VOL.3
「欧州蹴球事情」

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後編
中西:それでは続いてのテーマは「今シーズンの展望」。今シーズンはどうなりますか。
馳:とりあえず僕に言わせてもらうと、チャンピオンズリーグの決勝は、もう少し眠くない試合にしてほしいですね。
中西:そうですね、確かに。でもやっぱり一発勝負っていうのがあれなんですかね。
馳:すばらしいですよ、イタリア人。2003年5 月の決勝戦、別に両チーム(ACミランとユベントス)の監督が話し合ったわけじゃないのに、後半になったらもう引き分けでいいみたいに見事にバシッとなったでしょ。
中西:確かにあまり競れませんでしたね。
馳:でしょ。だったら最初からPK戦でやっとけよ、コラって。
金子:そうしたら、PK戦も全部ちゃんと放映できたしね。
中西:チャンピオンズリーグの話が今出たんですが、今シーズン出場するチームは、スペインではレアル・マドリー、レアル・ソシエダ、デポルディボ・ラ・コルニーャ、セルタ。どうですか。今年は決勝までスペイン勢は上がってこられそうですか。
金子:ベスト4 に1 チームしか残らなかった昨シーズンというのは、ちょっとスペインの実力からすると悪すぎる。
中西:悪すぎますよね。
金子:ただ、スペイン人が天狗になっていたというのは事実だと思います。イタリアを抜いたと。今回これでネジが巻かれたでしょう。相当くるんじゃないかと思います。
中西:バレンシアもいいチームだったんですけど、上がってこれませんでしたしね。あの完成度を見るともったいないなって気がしたんですけど。
馳:バレンシアはフォワードがね。それこそバレンシアにビエリ(クリスチャン、インテル・ミラン、イタリア代表)がいればさ、優勝できるんだよって感じだけど。
中西:ジョン・カリュー(バレンシア)は。
金子:カリューはアーセナル戦しか出てこなかったからね。うまくなったけどね。
中西:あとはレアル・ソシエダは上がってきてほしいですね。
金子:厳しいでしょ。だって、選手層が薄いもん。
中西:リーガ・エスパニョーラとチャンピオンズリーグ、どちらが優先といったら。
金子:それはもう絶対にリーガだから。あのチームの肝というのは両サイド。左のデ・ペドロ(フランシスコ)と右のカルピン(ワレリー、ロシア代表)の2 人だと思うんだけど、これがどちらもわりと体力なさ気でしょ。
中西:あまりアップダウンを繰り返すタイプじゃないですよね。
倉敷:李天秀(イ・チョンス、レアル・ソシエダに移籍、韓国代表)をどこで使うか。
中西:それは楽しみですよね。
馳:デ・ペドロが出ちゃうかもしれないんでしょ。
倉敷:プレミアという話があるんですけどね。
金子:いなくなったら、攻撃パターンも半分消えちゃう感じですもんね。
倉敷:左サイド、右サイドのポジションの控え選手は、どっちが出てもちょっと。
金子:ちょっと弱いですよね。実際、デ・ペドロがいないときはキツかったですよね。ところがそのデ・ペドロとカルピンの2 人が、チャンピオンズリーグとリーガの両方を戦える体力がないと思うんで。
中西:ターンオーバー制にするか、どちらかに集中するか。
馳:そうなると、やっぱりリーガに集中していくしかないから、まあ、どっかで消えていくんだろうなって気がしますけど。
中西:厳しいかな。
倉敷:ただ本人たちは、レアル・マドリーやバルセロナ、チャンピオンズリーグの常連のチームと対等以上に昨シーズンは戦えたと。だから、チャンピオンズで戦えない理由は何もないじゃないかと。それはもっともな話ですけどね。世界とチャンピオンズリーグのレベルと、自分たちのリーグのレベルを比較する材料がいくつもあるわけです。
馳:日程的に余裕があるなら、いい試合ができますよ、ラ・レアルは。
倉敷:確かに去年はそうでしたね。
馳:やっぱりレアル・マドリーだって一時期落ちてきたのは、チャンピオンズリーグとか日程が立て込んできたというのがあるでしょ。
中西:あのチームでも落ちてくる。
金子:2003年2 月ぐらいの、こいつらどうなっちゃうんだよという勢いは、もうマドリーもシーズン最後の方はなくなっていましたからね。
