@ぴあTOP > インタビュー > 城彰二

Interview

城彰二(サッカー解説者) 「ひとりの選手に絞って観るとサッカーの流れが見えてくる」

城彰二

 

Text●ぴあ編集部 Photo●スエイシナオヨシ

小倉氏とともにキリンカップサッカー2009のスポークスマンに任命された城彰二氏を直撃。28年ぶりの参戦となったアトランタオリンピック('96年)、そして日本が初めての出場を果たしたワールドカップフランス大会('98年)でエースの重責を担った城氏にキリンカップの思い出や岡田ジャパンに期待すること、そしてサッカービギナーへおススめの観戦法を聞いてきました。では、どうぞ!

「『絶対にチャンピオンになるんだ!』と強い気持ちを持って戦った」

――まず、プロ入りする前に観たキリンカップの思い出を教えてください。

「1992年大会に来日したアルゼンチンですね。バティストゥータには『世界にはこんなにスゴイFWがいるんだ』と驚かされました。昔は今みたいに海外の試合がなかなかテレビで見られなかったし、インターネットもなかったですから。バティストゥータの名前を知っていたくらいで、実際のプレーや動き方を見て、超一流と言われる選手のスゴさを知りました。それこそ、キリンカップをワールドカップと同じ価値観で観ていましたね」

城彰二

――その後、プロ入りし、キリンカップを観る立場から出る立場に変わりました。

「『ホームで行う国際大会なのだから、強豪国が来ても自分たちのサッカーをやった上で勝利にこだわろう』と言われたのを鮮明に覚えています。100%自分たちのサッカーでぶつかって、『絶対にチャンピオンになるんだ!』と強い気持ちを持って戦いました。それと通用する部分と通用しない部分を肌で感じるというテーマもありました。キリンカップは毎年、日本のレベルがどれくらいなのかモノサシになる大会でした」

――今年はベルギー、チリが来日します。キリンカップも歴史を重ね、世界との差を測るモノサシの場から結果が求められる大会になりました。

「そうですね。僕たちを含め、他の先輩方が積み上げてきた歴史によって、サポーターの要求が高くなりましたから。それこそ、今では『勝って当たり前』という雰囲気になっています。そういう面では、今戦っている選手たちは大変だと思いますけど、それだけ日本のレベルが非常に上がってきた証明ですから。だから僕もベルギーとチリにキッチリ勝てるんじゃないかと思っていますし、どれぐらいの内容で勝てるのかという点を楽しみにしています」

――勝つためにはゴールが必要です。W杯最終予選のオーストラリア戦、バーレーン戦でも決定力不足を囁かれましたが、元FWの城さんはこの決定力不足をどう捉えていますか?

「まず、決定力不足は日本だけではなく、世界中の国々のテーマだと言うことです。現代のサッカーは非常にコンパクトになっていて、その密集した中でいかに点を取るのか、ゴールを決めることが難しくなっています。W杯予選を観ても、日本はうまくワイドにピッチを使いながら攻めています。ひとつ問題なのは絶対的なストライカーがいないことです。(田中)達也(浦和レッズ)選手、玉田(圭司・名古屋グランパス)選手、大久保(嘉人・VfLヴォルフスブルク)選手と戦力は揃っているので、彼らの中から『俺がゴールを取るから、俺にボールを集めろ!』と言う選手が出てくれば決定力が上がってくると思います。今は『この選手に取らせよう』という共通意識が足りない部分だと思います。僕たちの時は『最後はカズ(三浦知良・横浜FC)さんにボールを持っていこう』という意識がありました」

――決定力不足は受け手だけではなく、出し手の問題でもあるんですね。

「それだけ選手みんながうまくなっている証拠とも言えます。日本はどこからでも崩すことができますけど、では最後は『誰が決めるの?』となってしまう。サッカーは絶対的なひとりが存在しないと、フラットなまま終わってしまうことがあります。色んな崩しを見せているけど、(ゴールを)取り切ることができていません。その最後の部分で岡田監督を含めて、選手たちがどんな選択をするのか楽しみですよね」

――現役時代、岡田監督からはどのような役割を求められましたか?

