今年8月にリリースした待望の新作『アンダー・ザ・レーダー』をひっさげ、ダニエル・パウターが再来日。11月28日のNHKホール公演を皮切りに2年ぶりのジャパン・ツアーを行う。『バッド・デイ〜ついてない日の応援歌』の大ヒットによって、“世界中を励ますピアノ・マン”と謳われたダニエルが近況と来日公演の意気込みを語る。
Text:山口智男 撮影:坂本泰士
――ニュー・アルバムのリリース後、精力的に世界各地を回って、プロモーションに励んでいるそうですね。
ダニエル・パウター(以下D.パウター) 「うん、行く先々で歓迎してもらっている。『バッド・デイ〜ついてない日の応援歌』のヒットの後、すぐに次のアルバムを出そうというアイデアもあったんだ。だけど、ヒットに便乗にするような形で新作を出すようなことはしたくなかった。結局、新作をリリースするまでに2年もかかっちゃったわけだけど、今はまた、ゼロからのスタートのつもりで取り組んでいるよ」
――忙しい毎日の中で気分転換したり、リラックスしたりするダニエルなりの工夫なんてあるんでしょうか?
D.パウター「リラックスするにはハイキングが一番。オススメだよ。この間も高尾山に登ってきたんだよ。時間の都合で途中のお寺(薬王院)までしか行けなかったけど、とても素晴らしかったね」
――電車で行ったんですか?(笑)
D.パウター「もちろん! ずっと寝ていたけどね(笑)。ハイキングに出かける時間がないときは、ホテルのジムで汗を流したり、部屋で読書したりしているよ」
――どんな作家が好きなんですか?
D.パウター「レイモンド・カーヴァーの短編小説が好きなんだ。彼の作品は感情表現がとても豊かで、短いストーリーの中に伝えたいことすべてが凝縮されているからね」
――ダニエルの歌もストーリー仕立てのものが多いですね。メッセージや感情をストレートに表現せず、ストーリー仕立てにすることで、どんな効果を狙っているんですか?
D.パウター「そうだね。メッセージやストーリーを限られた時間の中で伝えるという意味では、短編小説に近いところがあるかもしれないね」
――ところで、そろそろツアーも恋しいのではないでしょうか?
D.パウター 「もちろん!」
――ダニエルにとって、ツアーやライブは、自分の音楽活動の中で、どういう位置づけなんでしょうか?
D.パウター「曲作り、レコーディング、プロモーション、ライブ……どれが一番大事ってことはないんだけど、それぞれの活動の終点がライブだって思うんだ。だって、ステージに立つたびに、僕はこのために音楽をやっているんだって実感するからね。ステージに立っている1時間半とか2時間とかの間、僕は誰にも邪魔されずに、自分の音楽を通してファンとつながれるんだ」
――「今日はいいライブができた!」と実感するのは、どんな瞬間ですか?
D.パウター「それはやっぱり、ファンとつながれたと思えた瞬間さ」
――来日公演が間近に迫りましたが、今回は、どんなライブになりそうですか?
D.パウター「前回よりも大きなスケールで、おもしろいショウを見せられると思うよ」
――『アンダー・ザ・レーダー』は、『バッド・デイ〜ついてない日の応援歌』の大ヒットによって定着した“ピアノ・マン”というイメージに止まらない多彩な楽曲に挑戦したロック色濃い作品でした。そういう変化はステージにも反映されるんでしょうか?
D.パウター「“ピアノ・マン”というイメージを払拭しようとか、ロック・アルバムを作ろうとか考えていたわけではないんだ。ただ、前のアルバムと同じような作品を作ってもつまらないと考えたら、そういう作品になったってことなんだけど、そうだね。今回は前回よりもピアノを演奏しない曲が増えると思う。ステージでピアノを演奏していると、たまにピアノが錨に思えるときがある。ピアノの前に座っていると、ステージ全体を使って、ファンとコミュニケーションを取ることができないからね」
――ああ。だから、ダニエルのバンドには、もう一人、キーボーディストがいるんですね。
D.パウター「お客さんはライブに、ただ音楽を聴きにきているわけではなく、ショウ全体を楽しみにきていると思うんだ。だったら、ステージではエネルギッシュに動きまわって、ファンを退屈させないようにしなきゃ(笑)。それにライブではお客さんひとりひとりの顔を見ながら、コミュニケーションを取ることも大事なんだよね」
――今度の来日公演では、どの曲を演奏するか、もう決めたんですか?
D.パウター「まだ決めていない。もっとも決めていたとしても当日まで内緒だけどね(笑)。ライブはレコードとは違って、一回限りの勝負だ。だから、安易に曲を並べればいいってわけにはいかない。全体の流れも考えなきゃいけないんだ。これからバンドとリハーサルを重ねて、一番ふさわしいセットリストを、じっくり考えるよ。どんなライブになるか楽しみに待っていてほしいな」
――来日公演、楽しみにしています。
D.パウター「僕はみんなが来てくれることを楽しみにしているよ!」