倉敷:あのときは無敵だったんですよね、本当に。
中西:2003年5 月のチャンピオンズリーグ準々決勝でマンU (マンチェスター・ユナイテッド、イングランド)に勝ったときは、宇宙のチームでしたよ。
金子:何ですかっていう感じだったでしょ。
馳:週に2 試合ずつやっていくと、1 カ月ぐらいしかもたないってことだよね、チーム全員が絶好調という状態は。あれだけタイトなスケジュールで試合をこなしていると、もって1 カ月、1 カ月半。あとは落ちていくだけ。
中西:みんなのコンディションのピークがピタリと合うチームは本当にないですよね。
倉敷:だから、レアル・マドリーとベティス(スペイン)は半分しか試合をやらなかったらおもしろかったですね(2002年9 月、前半終了間際に照明がダウンし後半戦を延期)。
金子:とんでもなかったですね、あれは。
馳:すごい試合でしたよ。サッカーを45分にすれば、こんなにおもしろいのかよって。
中西:それではチャンピオンズリーグではなくリーガの方はどうですか。やっぱり白いチームも破ってほしいという。
馳:ウチはね、最大の懸案だったキーパー(ルストゥ・レチュベル、トルコ代表)を何とか取ったので。もう昨シーズンはJ スカイスポーツの中継を見ながら、何度「ボナーノ〜」(ロベルト、アルゼンチン代表)と。元々バルサはさ、キーパーなんて屁とも思っていないチームでしょ。でも何でもないボールをこぼすときは、せめて前に落としてくれと。
中西:最低限のことをやってくれれば、あとは何とかすると。
倉敷:ボナーノはバックパスに世界一弱いキーパーでしたよね。
馳:バックパスされるとドキドキする。
中西:本当に、あそこまで取れないキーパーってなかなかいないですよね。
馳:どこをどうやって探してきたのか。
金子:クラシコのときも、腰が抜けそうになるポカをやってましたね。
中西:めっぽうプレッシャーに弱い。
倉敷:こっちも余計に緊張するんですよね、バックパスをされると。前を向くより、まず後ろを見てないといけない。何かが起こるかもしれないと思うから。
中西:相手も何かが起こるかもしれないと思うから、必ず詰めるんですよね。
倉敷:サビオラが敵だったら絶対に行くかもしれない。
中西:でもバルセロナに来たじゃないですか。
馳:ロナウジーニョ(ブラジル代表)が。
中西:7 月30日にアメリカでやったバルセロナ対ACミラン戦で、いきなり大活躍。
馳:みたいですね。
倉敷:アメリカの試合でのキーパーはヴィクトール・バルデスでしたね。ルストゥじゃなかった。
馳:ケガしたでしょ、肉離れか何か。
倉敷:そのへん心配ですね。でも流行るといいですよね、目の下をブラックにするのが。そのくらい好かれるといいですね、ルストゥも。
馳:もう、何でもいいや、来シーズンのウチはって感じなんですけどね。まあ、どうせ出るのはUEFAカップだし、そんなの本気には取りにいかないと思うので、リーガに専念できるんじゃないかと。
倉敷:取りにいかないんですか、UEFAカップは。
馳:僕は行かない。
金子:でも今シーズンのUEFAカップはけっこう顔ぶれが揃っていますよ。昨シーズンとはちょっと違いますよ。
馳:そうは言ってもUEFAカップだし。あの〜すごく感じの悪い言い方をさせてもらえれば、そりゃあもうちょっと下のチームはUEFAカップが欲しいかもしれないけど、ウチが欲しいのはチャンピオンズリーグ。
倉敷:半年前には「インタートトカップだって出る」と言ってた人とは思えませんね。
中西:今シーズンはどうですか。実際バルセロナはどれくらいまで行きそうですか。ここは一つ宣言してもらって。
馳:どれくらい行くかはわからないんだけど、目標は白いチームより上の順位ですよね。優勝だか、2 位だか、3 位だか、4 位だか、それはわからないけど。
中西:とにかく白いチームより上に行けと。
馳:はい。その次の目標は……だんだん弱気になってきたけど、チャンピオンズリーグ出場権。
中西:こんなに弱気な馳さん、見たくないな。
馳:ここ2 〜3 年のウチは、そんなチームなんだもん。申し訳ない。
中西:何が問題なんですか。
