21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀まであと1年となった今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第1回

浜口京子(アマチュアレスリング)

浜口京子 浜口京子が世界選手権に初めて出場したのは今から5年前のこと。ニューヒロインの誕生を待ち望む日本女子レスリング協会は、経験が浅く、未完成ながら、体格と素質に恵まれた京子を代表に大抜擢。最初は13位という結果に終わったが、翌年は一気に順位を上げて7位。いよいよメダルが見えてきたと思われた矢先、国際レスリング連盟がルールを改正。世界選手権はそれまでの9階級から6階級に統合されて行われることとなった。
 前年まで70kg級に出場していたため、68kg級に落とすか、75kg超級に上げるかの選択を迫られた京子、父でありコーチである元プロレスラー、アニマル浜口。ふたりは、迷うことなく75kg超級を選んだ。体重別に行われる格闘技の世界では、体重を落として絞り切った体で戦うのが常識だが、二人三脚で世界を目指していた父娘は、あえて最も重いクラスに転向する道を突き進んだ。
「世界一強い女になりたい。無敵のレスラーになりたい」。その一心から、大晦日も元旦もなく猛練習をこなす一方、京子の1日6食という増量作戦が始まった。
 '97年世界選手権フランス大会。京子は準決勝で優勝経験5回を誇る前年度チャンピオン・劉東風(中国)からフォールを奪う快進撃で並み居る強豪を次々と倒し、見事金メダルを獲得。だが、勝負の鬼と化した父ばかりか京子自身も、たった一度の世界チャンピオンに浮かれることはなかった。
「連覇してこそ本物のチャンピオンですから」
 休む間もなく、野獣と化した親子の質・量ともに世界一厳しい練習が再開。公約通り、'98年のポーランド大会で連覇を達成。国際レスリング連盟が選ぶ女子年間最優秀選手賞に輝いた。
 そして、今年9月スウェーデンで行われた世界選手権。これまでで最もきつい試練が京子を待っていた。過去4回世界選手権に優勝しながら、あえてワンランク重いクラスに上げて打倒・浜口京子を狙ってきたノードハゲン(カナダ)との準決勝。京子はフォール寸前まで追い込まれた。
「負けちゃうとかではなく、ボーッとですけど、これで終わりかぁと思いました」
 しかし、鍛え抜かれた体が自然と反応した。爆発的な力でこの絶対絶命のピンチを凌ぐと、一転して厳しく攻めたてて大逆転。決勝戦ではフォール勝ちを奪い、世界選手権3連覇を達成。名実ともに゛クイーン・オブ・レスリング゛に君臨した。
「゛勝つとは何か?゛、それをすさまじい気迫で悟り続けろ! 野獣となれ! 稽古するか死ぬかだ」と繰り返し、世界を制するには肉体的な馬力と魂を合体させろと説く父のもとで、休むことなく練習を続ける京子。目標は? の質問に、かつては「2004年のアテネ五輪(女子レスリングが正式種目となる予定)までチャンピオンであり続けること」と答えていたが、最近は次のように語っている。
「マットの上ではライオンのような強さを見せ、マットを下りたらやさしい純粋さを持った格闘家になりたい。悩んでいるこどもたちに少しでも夢や希望を与えられるようになることが目標です」


取材・文:宮崎俊哉

プロフィール

●はまぐちきょうこ 
'78年、東京都生まれ。170cm、75kg。アニマル浜口トレーニングジム所属。国際プロレス、新日本プロレスなどで活躍したプロレスラー・アニマル浜口を父に持つ。'97年から3年連続して、女子レスリング世界選手権75kg超級で優勝を飾った。


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