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かとうだいし●'83年、埼玉県生まれ。165cm、60kg。桐光学園高を経て'02年湘南ベルマーレ入り。スピードあふれるドリブルを武器にスーパーサブとして起用され、'03年にはアテネ五輪を目指すU-22日本代表に招集された経験もある。3年目を迎えた'04年、上田栄治新監督就任後には右サイドハーフからコンバートされ、右サイドバックとして先発起用される。
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第245回
加藤大志(サッカー)
前線は深刻な得点力不足に悩み、バックラインは試合終了間際の失点に泣いた。勝てない現実に直面した’04年、湘南ベルマーレは苦難のシーズンを送る。J1昇格争いからは早々に脱落、下部リーグへの降格もないJ2にあって、ともすれば目標を見失いがちなシーズンだったと言える。そんな、ため息に包まれがちなホームスタジアムを沸かせてきたのが、加藤大志である。
「ボールを受けて、DFと向かい合う。そこから”ヨーイ、ドン”の一発のスピードで前に出る。緩急をつけて相手を抜き切るドリブルが、自分の武器です。途中から出たらもう、前に出て勝負、それだけを考えていました」
“大きな志”と書いて”だいし”と読む。彼を知る誰もが親しみを込めてファーストネームで呼ぶ童顔の21歳は、シーズン序盤、決まって後半途中に投入され、右サイドをドリブルでガンガン駆け上がった。ホーム・平塚競技場のサポーターは、試合の流れを変える”スーパーサブ”の投入をいつも心待ちにしてきた。
状況が変わったのは、アテネオリンピックで ”なでしこジャパン” を率いた上田栄治監督が、古巣であるベルマーレに復帰してからだ。「世界と戦うためには、日本ももっとサイド攻撃を重視していかなければならない」と語る新指揮官のもと、加藤は先発の右サイドバックに固定される。
「ずっと右サイドのMFしかやったことがなかったので、最初はびっくりしましたよ。緊張しましたし、自分のミスで負けたくないという思いが強過ぎて、何でもかんでもカバーリングに行ったりして疲れました」
突然言い渡されたコンバートだったが、後半残り数10分にすべてをぶつけてきた加藤にとっては、戸惑いよりも90分間ピッチに立ち続けられる喜びの方が大きかった。
「攻撃に関しては、『自分ならこうするのに』といつもイメージしていたポジションなので、難しさは感じていません。ただ、イメージの中ではひたすら上がるだけで守備はほとんどしなかったんですけど、実際はそうもいかないんですよね(笑)。センターバックやボランチの選手はヒヤヒヤしてると思います」
果たすべきDFとしての役割は、徐々に分かってきた。しかし、新監督が期待しているのはそんなことではない。持ち味は、攻撃力。そのことは本人もよく理解している。
「ディフェンスは、周りの選手に助けてもらってばかりです。ただ、守備のためにピッチにいるんだったら自分が使われる意味はないですから」
そう語る右サイドバックの加藤が良くも悪くも目立ったのが、11月13日の天皇杯4回戦である。
「序盤は何もできませんでした。最初の失点も僕のミスからでしたし、相手の寄せが早かったぶん弱気になっちゃって。ただ、前半の最後に上げたセンタリングが同点ゴールに繋がってくれた。それからどんどん上がるようになると、相手も出てこられなくなって主導権を握れたと思います」
サイドの攻防が試合の勝敗を左右する典型的な試合だった。J1のアルビレックス新潟をホームに迎えたこの日、ベルマーレは3−2で勝利を収める。自らのミスで先制されてしまったものの、加藤はドリブルで前に出続けることでチームにリズムをもたらし、逆転勝利に貢献した。日頃からサイド攻撃の重要性を説く上田監督の狙いが、見事的中した試合と言えるだろう。
「今の時代、ふたつくらいポジションをこなせなきゃいけないと思うし、サイドバックをやる事でプレイの幅が広がっているのも分かります。例えばハーフの時は止まった状態でボールを受けることが多かったですけど、今はスピードがついた状態でボールを受けるので、どこへトラップするかに凄く気を使っています。1対1でも、後ろから上がってくるぶん相手に読まれやすくなるので、抜き切る前にセンタリングを上げる技術が必要。もちろん、中に切れ込んで左足で打つシュートも、ずっと練習を続けてますよ」
長い長いJ2のシーズンも、あと2試合を残すのみとなった。そして勝ち進んだ天皇杯の5回戦では、初のJ1ステージ優勝を果たした浦和レッズと対戦する。レッズ戦では、三都主アレサンドロとマッチアップする可能性が高い。
「相手が誰であれ、やっぱりドリブルにはこだわりたいというか……。自分はドリブルができなくなったら終わりです。だってパスを出したところで、どうしてもミスが出てくるじゃないですか。ワン・ツーするにしても、ちょっとしたズレで相手ボールになってしまう。でもドリブルだったら、抜ける気がするんです」
先発でも、スーパーサブでも、相手が誰であろうと、ポジションがどこになっても、いつも変わらない。ボールを持ったら、自らの武器を全力で相手にぶつけるだけだ。今日もまた、加藤大志は愚直なまでに、ドリブル突破を仕掛ける。
取材・文:中山一成(ぴあ)
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