馳:この間の選挙で会長が変わりましたけど、やっぱり支離滅裂な選手補強、支離滅裂な監督選びとかね。昨シーズンで一番象徴的だったのが、あれだけ大々的にリケルメ(フアン・ロマン、アルゼンチン代表) を取っておきながら、その後に監督をルイス・ファン・ハールにしたら、ファン・ハールが「こんな選手いらない」って言って、どうなってるんだよって。本当にボロボロですから、チーム全体が。新しい会長をクライフ様もバックアップすると言っているので、何とか立ち直ってほしいと思いますけど。
倉敷:あの新しい選手、クアレスマ(リカルド、バルセロナに移籍)っていいですよ。ルイス・フィーゴ(レアル・マドリー、ポルドガル代表)2 世と言われている。おもしろいですよ。ホアキン(サンチェス、ベティス)みたいになるかもしれないなって。
中西:じゃあ、リーガの本命はどこですか。一応答えてください。
金子:真面目な話、バレンシアじゃないかなと思います。タレントさんを獲得したじゃないですか、白いチームは。チームがバラバラになる可能性大だと。
中西:あれはどうなんですかね。
馳:だって白いチームのシステム、多分4 ・1 ・4 ・1 ですよ。1 のところにマケレレ(クロード、フランス代表)が残っているから、まだ何とかバランスとれるかなって。
中西:でもマケレレもチャンピオンズリーグとリーガの両方には出られないでしょう。
馳:白いチームは無理です。昨シーズンまでは、2 点取られても3 点4 点取るチームだったけど、たぶん今シーズンは3 点取っても4 点取られるチームになる可能性がある。
倉敷:ミリート(カブリエル、サラゴサに移籍、アルゼンチン代表)を取り損なったのは痛いですよね。
中西:ね。
倉敷:イエロ(フェルナンド、スペイン代表)を出しちゃって、代わりのセンターバックをどうしようかって言っていたら、去年からバルセロナが欲しがっていたミリートを取ると決めた。でもフィジカルチェックでダメになって、サラゴサに行っちゃった。その間にバルセロナはいいセンターバックを取ってきて、さらにもう1 枚取ってこようかという。マドリーはセンターバックを何とかしないと。
馳:昨シーズン、ボロボロだったもんね。イエロが良くなかったというのもあるけど。
金子:バレンシアに関しては、チャンピオンズリーグに出ないのがすごく大きいと思う。
中西:それはありますよね。リーガに集中できる。
金子:バレンシアとバルサ。この2 チームって、本来チャンピオンズリーグでベスト4 に進んでいてもおかしくないチームでしょ。それがチャンピオンズリーグなしでリーガに専念する。相当怖いと思います。
倉敷:バレンシアもUEFAカップはどうでもいいの?
中西:誰に聞けばいいの? でも、一応UEFAカップもありますよね。
金子:UEFAカップとチャンピオンズリーグの一番の違いは、試合をする大変さはもちろん変わらないと思うけど、メディアの取り上げ方が全く違うでしょ。だから選手の側からすると気持ちの上で、チャンピオンズリーグはビッグイベントになっちゃうと思うんだよね。それが終わったときの燃え尽き。それがUEFAカップだとないでしょ。
中西:アーセナルは昨シーズンがそうでしたよね。チャンピオンズリーグが終わったときにガーッと落ちてきましたからね。それを考えるとリーガの本命はバレンシアと、馳さんのバルサ。倉敷さんはどうですか。
倉敷:僕はですね、注目したいのが、熱しやすく冷めやすいと言えば、アンダルシアのベティス(スペイン)なんですけど、昨シーズンのベティスは、ビクトル・フェルナンデス監督がすごくいいサッカーをして、これはどこまで行くんじゃって思ったら。
金子:スゲェ〜失速。
倉敷:スゲェ〜失速して。あの熱を今シーズンはもう2 週間延長したい。
中西:2週間でいいんですか。
倉敷:はい。今年はアンダルシアダービー(ベティス対セビリア戦)を観に行きたいな、中継ができたらいいな、と思っているところです。
中西:今、リーガの話をしましたけど。
倉敷:もう白いチームの話はいいですか。
中西:白いチームはどうですかね。ベッカムはどうなんですか。
倉敷:Bカム。
金子:じゃあまず、中西さんにお聞きしたいんですけど、ケイロス(カルロス、元マンチェスター・ユナイテッドコーチ、現レアル・マドリード監督)って大丈夫? 
