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野田秀樹 松たか子と宮沢りえが同じ舞台に! 名優はなぜ野田作品に集中するのか

『The Bee』『ロープ』『The Diver』と、この数作、人類の暴力とその絶対性について描いてきた野田秀樹。NODA・MAPで放つ次なる新作『パイパー』は、野田自身が「あえてのSF」と定義する作品。その意図とは。

Text:佐藤さくら Photo:本房哲治

世界の始まりではなく 終わりを描きたくなった

「本当は、事前にあまりくわしい内容を話したくないんだけどね」

取材の冒頭、口を開いた野田秀樹は新しい遊びを手に入れたかのような表情になった。まるで、自慢したいけれどまだ秘密にしておこうと決めた子どものように。
手元の資料には、「千年後の火星。人々と共に火星に移住した“パイパー”」「そこで懸命に生きている姉妹、ダイモスとフォボス」「時空を超えた壮大なスケールとスリリングな展開」とある。野田秀樹とSF。これはかなり珍しい組み合わせだ。

「僕らの世代でいうと、火星って夢の世界のようなイメージがあるんですよ。それは月に次いで人類が住めるかもしれない星ということでもね。だけど近年は、火星ってあまり見向きをされなくなった(笑)。でも、そのほったらかされてる感じが今回の世界観にちょうどいいなって」

表面を酸化鉄で覆われ、宇宙という暗闇に赤く浮かび上がる火星。そこで展開される物語は何を示すのか。

「僕は、今までどちらかというと“世界の始まり”を描くことが多かったんだけど、もし“この世の終わり”を書くとしたら、いつ、どこを舞台にするかと考えたのね。何十年後かの未来だったら、だいたいこうなるだろうという予想はつく。でも到底想像がつかない時期と場所、要は最もリアリティのない場所はどこかと考えた時に、自然に千年後の火星という設定になった」

さらに気になるのは、妹ダイモスを演じる松たか子と姉フォボス役の宮沢りえ。どちらも野田作・演出の舞台で2度ずつ主人公を演じ、両者ともそれぞれの公演で名だたる演劇賞を受賞している。卑俗な言い方になるが、通常、主役級の女優の出演はひとり。あえてふたりをそろえた意図を知りたくなり、重ねて設定を聞くと、「火星に住んでる設定ではあるよ」と答えた後、話題は「なぜ稽古前に取材で内容を話さなければならないか」から「なぜ最近の映画の予告編は見どころを全部見せるのか」までシフト。そこをなんとか!

「じゃあ大筋だけいうと(笑)。物語は千年後から過去を振り返るという視点を持ちます。つまり、この千年間に火星で起こったことを、姉妹が語るという形式。父親ワタナベ(橋爪功)を含めた家族の、3世代の物語といってもいい。ダイモスとフォボスの仲? 悪いです(笑)」

すると、松と宮沢の対決もアリ?

「それはまだ分からないけど。でも、日本って女優同士が、対等に舞台上に存在する公演って少ないじゃない? だから松さんと宮沢さんに、それぞれ『そういう設定でも……やる?』と聞いたのは確か。そうしたらふたりとも『やる!』って言ってくれて。今回はふたりのサッパリとした性格もあって、実現したと思う」

それにしても、名実ともに大物といえる彼女らの共演は“事件”だ。なぜ女優たちは、あらゆるハードルを前にしつつ、NODA・MAPの舞台に挑もうとするのだろう。

「ウチが他と違うところね…うーん。創作にまつわる“ケア”がいいんじゃない?(笑)。舞台を作るという意味では、時間をかけてマジメにやっているから。例えば稽古にしても、自分が出ないシーンでも来てねと伝えるし。それは毎日参加するという意味だから、自然と皆で作る感覚になるでしょう。あと僕は、どんなに役者たちがいい作品でも、戯曲が良くなければ『違う』と思うのね。これは戯曲家としての気持ちでもあるんだけど、公演をやるなら作品全体の底上げを考えなければ、というのはいつも意識していることだね」

だってさ、と野田は続ける。

「役者だって自分を表現する仕事をわざわざ選んだはずなのに、ただ明るく『よろしくお願いしマース』でなんでも済むわけがないじゃない。そうじゃないから、面白いんだよ」

さて、タイトルにもなっている『パイパー』。資料には「生物?機械?人間?」とある。この設定もほんの少しだけ聞き出したのだが……あえて書かないでおく。野田の新しい遊び=PLAYは、謎が多いほうがいい。

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PROFILE

のだ・ひでき
1955年、長崎県生まれ。1976年に夢の遊眠社を結成、日本演劇界に大きな影響を与える。1992年の劇団解散後は、英国留学を経て、1993年NODA・MAPを設立。話題作を手がけるほか、歌舞伎、オペラ、海外での創作など、多岐にわたり活動している。
公式サイト

INFORMATION

  • NODA・MAP『パイパー』
    2009年1月4日(日)〜2月28日(土)
    シアターコクーン

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