- FC東京オフィシャルDVD
- 『スピードスター・石川直宏』
- 価格:3990円(税込)
- 5月上旬発売
ワールドカップに臨む日本代表メンバー23名の発表が、いよいよ5月10日(月)に迫った。南アフリカ行きか、日本にとどまるのか。ボーダーライン上にいる選手の心境は察するに余りある。だが、日本代表でジョーカーの役割が期待される石川直宏には気負いも気後れもない。FC東京のスピードスターは、自然体のまま語り出した。
Text●戸塚啓 Photo●大崎聡
――南アフリカW杯のメンバー発表まで、あとわずかとなりました。今の心境から聞かせていただけますか?
「思ったより冷静に過ごせています。周りの方々の期待とか不安は僕の耳に入ってくるんですが(笑)、自分はいたって冷静と言うか。4月の代表戦を振り返ったり、色々な思いを感じながら過ごせています」
――冷静に過ごせているのは、昨秋の左ヒザのケガが順調に回復しているから?
「それはあると思います。この状態まで来ていなければ、ケガのことを考えてしまうと思いますし。今は『ケガの影響でこれができない』というものがないですし、自分がやるべきことがかなりハッキリしていると思うので」
――そのやるべきこととは?
「僕の仕事は点に絡む、自分たちに勝利を引き寄せるプレーを続けることです。日本代表にしてもFC東京にしても、攻撃のリズムを変える、スイッチを入れる。先発でも途中交代でも、攻撃のリズムを変えて勢いをもたらすプレーを求められていると思います」
――昨年のJリーグでは自己最多の15得点。2ケタ得点も初めてのことでした。変化をもたらしたものは何だったのでしょうか?
「色々な要因があったと思います。周りに活かしてもらい、ゴールの近くでプレーする機会が増えたのがひとつ。スピードを少し抑え目に色々な判断をして、プレーする材料を増やすと言うか、そういうことがスムーズにできるようになったこともあります。何か特別なことをしたわけでなく、去年のチームに自分をフィットさせるための変化が、結果につながったと思いますね」
――決定力についてもう少し。点を決めるということについては、具体的な変化があったのではないですか?
「自分の中では、ゴールまでの形が見えたからこそシュートを打つという感覚なんです。決められると思ったときに打っている。難しいシュートもありましたけれど、それにしても可能性を信じてというわけでなく、『確実に決められるぞ』という感覚でした。打つべくして打ったと言うか」
――ゴールのイメージがハッキリ浮かんでいた?
「道筋が見えていました。ナビスコ(カップ)も含めた18ゴールすべてが『今までなら一年に一度あればいいかなあ』という感覚のもとで決めたものでした。それは大きな変化でしたね」
――スピード豊かで突破力があるだけでなく、得点力という肉付けがなされている。
「実際はとても大変でした(笑)。何年も前から試行錯誤をしてきて、うまくいかない時期のほうが長いですし。右サイドから勝負するストロングポイントを自分に言い聞かせながら、少しずつ変化を加えて辿り着いたのが昨年のプレーでした」
――日本代表チームにおける石川選手は、メディアから『スーパーサブ』という位置づけで見られていますが、(日本代表の)岡田武史監督から起用法についてお話はあったのでしょうか。
「いえ、特にはないんです。4月のセルビア戦では最初の立ち位置(ポジション)だけ言われましたけれど、求められているものはそこから中への飛び出しだったり、自分で仕掛けてのシュートだったりとか。そこまでイメージしながらピッチに立ちました」
――途中交代は難しい?
「難しいですけれど、やり甲斐はあります。『自分が流れを変えて、チームが勝利をつかんだら』とか、『ここで点を取ったら』と考えると、俄然やる気が沸き上がってきますね。自分が期待されているのはそういう仕事だと理解していますし、ここぞというときに『アイツがいるぞ』と思われるような、チームに必要な存在になることが大事ですよね」
――ゴールへ向かう姿勢は頼もしい限りです。
「僕自身、そういうプレーを見ると『気持ちいいなあ』と思うし、期待を感じる。ワクワクしますよね? 日本代表はしっかりボールをつなぐことができるチームですから、タテパスを入れられるような動き出しをしたりして、期待感の抱ける試合を見せたい。いま一番必要なのはゴールへ向かっていく姿勢で、それがチームの勝利へつながっていくと思う」
――自分のプレーがW杯でどれぐらい通用するのか、ぜひ確認したいですね。
「W杯という機会が、自分の中でとても大きなものであるのは間違いないです。そういう意味では非常に楽しみ。ただ、こればかりは自分ではどうしようもできないですから。僕は、自分なりの判断基準でレベルアップしていくだけですね」
――W杯のメンバー発表当日は、どんな一日になりそうですか?
「どういう状況で結果を聞くことになるのかなあ。僕がイメージするのは’98年のカズ(三浦知良:現横浜FC)さんのこと(注:W杯直前の合宿で落選)であり、’06年のジーコ(監督)の会見であり。自分が候補に入っているということを、つい最近まで考えていなかったので、ちょっと想像できないですね」
――自信は?
「自分の中で『南アフリカに行く』って決めているわけではないし、かと言って自信がないわけでもなくて。やるべきことにチャレンジしていければきっとそうなって、『南アフリカのピッチにも立っている』っていう考えがあるからなのかなあ……」
――メンバー発表に合わせるように、DVDが発売されました。
「僕の中では、すべてつながっているから、このタイミングで発売されるんだろうなあと。そうなればいいなあと思っています」
――DVDでは自分のゴールを解説していますが、他ならぬ自分自身にも役立っているのでは?
「そうなんです。もともと僕はいいプレーの映像を見返すタイプなんですが、去年の18ゴールを解説することで、いいイメージを膨らませることができますね。これからの自分のイメージアップも含めて、自分にとってもいいDVDに仕上がっていると思います」
――書籍も発売されます。こちらはかなり、衝撃的な内容だそうで(苦笑)。
「すべてをさらけ出しました(笑)。そういう本にしたかったので。たぶん僕のイメージっぽくないところはあると思います。だからこそ、たくさんの人に読んでほしいですね」
――人間臭い部分を知ることができるわけですかね。
「この本を読んでくれた人が、まさにそういったことを感じてくれたらなあと思います。『人間臭いね』とか、『泥臭くていいよね』とか、そんなふうに思ってくれたら嬉しいです」