中西:僕は名古屋グランパスでケイロスさんとやってました。1 カ月しかいっしょにやってないんですよ、実は。でもそこでけっこう話をして、僕が解雇されるされないでもめてたときなんで、ケイロスさんとずっと話をしていました。で、本当にすばらしい人です。以上。
金子:レアル・マドリーとバルサって特別なチームでしょ。だから1995年かな、当時のベティスのセラ・フェレール監督が、2 部から上がったばかりのベティスを3 位にもっていって、最優秀監督に選ばれた。人柄もよくてすばらしかったし、ベティスのやるサッカーが僕は大好きだったのね。ところがセラが1997年にバルサの監督になってどうだったかというと、あのときのセラではいられなかった。レアル・マドリーとバルセロナというのは、それだけメディアの圧力もすごいし。選手もわがままな人が多いし。これをまとめるのって相当難しいと思うのね。
中西:僕が今ケイロスさんを人間的にもすばらしいと言ったのは、そういう意味も含んでいて、下位や中位のチームで結果が出ていないチームを、戦術的な部分やいろいろな部分でコントロールしながら上位に引き上げるという、いわゆる監督の手腕が問われるところのチームではない、レアル・マドリーは。マンU もバルサもそうですけど、ビッグチームは。特にレアル・マドリーにはすばらしい選手が集まっているので、そのなかで人間関係のバランスを取るということに関してケイロスさんは本当に長けていると思います。
金子:ただね、誰もがベッカムのお引きと思って見ているわけでしょ。
中西:そうです。それが問題で。
金子:キツイよ、これ。
中西:何が解決策かと言うと、結果を出すことなんですよ。結果を出して、うまく回り始めれば、ケイロスはすごくうまくやれると思う。本当に選手間のコミュニケーションを取る術というのは、マンU で学んでますからね。マンU とは集まっている選手のレベルが違いますけど。ただ、僕が知ってる限りの彼の人間性だったら、バランスは取れると思う。結果がついてこなくて、プレッシャーがかかったときが怖い。
馳:結果がついてこなくても、会長の意向でB 様だけは試合に出さないといけないんだからさ。
中西:そうですね。そこが一番の問題でしょうね。
金子:やっぱり見てたっていうのと、実際にやったというのは違うと思うのよ。クライフはすばらしい監督だった。じゃあ、クライフと一心同体だったレシャック(カルロス、元バルセロナ監督) はどうだったかというと、全く違う話で。
中西:そうですね。これは蓋を開けてみないとわからないですよね。
倉敷:納得しないように。
中西:僕はお世話になったので、あまり悪くは言いたくないなっていうのはあります。ケイロスさんの技量がどうなのかというのは、僕にはわからないです。マンU に関しても、ファーガソン監督の裏に立っていて、批判の矢面に立たされていないというのもあるじゃないですか。責任を取っていないというのもあるんで。
倉敷:ただ、イングランドの中ではケイロスの評価は高かった。
中西:そうですね。
倉敷:チームの中をまとめていた。僕は、それが長い期間にわたってやれるかという問題だと思います。Bカム様が入ってもレアル・マドリーのサッカーは変わらないと思うんですよ。レアル・マドリーのサッカーというのは100年の歴史に培われてきたサッカーですから、誰が監督になっても、レアル・マドリーのサッカーとして実存するわけですよ。
中西:そうですね。
倉敷:そこの部分は多分、ケイロスの問題ではそうはないと思う。Bカム様の使い方に関しても、いろいろな形でフォローができるから。極端なことを言えば、Bカム様がすごくいいかもしれないし、たとえチームに馴染めなかったとしても、それをフォローできる選手が周りにいっぱいいるわけです。その部分でレアル・マドリーが戦力的に上がったか、下がったかは、開幕してみないとわからない。問題なのは、ビセンテ・デルボスケ(前レアル・マドリー監督)は下部組織からずっと見てきて、カンテラ(下部組織)に対して絶対的な信頼感を持っていたし、信頼されていた人たちをケイロスがそのまま引き継いでやっていけるのかどうか。それから上下関係とか横の問題とか、非常に難しい問題を、デルボスケはあれだけ人のことを悪く言わないと言われるほど、マスコミとの間に立ってやってのけた。そういう人物の代わりをケイロスが長い期間やっていけるのかということを、レアル・マドリーのファンの人たちは心配するべきだと。Bカム様が入ったからといって、マドリーが強くなったり弱くなったりするのは、大した問題じゃないと僕は思っています。むしろケイロス監督がどれくらい大きい人間なのか。