「'98年W杯の時は、ポストプレイヤーが必要だと言われました。まず真ん中に人を集めて、そこでサイドが空いたらサイドを生かして、また真ん中にボールを戻すというトレーニングをよくしたのを覚えています。相手にバランスよく守られるとなかなか崩せないので、それを打破するために岡田さんは『サイドから真ん中、真ん中からサイド』と考えていました。最後のフィニッシュの部分は選手個々に任せてくれましたね。自分たちのアイデアを大切にしてくれたし、『後はお前たちがやらないといけない』と僕たちを信頼し尊重してくれました」

――やはりゴールという結果は、個々の能力に委ねられるのですね。

「そうですね。パスのタイミングやチームの戦術も影響しますけど、最後はFWがボールを受けてどう自分でシュートまで持っていくかが勝負です。ゴールという結果を残せば、マークがきつくなります。それでも点を取る個の能力が必要になってきますね」

城彰二

――小倉さんは決定機で外した時のサポーターの『あーあ』というため息が『一番グサっとくる』と言っていましたが、城さんはその気持ちがわかりますか(笑)?

「僕はあんまり感じませんでした(笑)。試合に負けた時は、サポーターを落胆させてしまったという悔しさと申し訳なさがありました。それよりも声援は力になりました。名前を呼んで応援してもらうと、心の部分が奮い立たされますからね。日の丸を背負うプレッシャーもありますけど、声援で力が変わるんですよ。会場の雰囲気はとても大事ですね。サッカーというスポーツはお客さんが雰囲気を作ってくれるものなんです。お客さんの応援によって、試合が左右されてしまうほど大きいものだと思っています」

――サッカーの見方は現役時代と今では変わりましたか?

「変わりましたね。現役の時はFWからMF、攻撃に絡む選手たちの動きを重点的に観ていたし、ゴールの形を研究していました。でも引退してからは守備から観ています。今までと全く逆ですね。どう守ってどう攻撃につなげていくかを観ています」

――それでは最後に、サッカー観戦でおススめする観戦方法を教えてください。

「みなさん、気になる選手はいると思うんです。気になる選手を目で追って観戦すると面白いと思います。たとえば中村(俊輔・セルティック)選手はパスを出す前にどう動くのか、それによってどうパスを出すのか、中村選手のパスは誰に繋がったのかと観ていると、自然と先に繋がっていきます。ひとりの選手に絞ってサッカーを観るとスゴイ楽しいと思いますし、サッカーの流れが見えてきます。中村選手の華麗なパスは観ていて楽しいし、中澤(佑二・横浜F・マリノス)選手のボディコンタクトは迫力がありますし、スタジアムで観るとスピードや激しさが全然違います」

「キリンカップサッカー2009 特集」へ

インタビュー一覧へ戻る

おすすめトピックス

オススメキーワード【PR】

PROFILE

城彰二

じょう・しょうじ

'75年、北海道生まれ。鹿児島実業工高を経て'94年、ジェフ市原入り。開幕4試合連続ゴールを決めるなど、1年目からFWのポジションを確保する。'97年に横浜F・マリノスへ移籍し、'00年にはスペインのバリャドリードに加入。同年、横浜FMに復帰し、'02年はヴィッセル神戸、翌年には横浜FCとクラブを渡り歩く。また活躍の場はクラブだけに留まらず、'96年アトランタ五輪、'98年W杯でエースの重責を担った。'06年に現役を退くまでJ1リーグ230試合95得点、国際Aマッチ35試合7得点。現在はJFAアンバサダー、そしてサッカー解説者としても活躍しており、キリンカップではスポークスマンに任命されている。

INFORMATION

  • チケット情報

    「キリンカップサッカー2009 ALL FOR 2010!」
    5月27日(水)<第1戦>日本 vs チリ 長居(大阪)
    5月29日(金)<第2戦>チリ vs ベルギー フクアリ(千葉)
    5月31日(日)<第3戦>日本 vs ベルギー 国立(東京)

    チケット情報

@ぴあに掲載されているすべてのコンテンツ(記事、画像、音声データ等)はぴあ株式会社の承諾なしに無断転載することはできません。

ページTOPへ