天性のフロントマン気質をもつvo・渡辺大知擁する新世代ガレージ・パンク・バンド。
10代にしてこのセンス、ただ者じゃない!
Text●高橋美穂 Photo●源賀津己
21世紀に現れた、パンクがアンダーグラウンドだった時代の感覚を蘇らせるロック・バンド。それが、4月8日に1stミニ・アルバム『黒猫チェルシー』でデビューした神戸出身の18歳4人組、黒猫チェルシーだ。もんどりうつように訴えかけてくるボーカル渡辺を筆頭に、迫力のパフォーマンスを展開するライブも必見! 生温い時代に毒を吐き、黒く塗る、奇跡の十代の成り立ちに迫った。
――まず、そもそも4人はどうやって出会ったんですか?
澤「僕とドラム(岡本)とボーカル(渡辺)が同じ高校で、ベース(宮田)とドラムと僕の3人は高校入る前にバンドやってたんです。で、高校に入学した頃は、ドラムと僕は他にベースがいる3ピースのバンドをやってまして。で、ボーカルの渡辺の初ライブを見に行ったんですけど、何て堂々とした奴なんだ!って思って、その瞬間から惹かれて。(渡辺とは)そんなに話したこともなかったんですけど、『絶対渡辺とバンド組むわ』って、ライブを一緒に見てた友達に言ったくらいで。で、ちょうど、やってた3ピースのバンドが行き詰ってきて、新しく始めるバンドは、遊びでパンクをやろうってところからスタートしたんです。元々バンドは小学校高学年からやってたんですけど」
――小学生から!?
澤「はい(笑)。僕とベースとドラムの3人で。僕は父親がギターをやってたんで、アンプ内蔵のギターを持ってたんですね。けど、ドラムとかベースは実際どういう楽器なのかもはっきりわかってないくらいで(笑)。最初は楽器もないから山に行って、ギター鳴らして木の棒で切り株を叩いてましたね」
宮田「あとは、鍵盤ハーモニカとか電気の要らない楽器」
澤「そうそう。そこからちゃんとコピーするようになったんですけど。最初はビートルズとかやってて、そこから時代を辿っていったんですよ。次はツェッペリン、ディープ・パープルやKISS、そしてエアロスミス、ボン・ジョヴィってなっていって」
――今の時代の楽曲じゃなく、ロックの歴史を辿りながら、コピーしていった感じですね。
澤「そうですね。流行ってる曲も聴いてはいたんですけど、ギターの歪ませ方とかも知らんし。だからエアロスミス辺りになった時に困っちゃったんですよね(苦笑)。KISSまでは、音おっきいのかな? くらいでどうにかなったんだけど(笑)」
――日本のパンク・バンドはどんなキッカケで聴きはじめたんですか?
澤「中三くらいから日本の音楽を聴くようになって、神戸で家出少年ってバンドを見て、その時パンクを知って」
岡本「ピストルズとかを聴き出した時期っていうのもあるんじゃない?」
澤「そうだそうだ! パンクって何だろうっていうので取り敢えずラモーンズの1stを買って、ピストルズを買って、それからいろいろ日本のパンクを聴いてみようってなって。最初は30秒の曲を遊びで作ったりしてて、楽しいなぁって笑ってた感じだったんです。このアルバムにもその頃作った『地下室のテレビジョン中継』が入ってるんですけど」
――渡辺さんの独特なステージングも、何かのバンドに影響を受けたものなんでしょうか。
渡辺「黒猫を組んだ時は、いろんなものを聴いたことがなくて。それよりも、ステージに立ったらテンション上がるから。初ライブでめちゃめちゃにやったろって思って、やったらハマっちゃったんですよね」
――でも、もう全国デビューって、ペースが早いですよね。
澤「そうですね。まだ結成して2年なんで。まぁ、1年くらいたって、このバンドでデビューしたいって思いは強くなってたんですけど」
――日本テレビの深夜番組『音燃え』に出たのは、結成していつくらいだったんですか?
澤「9ヵ月くらいの時に、いつも出てるライブハウスの人に、こういうのがあるけど出てみたら?って言われて、俺らも、俺らがテレビに出たらおもろいやん!って」
渡辺「対戦形式だったんですけど、神戸から東京行くのも自腹だと聞いて1回目でわざと負けようとか言ってたんですよ(笑)」
――(笑)課題曲をカバーする番組でしたけど、自分たちにフィードバッグされたところはありますか?
澤「いや、僕ら課題曲を潰してたんで(笑)。普通に演奏すると、テレビ局の人も黒猫らしくないって言ってきて(笑)。異端児とか呼ばれてましたけど(笑)」
渡辺「僕らは、変態呼ばわりされたくなかった(笑)」
――(笑)渡辺さんは8月公開の映画『色即ぜねれいしょん』の主演にも抜擢されましたよね。
渡辺「最初はドッキリだと思ったんですよ(笑)。でも、一次オーディションに監督の田口トモロヲさんがいて、あれ本物や!?って思って、信じるようになったんです。ただ、受かろうなんて思ってませんでした。それがなぜか受かって、最初は演技しなきゃって練習してたんですけど、監督さんに素の状態で主人公に近いから選んだって言われたんで、何も考えないようにして。でも、撮影の途中で精神的にしんどくて動けなくなったりしましたね」
――いきなり主役ですもんね。ちなみに、今春みなさんめでたく高校を卒業されましたが、渡辺さんはトレードマークの学生服は着続けるんでしょうか?
渡辺「これは元々中学の制服だったんで、大人になったからってスーツになったりはしないですね(笑)」
――最後に、これからのバンド活動に、どんな展望を抱いてますか。
澤「ボーカルとベースは大学に行きながらバンドを続けていく感じになるんですけど。そん時そん時で、一番楽しめる音楽をやっていきたいですね」
- ●CD
- 家出少年『どじょうのぼりうなぎすくい』
- 神戸が誇るパンクバンド!
「神戸が誇る天然純粋パンクバンド家出少年。黒猫メンバー全員が大好きだといえる唯一のバンド。vo家出ジョニーさんの刺激的な歌やヘンテコギターがたまらなくツボにはまります」