中西:そうですね。そこだと思います。
金子:やったことがないからできないというのはあり得ないわけで、デルボスケだって、誰がこんなに結果を残すと想像したか。誰ひとりしてなかったわけだから。
中西:未知数ですよね。
金子:ただ何にせよ、昨シーズンの一時見せてくれたようなマドリーの夢のサッカーを、また見せてもらいたい。
倉敷:まあ今シーズンのリーガは、噂好きのスペインのファンにとっては色々と楽しいでしょうね。バルサが復活するかもしれない、マドリーが落ちてくるかもしれない。他のチームで、また新しいところが出てくるかもしれない。バスクの人たちは、悲喜こもごもだろうと思いますし、もしからしたらセグンダ(2 部リーグ)から帰ってくるアラベスがあるかもしれないし。ただ戦力を考えると当分ないですね。
中西:そんな話を振っておきながら、ないなんて。話は尽きないんですが、そろそろ質問コーナーに移りたいと思います。すでに1時間半を経過しております。
馳:結局これじゃあ、「スペインサッカー事情」だよ。
中西:それでも楽しいじゃないですか。それでは質問コーナーにいきたいと思います。
客:4人の方々はヨーロッパのいろいろなスタジアムに行ったことがあると思うんですけれども、私もいつかスタジアムを回っていっぱい試合を観たいと思っているんですが、皆さんが一番お勧めするヨーロッパのスタジアムはどこですか。それぞれお答えいただければうれしいです。
中西:それでは、倉敷さんから。
倉敷:僕はアトレチコ・マドリーのホームスタジアム、ビセンテ・カルデロン。歌のあるスタジアムで、子どもから大人から、男性から女性から、品のいい人から悪い人までアトレチコの歌を覚えていて、何十年に渡るアトレチコのヒットソングをその場に応じて歌ってくれる。それをちょっとでも覚えて帰るのが楽しいと思います。
馳:俺? どこかなあ。難しいよね。さっき言ったユトレヒトもいいんだけど、好きなのって言うと、いろんな意味であんまり行きたくはないんだけど、いいなと思ったのはハイバリー。アーセナルのホームスタジアムですね。アットホームな雰囲気で、やっぱりこの国でサッカーって生まれたんだよなっていう感じが伝わってきて、すごく古いけどね。あそこはけっこういいスタジアムだと思います。
金子:僕が一番好きだったのが、エスパニョール(スペイン)が前に持っていたスタジアム。スタジアムというのは、スタジアムそのものも好きなんですけど、そこでどんな試合が行われたかというのもすごく大事なんですね。ここでロッシ(パオロ、元イタリア代表)とジーコ(元ブラジル代表、日本代表監督)がやったんだ。ここでマラドーナ(元アルゼンチン代表)が蹴りを入れたんだというような記憶を思って。で、入り口を入るとバーンと「グラシアス、ミラン。4対0」とか書いてあるわけですね。バルサがACミランにタコ殴りをくらったときの。ボロボロでしたけど、急角度で好きでした。今は、セント・ジェームス・パーク(イングランド、ニューカッスル・ユナイテッドのホームスタジアム)が一番好きですかね。あそこは好きですよ。ロンドンと違って、人も温かいですし。記者席にクラムチャウダーとか出してくれる。それがすごいうれしくて。
馳:ハイバリーだって、ミートパイとか出してくれたよ。
中西:それは一般席にいて出してくれたわけじゃないでしょ。
馳:いや、普通に売ってるから。
倉敷:中西さんも体験がないですか。記者席だけに配られるものとか。たとえば配られるコーヒーのカップが、陶器か紙かによっても印象が違ってしまうじゃないですか。そういうのはちょっとありますよね。
中西:ああ。ありますよね。
倉敷:記者席まで持ってきてくれるスタジアムと、取りに行かなきゃ行けないとこ。
中西:寒いところだと温かいコーヒーや紅茶があったりとか。
倉敷:そういうのは大きいですよね。ホスピタリティー。
中西:いいイメージにつながっていますよね。
金子:あとはブックメーカーがちゃんとスタジアムの中にあるので、賭けられるとか。
中西:僕はブロンビーのスタジアム。
馳:デンマーク? 渋いなぁ〜。
中西:グランパスのときにブロンビーで試合をしたんですよ。こぢんまりとしてるんだけど、すごくスタンドと近くて雰囲気もいいし。ぜひ一度行ってみてください。北欧はいいですよ。1992年に欧州選手権もスウェーデンで開催したじゃないですか。あのときいろいろなところで試合を観て、グランパスも試合をやったんですけど、北欧はいいスタジアムが多かったですよ。
馳:2003年8 月のU-17の大会はフィンランドでしょ。
倉敷:フィンランドは行きたいですね。
