“今を生きる女性たち”がテーマとなったコンセプト・アルバム『WOMANING 〜今を生きる女性たちへ〜』が完成した。本作は、荒川静香、コシノヒロコ、桃華絵里ら様々なジャンルで活躍する11人の女性が詞やモチーフを提供。リアルな女心を歌った新作の制作秘話や本作を携えてのライブについて河口恭吾に聞いた。
Text●道明利友
――歌詞の提供はすべて女性っていうコンセプトはとても面白いですね! これはどんな思いから発案されたものなんですか?
「僕は自分で歌詞、曲を今までずっと書いてきたんですけど……。そういうなかで、女性の心情みたいな部分ってやっぱり、想像なんですよ。こういうシチュエーションだったらこう思うだろうとか、こう思って欲しいっていう想像が、僕は男なんで当然あるんですよね。ていうところで、実際はどうなのかなっていうのが何年か前から気になってまして……。じゃあ、実際に女性に歌詞を書いてもらいたいなって思いついたのが去年くらいで、しかも、どうせだったら自分が気になっている女性に書いてもらいたいっていうのがあってオファーさせていただいた中から、今回のコンセプトの“今を生きる女性たちへ”っていうのが段々できあがってきたんですよね」
――なるほど。同じ女性を主人公にした歌詞でも、男性からの目線で書くのと女性からの目線で書くのとではやっぱり違いが。
「うん、感じましたね! 面白かったのが……。齋藤薫さんっていう美容ジャーナリストのかたには(『最後のプライド』を提供)、昔付き合ってた彼氏と偶然会うみたいなお話をいただいて。で、付き合ってた当時、年上の彼氏に見合う彼女になるためにブランドもののバッグを背伸びして買った、みたいな一文を僕が付け加えさえてもらったんです。そしたら、何回目かの打ち合わせのときに齋藤さんに、“この一行が気になってるんです”って言われて……。いまどきの女性は、ブランドもののバッグを持つことに自分自身の価値とかを見い出すっていうのはもうないと言われまして(笑)。僕はなんですけど、男としてはやっぱりいまだにそう思ってたんですけど、齋藤さんいわく“そうじゃない!”と(笑)」
――なるほど(笑)。僕も男子としては、そういうありきたりなことを考えちゃうと思います。でも実際は、っていう……。
「そうそう。恋愛なんかにしても、男は過去をわりと引きずりがちなところがあると思うんですけど、いまの女性は意外とスパッといく人が多いのかな、とか(笑)。ナヨナヨしてないっていうか。そういうことは、男子的には意外と目からうろこなんですよね」
――河口さんが見た“今を生きる女性たち”は、そういう意味では皆さんすごく強さを持っている人たちだったというか?
「そうですね。例えば、コシノヒロコさん(ファッションデザイナー。『名もなき花よ』を提供)にしても、田中明子さん(webデザイナー。『Restart』を提供)にしても、離婚を経験されていたり……。“モモエリ”さん(桃華絵里:モデル、実業家。『バタフライ』を提供)もそうですよね。人生に大きなターニングポイントがあって、やもするとマイナスにとらえがちなものをプラスに変えて、すごく前向きに生きていて。実際にコシノさんも言ってましたけど、それをバネにして仕事へのモチベーションに変えていくことで今の私があったっていう……。言葉で言うとサラッとしてますけど、そこにはやっぱり壮絶な時間とか苦しみがあったはずなんですよ。そのマイナスをプラスに変えていくことっていうのは、“今を生きる女性たちへ”っていうテーマとして歌ってますけど、僕たち男に対しても前向きなメッセージになると思うんです」
――“今を生きる女性たち”への応援歌でもあり、その人たちと一緒に今の時代を生きている男性へのメッセージでもあり、みたいな。
「そうそう。もう本当にリアルな、実体験から描いた嘘偽りないメッセージっていうのを、曲を一緒に作っていくなかでヒシヒシと感じたので。マイナスをプラスに変えていく“自己実現力”みたいなものが、非常に強くて。で、今回の曲はどれも外部のかたからいただいた言葉だったりするので、歌ってる感覚としては非常に楽しいんですよ。自分のボキャブラリーにない言葉がいっぱい詰まってるような曲たちを皆さんに伝えるっていう作業になるので、ボーカリストとしては歌ってて非常に楽しくって。で、その表現に関しては……。意外とね、今回いただいた歌詞って、女性が書いてるんだけど“女性言葉”にはなってないんですよ、ほとんど」
――あっ、そうですね! 言われてみれば……。“〜だわ”みたいな“女性言葉”は、柿沢安耶さん(野菜スイーツパティシエ。『野菜のお菓子の作り歌〜ラディッシュ クリーサンド クッキー〜』を提供)の曲だけかも。
「そう! “〜だわ”とか“〜なのよ”とかはね、ほとんどなくて。意外と中性的にも見えるんですよね、字面で見ると。なので、表現としてはそんなに性別を意識することなく、歌詞の持つ世界観をそのまま伝えていければなっていうふうには考えてます」
――という今回のアルバムの曲がメインになるに違いない11月のライブは、どんな見せかたをしようと考えていますか?
「今までって意外と、通常のライブ・パフォーマンスみたいなことをここ何年かはツアーとかでやってきたんですけど。それプラス、なんかもうちょっとエンタテインメント的な要素みたいなものを入れながら皆さんに楽しんでもらえる内容にしたいなと。あと、今回はコンセプトアルバムっていうところで、このインタビューでも話させてもらったメッセージ的なこともあらためてお客さんに多少アナウンスしたほうがいいのかなっていうのもあったりするので……。そういうブロックと、今まで自分が作ってきた楽曲を織り交ぜながら、久しぶりのワンマンライブなのでそういうふうに丁寧に作っていくような内容になるんじゃないかなと今は考えてます」
――今回のアルバムで伝えたいメッセージと、エンタテインメントな要素と……。色々なものをお客さんに届けるライブになりそうですね、今回のツアーは。
「そうですね。エンタテインメント、演出っていっても、芝居をやるみたいなことは全然ないと思うんですけど(笑)。でも、ライブをひとつのショウとして楽しめるものにしたいかな、っていう感じですよね。寸劇とまでは行かないにしても(笑)、なんかちょっと笑えるような楽しい要素だったり、お客さんと一緒になって何かできるコーナーがあってもいいと思うし。“歌”でステージと客席との気持ちの行き来があるっていうのはもちろんなんですけど、そこに落とし込むまでに、例えばすごくアップテンポな曲を持ってくるとかっていう構成は、よくあるじゃないですか。そういうやりかただけじゃない、何か面白いコーナーを盛り込んで色々なやり取りをしたあとにその“歌”を伝える曲にいってもいいんじゃないかな、とか……。やってみたいことは色々ありますね、うん!」
――デビューして今年でまる9年が経ちましたけど、その間で表現の幅は広がってますよね。それは自然に広がってきたものなのか、逆に自ら広げていきたいっていう気持ちがあったからなのか、どっちだと思いますか?
「それは、やっぱり……。広げたいっていう僕自身の気持ちのほうが、大きいかもしれないですね。今までやってきたことを土台にしつつ枝葉を伸ばしていく、っていうか。ベーシックな部分はたぶんできてるんじゃないかと思うので、それに何かをプラスした方向性っていうところで、新たに聴いてもらえる人たちもつかめたらいいなと思ってます」
