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「今、アイバーソンがマイブームなんですよ!」と、バレーボール全日本の高橋みゆきは、目を輝かせて言った。
一度ハマるととことんやらなきゃ気が済まない。寮の部屋の壁一面にポスターを貼り、パソコンの壁紙も、ケータイ電話の待受画面もアイバーソンにするほどだ。
「ちっちゃいのに、ゴールをたくさん決めて、メチャメチャ目立ってるじゃないですか。大きな選手に真っ正面から向かっていく姿勢がたまらなくカッコイイんですよね」
アレン・アイバーソンと言えば、身長183cmながら、2mの大男たちを相手にダンクを奪い、昨シーズンの得点王を獲得したNBAのスーパースターだ。そんな身体的なハンデを感じさせない強さを持つアイバーソンだからこそ、高橋は惹かれるのだろう。
次のアテネ五輪出場を目指し、今年5月にスタートを切った新生全日本で、高橋はエースの重責を担っている。2mを超える女子バレーボール選手がいる中で、身長170cmのエースは世界で高橋ただひとりだ。
「もっと背が高ければいいのにって、毎日思ってますよ。でも、ないものねだりをしてもしょうがないですから。あとはこの身長で何ができるかですよね」
フェイントやブロックアウトなど、多彩なスパイクを打ち分ける高橋。そんな170cmの全日本エースが世界と戦うための武器は、ブロックアウトだ。世界の大砲・ロシアのアルタモノワのような破壊力や派手さはない。しかし、高いブロックの位置を瞬時に見極めてブロックアウトを狙うスパイクで、相手の心理を揺さぶる。
「私は"ブロックアウト命"ですから。スパイクを打つ時は徹底して狙います。特に、ロシアはブロックが高いから、ものすごく怖いですけど、あの大きな壁を破ることができるんです。初めはふたりのブロックの腕がぴったりくっついているんですけど、ブロックアウトを打ち続けると、腕がだんだん開いてくる。そしたら腕の間に思いっきりスパイクを叩き込む。いつも、ブロックアウトやフェイントばかりだと歯がゆいですからね。スパイクがズドーンと決まると気持ちいい(笑)」
取材中でも、「ギャハハハ」という笑い声が絶えないほど明るい、ムードメーカーの高橋だが、責任感は人一倍強い。昨年、五輪出場を逃した時は、「バレーをやめようと思った」ほど。そして、高橋にブロックアウトを伝授した大懸郁久美が引退してから、エースとしての自覚が増した。
8月の「ワールドリーグ」では、相手のブロックを翻弄するうまさを見せ、チームの最多得点をマーク。さらに、コースを狙ったジャンピングサーブや粘り強く拾うレシーブで、キューバ、ブラジル、中国を破る原動力となった。しかし、高橋は満足しない。
「苦しい時や、二段トスになると、暗黙の了解で必ずレフト(エース)にボールが上がるんです。当然、相手もブロックをつける。そんな一番プレッシャーがかかる場面でも確実に決められるようになりたい。それを決めないと真のエースじゃないと思う。小さいから止められたなんて思われたくないですからね」
真のエースを目指す高橋が世界に挑む。世界の山脈と言われる世界ランク2位のロシアや、世界ランク1位のキューバを破ったアメリカなど、各大陸王者が集結する「ワールドグランドチャンピオンズカップ」で、真っ向から勝負する。
「どんな相手でも、とにかく思い切り楽しくやりたい。見せ場ですか? 私は、スパイクだけじゃなく、サーブもレシーブもやりますからね。全部見て欲しい」
ユニフォームの袖をまくり上げ、コート上を駆け回り、声を張り上げている、世界一小さなエースから、一瞬も目が離せない。
取材・文:福井手結子(ぴあ)
撮影:スエイシナオヨシ
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