中西:食べ物もおいしいし。
金子:スタジアムに関してイングランドは、どこもすばらしですよ。
中西:何がいいって、金網がないです。
金子:金網がないし、スペインでもスタンドの1列目がピッチレベルより高いところが多いんですよ、日本と一緒で。これは僕、著しくライブ感をそぐと思うんですけど。イングランドでは、それこそカメラマンがピッチサイドでカメラを構えていると、後ろの人が見えないくらいスタンドが低いですから。
倉敷:タバコを吸いたいなら、スペインがいいと思います。
金子:間違いないですね。
中西:本当にイングランドのハイバリーは、柵がないっていうのはこんなにすばらしいものなのかと。
金子:そう。イングランドは歌もすばらしいし。
中西:ハイバリーはけっこう身近に行けるロンドンにありますし、いいスタジアムですからね。ぜひ足を運んで。
馳:何年かしたら、なくなっちゃうんでしょ。
中西:もうなくなりますよ。確か2年後でしたかね。今年、来年のうちに。では、次の質問を。
客:今日の話に出てこなかったんですが、国同士の戦いってありますよね。欧州選手権があって、ワールドカップがある。今、チャンピオンズリーグがあれだけ拡大していて、さらに世界クラブ選手権というのも出たり消えたりしてますけど、今後どんな棲み分けになっていくのかという予想をお聞きしたいです。どちらかに軸足を置いていかざるを得ないと思うんですけど。それは国なのか、クラブなのか。このへん、ご意見を承りたいと思います。
中西:当然クラブチームに軸足だと思います。それは給料を払っているという現実的な問題で、クラブが払っているわけですから。ただ、やっぱり国の戦いはあると思いますので、どうしたらいいか。どこに着地点を持っていくかは、テストマッチがたくさん行われてますけども、そのテストマッチの頻度を、年間何試合以上させてはいけないという風にFIFA(国際サッカー連盟)が定めるのが一番いいと思います。同じ条件で戦う。たとえば年間3試合しかナショナルチームでの試合はしないとか。まあ3試合は少ないかもしれませんけど、ある程度試合数を確保して。それで全体の試合数をコントロールするということができてくれば、なんとか着地できるかなと。今やっている中では比較的、選手も大事に、クラブも大事にするようになる。ここはFIFAが代表チームのスケジュールを完璧にコントロールして、ルールを絡めていければ、今よりはいい状況になるかと思います。
金子:僕は、選手の意識がまるで変わってきちゃうんじゃないかと思うんです。今こうやって、物を話し、お酒を飲み、人と付き合うことを覚えている脳ミソ。この世代の脳ミソと、今から生まれてきてこれからサッカーを見るようになる世代とでは、ワールドカップの価値がまるで違ってきていると思うんですよね。僕たちはワールドカップは世界最高・最大の大会だということを刷り込みされていますけど、何も知らない子どもが今生まれて、これからのサッカー界を見ていったら、チャンピオンズリーグの方に憧れると思うんですよ。スター選手がどちらがよりたくさん揃っているか、どちらがよりすばらしいサッカーをやっているか。で、そういう世代が大人になっていったときに、今のやり方をやっていると「ワールドカップに行かない」と言い出す選手が必ず出てくると思う。それこそ今から30年近く前になりますけど、ヨハン・クライフは1978年のワールドカップに女王陛下から出てくれと言われたのに、出なかったわけですよ。「あまりにも拘束時間が長すぎて、家族と離れ離れになってしまう」と。そのときのワールドカップは16カ国でやっていたわけですよね。今は一体どれだけ長く家族と離れなければいけないか。しかも、お金をもらえる大会ではないですよね、ワールドカップって。これから、2000年代生まれの選手の中から、「俺はワールドカップに行かない」という子が出てくるんじゃないかなと思います。国同士の意識も、例えば10年前、20年前であれば、アルゼンチンとブラジルが試合をやると普通に試合が終わる方が珍しい。必ず乱闘になってしまう。日韓戦も、雰囲気は戦争でしたよね。今、これだけ韓国の選手がJリーグでプレーしている。同じクラブでアルゼンチンの選手とブラジルの選手が共存するのが当たり前になってきている。荒れなくなってきているんですよ。危険な雰囲気がなくなってきている。僕はあの危険な雰囲気こそがワールドカップの醍醐味だったと思っていたんですけれども、これも薄れてきている。相当やり方を考えない限り、3002年ワールドカップは、あるかどうか。僕はちょっと、太鼓判は押せないですね。続けるとは思いますけど。
中西:馳さんは?
