社会現象にもなったお騒がせ者、DJ OZMAが年内をもって引退する。ラストとなる大晦日には、オリジナル・アルバム『I ♥ PARTY PEOPLE3』とベスト盤をリリースする彼に、ラスト・アルバム、これまでの活動について訊いた。
Text●松田義人(deco) Photo●三浦孝明
――引退が決まってから、さらに精力的に活動されているように思いますが。
「まぁ、湿っぽく終わる男でもないので、DJ OZMA生前葬としては、やっぱりアゲ♂アゲ♂でいきたいな、という」
――シングル『MASURAO』がリリースされたばかりですが、歌詞がリアルで戦う男への応援歌になっていますね。
「やっぱり僕自身も弱い人間でございまして。これまでの活動は、結局“DJ OZMA”というキャラクターに自分自身を投影してきただけなんですよね。友達もそんなにいるわけでもないし、女の子にうまく声をかけることも出来ないし、ただ『ホットドッグプレス』を読みあさるという青春時代をおくってきましたから。自分が思う、最高にイカすヒーローというのが“DJ OZMA”だったわけです。顔? 別にカッコ良いわけじゃない。スタイル? 別にいいわけじゃない。頭? 学力があるわけでもない。じゃあ、なんか取り柄があるのかと言ったら、たいしたモンは持ってないんだけど、とにかくいつも底抜けに明るくて、いい意味でタブーを恐れずに戦っている男。そういう意味では、自分自身と、いつもがんばっている男に捧げる、いい曲が出来たと思っています」
──大晦日にリリースされる最後のアルバム『I ♥ PARTY PEOPLE3』にも通ずるものでしょうか? こちらは、数々のパーティーチューンが今まで以上に満載ですが。
「もちろん。自分では意識してなかったんですけど、DJ OZMAの活動を振り返ってみると、やっぱり僕はずっと同じことを考えていたんだな、言いたかったんだなって改めて思いました。僕のアルバムは『I ♥ PARTY PEOPLE 1』『I ♥ PARTY PEOPLE 2』、そして大晦日に出る『I ♥ PARTY PEOPLE 3』と3作品になるわけですけど、どのアルバムも、とにかく普段のイヤなことは忘れて、騒ごうぜというコンセプトがあるんです。お祭りが大好きだったはずの日本……。でも、なんでもかんでも自粛ムードになってしまっている今の日本……。今の日本は、騒ぐことがとにかくダメになっている風潮がありますけど、そうなるとつまり、ゆとり教育とゆとり音楽しかなくなっているってことじゃないですか。そんなことをやっている間に、近隣の国にどれくらい差をつけられているか、という。僕はそれがすごいイヤだったんです。みんなでがんばること、みんなで盛り上がること、みんなで楽しく騒ぐことは、決して恥ずかしいことでもないし、カッコ悪いことでもない。それが伝わればいいなと思って、そこにずっと挑戦して来ました。『I ♥ PARTY PEOPLE 3』になって、よりダンサンブルになっていますし、さらに考えなくても良い、ただ楽しい音楽ばかりが入っています。3部作の完結には相応しいんじゃないかと思っています」
──刹那的とも捉えられそうですが、音楽くらいは自由であっていいですよね。
「そう。だから、“気分”だけの盛り上がりだって十分じゃないかって思っていたんですよ。世に言うデフォルト思考みたいなもの……“無難なことをやっておけば安心”“ネガティブなことを言っていれば安心”みたいな風潮がありますけど、そんなことをやってても、身の回りの状況は何の解決にもならないですから。“じゃあ、僕に何が出来るかな”と思ったときに、経済界を良くしてあげることも出来ないし、ひとりひとりのところに行って“元気を出せよ”と言うことも出来ないわけですから、まずは“気分”かな、と。それで音楽を使って、元気になった“気分”を与えらればいいかな、と。それだけを繰り返しやり続けてきた3年間だったんですよね」
──その盛り上げ役が引退し、今後不在となると、寂しくなりますね。
「まぁ、2代目DJ OZMAも先日襲名したばかりですし(笑)。彼がより面白いことをやってくれるかもしれませんし、他にもDJ OZMA的なお祭りアーティストが出てくるかもしれませんし」
──気になる引退後、何かまた新しい計画があるんじゃないかと期待する声もありますが。
「有り難いですけど、引退後は、亀戸にある実家のボールペン工場を継ぐことになっているんで(笑)。他にも良い就職先があるんじゃないかと就活もしないといけませんし、まぁ僕自身が世間でどう捉えられているのか、自分では判断つかないところがあるんですけど、とにかく僕が蒔いた種が、またどこかで芽吹けばいいなぁとは思っていますよ」