Text●大野貴史 Photo●三浦孝明
'99年1月29日の無期限活動停止から、ぴったり10年。'09年1月29日に黒夢は復活を果たす。そして、たった一度だけ日本武道館でライブをやって今度は正式に解散する。この黒夢の復活&解散ライブに当の本人である清春は、どんな気持ちで臨むのだろうか? 前日にリリースされるソロ名義の黒夢セルフカバー・アルバム『MEDLEY』のことも含めて語ってもらった。
──黒夢の復活&解散。ビッグニュースとして報じられ、かなり盛り上がっていますね。
「なんか、そうみたいですねぇ」
──本人的には、どんな感じ?
「他人事みたいな感じですね(笑)。黒夢って活動してた当時、例えばX JAPANとかLUNA SEAのように突き抜け切らなかったじゃないですか。上昇中に終わったっていうか。解散ライブみたいなことも全然やらなかったしさ。だから幻想のようなものが大きくなってるのかなって思う。あとは活動休止から丸10年後の同じ日にライブをやるっていうことで、できすぎたストーリーとしての盛り上がりもあるだろうしね」
──その“10年後の同じ日”というのは、ずっと狙っていたわけですか?
「全然。一昨年ぐらいに、まず人時のほうから僕のマネージャーに連絡があったんですよ。黒夢を再開したいんだけど、みたいな。それで、やるなら丸10年目の'09年1月29日だな、と思っただけ」
──再開したい、と提案されたときの清春さんの気持ちは?
「ないな、と思いましたね。今、ソロで好きなことをやれてるのに黒夢に戻る必要なんてないですから。それに、そもそも10年前に黒夢を無期限の活動停止にしたのも僕の意志じゃなくて。人時が抜けるって事で、じゃあ活動停止しかないなっていうことだったんで。なのに今になってやりたがる理由もわかんなかったし。それに最近は再結成するバンドが多いけど、全てがカッコいいって訳でもないじゃないですか。だから最初は微妙な心境だった。でも10年という年月が流れて大人になった自分っていうのもどこかにいて。やりたい人や見たい人がいるなら、やってもいいかな、とも思いまして。1回だけやって、ちゃんとこれまでの黒夢を終わらせるのもいいかな、と」
──人時さんは、どうして黒夢を再開させたくなったんでしょうか?
「よく知らない(笑)。まだ会ってないから」
──ええっ? まだ会ってないの!?
「会ってないよ(笑)。電話とかで話したりもしてない。だから彼がやりたい理由はわかんないけど、でも会っても、そこは質問しない気がするな。10年間まったく連絡をとってないから“元気? 久しぶりだね。最近どうしてるの?”みたいな感じでスタートするんじゃないかと思う」
──それにしても今日の段階で、まだ人時さんに会ってないというのは驚きです(このインタビューは1月8日に行われました)。
「バンドのリハーサルは、もう始まってるんだけどね。僕は20日ぐらいから参加するから、そこで会うことになるんだろうな。それに僕の場合、昨日まで『MEDLEY』のレコーディングをしてて時間なかったし」
──決してネガティブな気持ちでの復活&解散ではないんですよね?
「もちろん。ただ僕にとって黒夢っていうのは、そんなに美化されたい思い出ではないんです。それ以降の10年のほうが僕にとっては遥かに重要なんです。変なバンド幻想っていうものに対して、無意識に戦ってきた10年だったからね。だけど、こうして10年ぶりに黒夢をやると決めたからには、しっかりやりますよ。茶番みたいな無様なライブには絶対にしない。黒夢に影響を受けて音楽を始めた若いミュージシャンとか、ずっと憧れ続けてくれてるファンとかを、がっかりさせたくないしね」
──で、さっき話に出た『MEDLEY』なんですが。清春さんソロ名義の黒夢セルフカバー・アルバムということで。
「ある意味では禁じ手的な(笑)。このタイミングで、こういうアルバムを作るっていうのは。でもね、僕的には“おかえりなさい”っていう感覚なんですよ。これらの曲たちが僕のところへ帰ってきたような感覚。休止から10年が経って、ここで今度は完全に解散するっていうところで、これらの曲が僕に返還されるような感じなんです」
──1月29日の武道館ライブは、このアルバムの収録曲を中心に?
「いや。むしろ逆。まだ最終的なことは決めてないけど、このアルバムからは、ほんの数曲しかやらないんじゃないかな」
──こんなに代表曲満載なのに!?
「うん。武道館ライブは最後のツアーの曲をやると思う。気持ち的には'99年までの……というか'08年までの黒夢を、'09年型の黒夢で叩き潰すつもりなんです。そうすることが最も黒夢らしいと思うんですよね」