馳:どうしたってクラブチームに軸足は移っていくと思うけど、コンフェデレーションズカップを見ていればわかると思うんですけど、今、世界の中心はヨーロッパにシフトしちゃっていて、そこでやっていることといえばFIFAとUEFA(欧州サッカー連盟)の金を巡る綱引きだと。みんなもうわかっちゃっているわけですよね。オリンピックと変わらず、みんな金が欲しいだけだと。それで、お前らどうするんだと。コンフェデレーションズカップの表彰式のときも、ジョゼフ・プラッター(FIFA会長) が出てきたらみんなブーイングしてましたね。わかっているんですよ。UEFAだってFIFAだってロクでもないのはわかっているけど、代わりの組織がないから仕方がなくやっているというのが今の現状だと思います。今、金子君が3002年にワールドカップがあるかどうかわからないと言っていたけど、2002年ワールドカップで私たち日本人が、別にイギリス人でもないのに白いユニフォームを着て、スタジアムに行って応援して盛り上がってる。その時点でワールドカップは別な物になっているだろうという感覚が僕の中にはあるんですね。だからワールドカップは存続するとは思うけれども、中身はとてつもない方向に変質していくと思います。世界最大のイベントぐらいにしかなっていかないと思う。日本でやった、アメリカでやった、今度はアフリカでやりたがっている。FIFAが考えているのは要はマーケット拡大以外の何者でもない。で、そういうことに我々日本人はこういう民族なんで乗っかっちゃいますが、ヨーロッパや南米の人間たちが「いい加減にせえよ」という日が必ず来るんじゃないかと思っています。やっぱり日本というのは、どこに行っても同じ社会なので、日本で一番人気があるのは日本代表だったりするんですけど。ヨーロッパで、南米でもそうだと思いますけど、一番人気があるのは代表じゃなくてクラブチームですよ。ワールドカップで優勝するよりも、チャンピオンズリーグ、例えばレアル・ソシエダがあるサン・セバスチャンなんて、「おらが街のチームがチャンピオンズリーグに行くんだ」というだけで1年間幸せな気分に過ごせるわけですよ。それがスペイン代表がワールドカップに行ったって、「俺たちバスク人だもん、スペイン人じゃないもん」という世界なんで。そのへんの国の意識が変わっていくというか、冷戦構造が崩壊してから、ものすごく民族主義が強まっていますよね、世界中で。ますますみんなの意識はクラブの方へ行くと思います。やっぱりワールドカップは違うものになっていくと思います。
中西:倉敷さんは。
倉敷:今、FIFAとUEFAは同じくらいの力を持ちつつある。FIFAにはワールドカップがある、でもUEFAにはチャンピオンズリーグがある。それだけで同じくらいの収益を持つことができるんだと思ってしまった時点で、UEFAとFIFAはある面で、もはや同等になってしまっている部分があると思います。こうなるとあとは、どちらが金儲けをするか。それはもうわかってしまっている。そこの底意地の汚さはわかってしまっている。今、国際的なサッカー組織が向かっているベクトルというのは、多分アジアですよね。日本とか中国であるとか。ベッカムや他の選手たちを使って、マーケット戦略にしたい。将来的にはアフリカをもう少しなんとかしたい。世界中をそういう形でマーケットにしたいという気持ちが大きな組織の中にあると思うんです。ただ一方で、フットボーラーの一生を考えてみると、彼らの近くにいる選手とか、近くにいる映像の選手に憧れて、クラブに入りたくて、クラブに入ったらレギュラーになりたくて、地元のチームから大きいチームに行きたくて、大きいチームで活躍できる選手になりたくて、名声が欲しくて、豊かな生活がしたくて、人から尊敬されたくて。その見返りと言ったら失礼だけど、ボランティアみたいな形で社会貢献もして、人から尊敬されるステイタスを手に入れたプレーヤーたちは、最後に自分が一番好きだったチームに帰ってプレーをして、ファンから愛されて、その後は次のステップや新しい人生を開いていくというのは、多分世界中の少年少女たちが考えるフットボーラーだと思います。その図式は一方では変わらない。大きな世界がたとえマーケットで動いていったとしても、もう一方では絶対に変わらない真理があって。それと金子さんがおっしゃったような、ある種のアイデンティティのようなものに、ベクトルは奔走するかもしれない。自分たちはこういう民族なんだとか。だから大きな大会よりもこっちの方が大事だという形で、自分たちの目指すものがどんどん変わっていくんじゃないか、分極化していくんじゃないか。一つにまとまっていくんじゃなくて、分極化した中でのサッカーになると、僕は思います。将来の子どもたちが何を目指すのかということに対して、大人たちはちゃんとした指針を与えないと。健康で健やかにやれるサッカーの大会を目指さなきゃいけないと思うけど、まだ当分はマーケット戦略が広がっていく。でもカレンダーはもうこれ以上はなくて、どんどん選手たちの夏休みは短くなっているにも関わらず、これでもかこれでもかということをUEFAもFIFAもやっている。こういう状況がしばらく続いた後、最終的には自分たちの好きなサッカーに分極化していって、次の時代が始まるんじゃないかと僕は思います。
