@ぴあTOP > インタビュー > ロバート・ラム(シカゴ)
5年ぶりに単独来日公演を行うアメリカを代表する大御所ロックバンド、シカゴ。ボーカルのロバート・ラムが1か月も早く緊急来日した。40年続いたバンドのこと、ライブのこと、日本の印象などを聞いた。
Text●鈴木宏和
――シカゴがデビューしたのは1969年なので、昨年で40周年なんですよね。
ロバート・ラム(以下ロバート)「そうだね。ここまでやってこられたことを、とても誇りに思うし、幸運だったと思う。そしてまた、音楽には学ぶべきことがたくさんあるってことにも気づかされた40年だったよ」
――ここまでやり続けてこられた秘訣を教えてください。
ロバート「それは、オリジナル・メンバーも、後から加わったメンバーも、とにかく音楽をプレイするのが大好きだってことだよ。名声とか、金とか、女性とかじゃなく(笑)、音楽を愛してるっていう。それに尽きるね」
――実際のところ、過去にはバンド存亡の危機もあったのですか?
ロバート「一番大きかったのは、テリー・キャスが亡くなった時だね。あれは本当に大変な出来事だった。僕たちはすでに有名になってて、すごく若かったから、どうしたらいいかわからず呆然としてた記憶があるよ。そのくらいかなあ。まあ、今もモメごとはしょっちゅうだけど、みんな大人だから大丈夫なんだ(笑)」
――音楽面では、ピーター・セテラの脱退も大きかったですか?
ロバート「ああ、そうだね。とても残念なことだった。でも、音楽的な面で大きなターニング・ポイントとなったのは、『シカゴ15』から『シカゴ17』の時期だったと思う。バンド内でいろんなことを議論したし、戸惑うメンバーもいたからね」
――シカゴは、最初期のブラス・ロックと呼ばれるスタイルから、音楽性を進化させていったわけですが、あれは意図的なトライアルだったのでしょうか?
ロバート「いや、自然に進化していったんだと思う。ポップ・ミュージックの変化に影響を受けながら、僕らも変わっていったんだ。バンドのメンバーが作曲してるし、当然、周りからの影響を受けるからね」
――そのメンバーも、才能あふれる人ばかりですしね。
ロバート「(日本語で)ドーモ(笑)」
――初来日のことは憶えていますか?
ロバート「うん、憶えてるよ。1972年、いや71年だったかな」
――そうです。以降、何度も来日されていますが、日本のファンの印象は変わりましたか?
ロバート「僕が見る限り、今は若いファンがリラックスしてるね。日本のファンは、ちょっと控えめで、ヨーロッパのファンとすごく似てると思うんだ。昔は特にそうだった。音楽を本当によく聴き込んでくれるしね。その点、アメリカはヒドい(笑)。大騒ぎして、まるでフットボールの会場みたいだよ。日本とヨーロッパのファンは、敬意を払ってくれるんだよね。アメリカのファンは、騒ぐことしか楽しみ方を知らない(苦笑)」
――今回は、どんなライブを期待していたらいいでしょうか?
ロバート「もうセット・リストは完成してるんだけど、日本語でやろうと思ってね……なんて(笑)。まずはもちろん、ビッグ・ヒット曲はやるし、たとえば『シカゴ17』の、しばらくやってなかったような曲もやるよ。『シカゴ30』の曲もやるつもりだ。今すごく、バンドの調子がいいんだよね。新しいパーカッショニストも入ったし。フー・ファイターズとも一緒にやってるドリュー・ヘスターに加わってもらったんだ。素晴らしいプレイヤーだよ。憶えてるかな、70年代のシカゴには、ブラジル人のパーカッショニストがいたんだよ。ドリューが入ったことで、当時のヴァイブを思い出して、すごくいいグルーヴが生まれてるんだ」
――40周年ということもあるので、オール・タイム・ヒットという色合いが濃くなる感じですか?
ロバート「それはあるね。2ndアルバムの曲もやる予定だし。限られた時間で、できるだけ多くの曲をやりたいから、メドレーなんかも考えてるよ」
――正直、もうやりたくないと思う曲はないんですか?
ロバート「それが、ないんだよ。ちょっと嫌いかもと思うような曲があったとしても、聴き直してみると、また好きになってしまう。まあ、20年、30年前に作った曲を聴くと、子供のころに書いたヘタクソな絵を見るような気分になったりはするけど(笑)」
――ズバリ、あなたにとってシカゴとは、どういう存在ですか?
ロバート「シカゴは、僕の人生そのものだよ。家族であって、友人でもあって、とてもクレイジーでね(笑)」
――今回は、ずいぶん早くから日本に入っているのですね。
ロバート「そうなんだよ。日本には10回以上……12回ぐらい来てると思うんだけど、実は1度、長期滞在してみたいと思ってたんだ。妻と一緒に、1か月ぐらいね。それが今回実現したんだよ。観光名所巡りとか、銀座でショッピングとかじゃなくて、ゆっくりあちこち回ってみるつもりだよ。とにかく日本が大好きなんだ。文化にしても、もちろん日本人もね。だから、公演の1か月前に来て、探険を楽しむってわけさ(笑)」