Text●早川加奈子 Photo●相澤心也
なんと、7月18日(土)、10年ぶりとなる日比谷野音でのライブが決定したGRAPEVINEがニュー・シングル『疾走』をリリース。初回限定盤は、今年3月に開催されたクラブ・サーキット最終日『GRAPEVINE with 長田進』@SHIBUYA-AX公演での模様を42分(!)収録したDVD付き! 7月中旬に発表予定のニュー・アルバムの完成も待たれる中、ボーカル、田中和将にインタビュー。
――去る3月にテキサス州オースティンで開催されたミュージック・ショーケース『SXSW 09』に出演されたそうですね。今回の初海外ライブ、どうでした?
「面白かったですよ。案外盛り上がりますよ、その場では(一同爆笑)。ブルックリンでもライブをやったんですけど、現地のバンドと対バンだったので、それも面白かったですね。SXSWでは終演後、観客の白人女性にすごい声をかけられたりもしましたね(笑)。ライブ以外の日も、他の人のライブを観るためにひとりでオースティンの街をうろうろ歩いてたんですけど、“GRAPEVINE? マイスペース見てるよ”って結構声かけられたりとかもして」
――それはすごい! 3月のクラブ・サーキット・ツアー最終日のSHIBUYA-AX公演でも、もはや歌詞さえ超えた迫力を演奏や歌からも感じたので、きっと海外の人にもGRAPEVINEというバンドの魅力が伝わってるってことなんでしょうね。
「音楽は国境を越えてますよ(笑)。そういうとこでは、やってて気持ち良かったですね。僕らのライブに限らず、日本のライブはかなりお約束事があるような気がするんです。それがあんまり感じられなかったから、すごく面白かった。ただ、ガーッと盛り上がる時は盛り上がるんですけど、日本でシーンとしてる場面でポカンとするのは世界共通(笑)。まぁでも、すごい楽しかったですね。すでにアメリカでの影響、出てますからね。次のアルバム(7月中旬発表予定の10thアルバム)にも反映されるんじゃないですかね。音楽的な意味ではないかもしれないですけど。今回の体験が、バンドの空気感として」
――その辺は、すでにニュー・シングル『疾走』にも反映され始めてる気がしますが。
「リード曲『疾走』に関してはかなりシングルを意識して書いてますけどね(笑)」
――確かに『疾走』は、最近のライブ・モードが反映されたまさに疾走感に満ちた1曲ですが、実はビートが作り込まれてたりといった遊び心もある。そういう部分も含め、今のGRAPEVINEらしい1曲だな、と。
「レコーディングはほぼ一発録りでしたけどね。ただ、そういうビート感とかリズムの絡み具合とか、土台の部分に関しては、プリプロの段階でかなり作り込んでたかもしれないですね」
――リリックも、中盤辺りから今の日本の音楽シーンへのちょっとした意見提示、みたいな雰囲気が嗅ぎ取れたりもするというか。
「そうッスね。いつも言ってるんですけど、ちょっと石投げるぐらいの感じはつねに持っておきたいですね。シーンを動かす気も全然ないし、キライだとか馴染めないだとか文句言う以前に、僕自身、JポップどころかJロック・シーンもよくわかってないですからね(笑)。でもそんなにむちゃくちゃサブカルなことやってるわけじゃないんですけどね。アメリカのWILCOとか、ああいうバンドになりたいですね、僕らも」
――アウトプットは違えど、音楽的にヴィンテージな部分とブランニューなところが交差するという点でいえば、近しい感じはありますよね。
「まぁ、好きですからね。歌詞に関しては、個人的にやってみたい感じのことはたくさんあるので、試行錯誤しながらやってる感じですね。今回もカップリングの『hiatus』とか、アルバムの曲でも好き勝手にやらせてもらってますね」
――その『hiatus』は詞はもちろん、歌も新鮮ですよね。言葉数が少ないにも関わらず、9thアルバム『Sing』で飛躍的に進化したシンガーとしての可能性がまた広がったというか。歌わずして歌う、みたいな。
「カッコよくいえば、ですけど(笑)。意図的に歌を減らそうとしてる感じはありますね。『Sing』の反動ではなく、あの作品で僕の歌い手としての意識はかなり変わってきましたけど、世の中的にはそんなに歌ってるアルバムってわけでもないと思うので」
――まぁ、そうなんですけどね(笑)。で、そんな『疾走』も披露されるであろう、日比谷野音でのライブが決定しましたね。日比谷野音で観たいという声も高かった中、GRAPEVINEが野音でライブをやるのは1999年の『夏っぽさ無視』以来、10年ぶりなんだとか。
「野音はなかなか機会がなくて。10年前にやった野音はあんまりよくなかったような記憶があるので、リベンジしたいですね。ただなにが悪かったか具体的に覚えてないので(笑)、初めて野音でやる気構えで挑みたいと思います」
――7月18日(土)の野音公演はどんな内容になりそうですか?
「今は何も考えてないんですけど、アルバムリリース時期のワンマンになる予定なので、(アルバムからの新曲を)何曲かはやらないといけないですね」
――3月に開催されたクラブ・サーキット最終日『GRAPEVINE with 長田進』@SHIBUYA-AX公演での濃密なジャム・セッション(『疾走』初回限定盤はこの夜のセッションが42分収録されたDVD付き!)も素晴らしかったので、自ずと野音公演にも期待が高まりますよね。10年ぶりの野音ということで、10年分のGRAPEVINEをふり返る、みたいなセットリストになったりするようなことは……。
「(デビュー)10周年記念ライブをC.C. Lemonホールでやった時も、10周年的なセットリストを期待して来てくれたお客さんも多かったみたいですけど、それは困る(一同爆笑)。バンドの再結成とかなら、昔の曲ばっかりやるのもいいでしょうけど、そういうのではないですからね。そもそも、昔の曲と今の曲ってやっぱり、ずいぶん勝手が違うんですよ。なかなか今のモードにひっぱってくるのが難しくて。前に進み続けてると自負してるから、今やってることを見せたいな、と思います」
GRAPEVINE with 長田進@SHIBUYA-AXライブレポート