中西:皆さん、いろいろと意見があると思いますけど、これは非常に難しい問題で。お金が絡んでいますし、それから選手の命に別状はないとは言えない状況ですから、それを考えると、皆さんは試合を観る立場で、僕たちは伝える立場で、そういうことを少しずつ考えて訴えていくことで、世界のサッカーに少しでも影響を与えられると思うので。これは真面目に考えるべきことだと思います。ありがとうございました。それでは、倉敷さんから順に最後に一言。
倉敷:本日はお忙しい中、遠路お越しいただきまして、関係者一同、ありがとうございます。はっきり言ってですね、ここにいる馳さんも金子さんも、中西さんもそうかもしれないですけど、今日ここで何が行われるかは一切、事前の打ち合わせというものはなくてですね、ちょっとバタバタした部分もお見せしてしまったのかなと思うんですけど、温かい目線に支えられて、楽しく過ごせたんじゃないかと思います。新しいフットボールがもうすでにスイスとオーストリアで始まっていて、ブンデスリーガも始まろうとしているところです。フットボールは楽しいものであって、今季は昨シーズンよりは少し選手たちも休めたんで、何割か増しのパフォーマンスが期待できるんじゃないかと個人的には期待しております。皆さんもぜひまた楽しいフットボールを観て、こうしてまた集まれるように、フットボールの友だちをたくさん作っていただけたらいいなと思います。ありがとうございました。
馳:最初にこのメンツを聞いたときから、スペインの話ばかりになるだろうとは思っていたんですけれども、そこをうまくリードしてくれるのが中西君の役のはずだったんですど。
中西:すみません。ズルズル、ズルズル、引き込まれてしまいました。
馳:まあ個人的にね、観ていて楽しいのがリーガ・エスパニョーラのサッカーなんで、どうしても。今、日本で放映されているヨーロッパのサッカーを全部観ようと思ったら、いくら時間があっても足りない状態なんで、本当にどれかを選ぶしかないという贅沢な状況なんで。僕らがガキの頃はあり得なかった状態です。夢にも考えなかった状況なんで、今はとりあえず幸せな時代に生きているので、好きなサッカーはできるだけ目一杯観ようとやっているうちに、お酒を飲みに行く回数も減ってしまう、体にもいいなという状況で毎日過ごしております。今日はどうもありがとうございました。
金子:僕はようやくお酒が抜けてきた頃に終わってしまったという感じです。
中西:今日はどうでしたか。
金子:2500円ですよね、チケット。
中西:リアルなところにいきますね。
金子:果たしてそれに見合ったお仕事ができたのかなと。それが一番心配ではあります。が、時間が短いっすね。
中西:今度はもっと長くやりたいですね、このメンバーだったら。
金子:今度は皆さんももっといい椅子にゆったり座っていただいて、飲み食いしながら。ねえ、金曜の9時に酒も飲まずに。もっといろんな方の質問にもお答えしたかったんですけど、時間がなくて申し訳ありませんでした。また、Jスカイスポーツさんとぴあさんがきっとやってくださると思いますので。今日はどうもありがとうございました。
中西:あっという間の2時間でしたよね。足りないですね。でも、みんながもういいよって思っているかも。でもやっぱりね、お酒なんかも飲みながらね。今日はスペインリーグのこととか細かいことがありましたし、僕自身も勉強になった回でしたね。馳さんがさっきおっしゃいましたけど、全部の試合を観るのは不可能ですから。J1、J2をはじめ、今日は全日本少年サッカーも観てきましたけども。いろいろなものを観なきゃいけない。観なきゃいけないっていうのは違うと思うんですけどね。まあ仕事では観なきゃいけないと思うんですけど、そういう中で、皆さんが選んでサッカーを観られる時代になっていますから。幸せなことだと思いますよ。本当にサッカーを語る楽しみができたっていうのが今回はうれしいですね。皆さんがライブで観ていらっしゃるサッカーを共有できるわけじゃないですか。サッカーというのは、観る楽しみ、やる楽しみと、語る楽しみがあるんですよね。これがサッカーの一番のよさ。そういう意味じゃ、みんなでこうやって話したことで、いつも言うんですけど、中西違うよなとか、馳さん違うよなとか、金子さん違うよなとか、倉敷さん違うよなとか、やっぱりそうだよなと納得することもあるかもしれない。みんながサッカーを語ることでサッカーがどんどん広がっていくと思いますし、その広がったサッカーがいつか日本のサッカーに返ってくると思う。やっぱり日本のサッカーが発展していくことを願って止まないですから。日本でもヨーロッパの文化が培われて、自分の街の自分のチームを応援して愛していく、それがおじいさんから孫に受け継がれるのが一番。皆さんも観ていらっしゃるときに、おじいさんになったときに、「オラのチームはさ」と言えるチームが日本にも出てくるのが一番の幸せだと思うので。ヨーロッパのすばらしいサッカーを観て、それを少しずつ日本にフィードバックして欲しいですね。皆さんにもそういう中のひとりになってほしいし、歴史の生き証人になってほしいと思います。本当にありがとうございました。それから、お気をつけて帰ってください。こうやってサッカーを語った後に、お酒は付きものですから。皆さん飲みに行かれると思うんですが、その後、お気をつけて帰ってください。今日は本当にありがとうございました。
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取材・文:CREW
撮影:山口裕朗