全国ライブハウスツアー真っ最中のヴィジュアル系バンド、jealkb(ジュアルケービー)のボーカリスト・haderu=ロンドンブーツ1号2号・田村淳にインタビューを敢行! エレクトロなポップロックシングル『makemagic』と、7人では最後になるツアーについて話を聞いた。
Text●道明利友
――jealkbがこういうダンスビートな曲をやるのはちょっと予想外でした! ビートの効いたロックサウンドっていうイメージが、今までの作品の多くにはあったと思うので。
「賛否両論あるでしょうね(笑)。今までは、なんかこう……。“ヴィジュアル系バンドはこうじゃなきゃいけない”っていうものを、他のバンドさんに理解してもらうために一生懸命やってきたんですよ。そしたら、まわりの人たちが理解してくれ始めたんで、今からなら色々やっても“ふざけてる”とは言われないんじゃないかなって。他のバンドがやらない方向に行けるバンドになってきたんじゃないかな、っていうことで」
――“ヴィジュアル系”っていうシーンで認めてもらうために一生懸命やってきて、それがひとつ形にできた実感があったからこそ今回は新境地が開拓できたというか。
「はい。ヴィジュアル系の人たちってこういう言葉を選ぶよねとか、こういう世界観だよねとかっていうのを自分たちなりに追いかけてた感じがあるんですけど。それがようやくライブでも表現できるようになって、“jealkbってこういうライブやってます”っていうのをまわりにも打ちだせるようになったんで、CDでも今の自分たちがやりたいことをやり始めたっていう。で、今回のシングルは、jealkbらしさみたいなのが出せるものっていうことでメンバーで話し合った中で、ダンスナンバーっぽいのがあったらライブで盛り上がるから作りたいねっていうところから始まったんです。とにかくライブが盛り上がるようにしていきたいっていうのが、メンバー全員の中では一致してるんですよ」
――なるほど。じゃあ、今やっているツアーでもこういう曲は効果絶大じゃないですか?
「そうなんですよ。ライブでこういう楽曲があったらいいなっていうことで作った曲なんで、今やってるライブでも盛り上げるところでの中核にこの『makemagic』はなってくれてます。ライブにきてくれたお客さんに、どういうふうにすれば他のバンドと違う印象を残せるかって考えたら、やっぱり楽しい楽曲があったほうがいいなと思って。ビジュアル系ってどっちかっていうと、重たい感じとかダークな感じがあるじゃないですか。その部分は忘れずに自分たちも持っていようと思うんですけど、それだけでやっている人たちにはやっぱりかなわないんで、違う世界観を打ち出したいっていうのがあって今回はダンスナンバーにしたし。次に考えてるのも、それこそラップとか、演歌とか……」
――(笑)ラップもすごいですけど、このビジュアルで演歌って、まったく想像つかないんですけど………。
「いやいや! そういう人たちっていないからやってみたいって考えちゃうんですよ。本当に、融合できると思うんですけどね……。演歌の情念とか、世界観って混ざらなくはないんじゃないかなって」
――あぁーっ。言われてみれば、なんとなく……。ヴィジュアル系のドロッとした雰囲気は、情念って言いかたもできそうな。
「そうそう。『天城越え』の歌詞とか読んでも、ヴィジュアル系の世界観に似てるなと思ったんですよね(笑)。だから、曲の入りは演歌っぽいんだけど、最終的にはきちんとヴィジュアルロックを、ヴィジュアル系の世界観が打ち出せるロックにチャレンジしてみたいんです。でもたしかに、『合うわけねーだろ!』って言われるんですよ、まわりのスタッフにも。だから、まずはラップとの融合を実現させてから……(笑)。まだそれなら理解してくれる、みたいな人はいるんで(笑)」
――ヴィジュアル演歌が本当に生まれるのか楽しみにしてます(笑)。さっきもちょっと話が出ましたけど、今はちょうど全国ツアー中、そのツアーファイナルはJCBホールですね。
「はい。今回はライブハウスツアーなんで、小っちゃい会場ばっかりやってたところからいきなり最後に大っきいとこに行っちゃうんで……。ライブハウスの良さと大きいとこの良さを、きちんと融合させられるライブにしたいと思ってます。あとJCBは、7人のライブがラストになるんですよ。ギターとキーボード、ふたりメンバーが抜けるんで」
――そうなんですよね……。moftoさんとchaosさんが。ちょっとしんみりな感じになっちゃうのかな、みたいな。
「逆に、そのお別れ会的に、いい感じにできればなとは思ってるんですけどね。またいつか戻ってこれるんでしょ、っていう感じで。で、そのあとは7人体制から5人体制になるんで、またゼロからっていう感覚でやりたいなとは思ってます。7人から5人って、バンドが半分解体されるみたいなもんなんで……。だから、最初はやっぱり5人で音楽をどこまでやれるかってところに集中して、5人でしっかりできるようになったら、7人でもともと目指してた“パフォーマンス集団”のほうに行けたらいいなとは思ってますけど」
――jealkbの今後のプランは、“パフォーマンス集団”ですか。
「はい。バンドっていうカテゴリーに留まるんじゃなくて。だから、それこそ去年にコンドルズさんっていうダンスグループと一緒にやったのは……。あの人たちも、コントをやるし、バンドをやるし、ダンスもやるし。そういうエキスを吸いたいと思って、コンドルズさんとはやらせてもらったんですよね。コンドルズさんはダンスを基本に、そこから色んなパフォーマンスを派生させてやっている。だったら僕たちはバンドを基本として、もともとが芸人だからコントもやれるし、真面目なお芝居もやってみたいし、あと……。ミュージカルとかもやってみたいし(笑)」
――(笑)それもかなり面白いんですけど、ミュージカルとか真面目なお芝居も、このヴィジュアルでやるんですか? イメージとかけ離れた役を演じることもあるっていう。
「もちろんそうですね。お母さんの役をやるかもしれないし……」
――(笑)こんなお母さんがいたら、子供は絶対悲しんじゃうと思いますけど……。
「(笑)お母さんかどうかは分かんないですけど。でも本当に、色んなことをやってみたいんですよね。今回のツアータイトルも、そういうところから来てるものなんですけど……。こんなに長いツアーをやるのって今回が初めてなんですけど、自分たちもそんなにライブがやれるのかっていう“未知数”な感じがあって。で、自分たちはパフォーマンス集団になっていこうよっていう、他のバンドと“異なること”をやっていきたいねって考えてた時期につけたんで、“異薔薇ノ未知”になったんです。JCBは、その集大成に……。僕たちの今までの5年間の活動の集大成として、7人としてやってきたことを全て出したいなとは思ってるんですけどね」