎるし、裸を見られたような恥ずかしさがある曲になったと思いますね」