21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀に突入した今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第93回

福田健二(Jリーグ)

福田健二  「この状況を打開しなければ、泥沼にハマってしまう」
  '01年J1リーグ戦1stステージが開幕して1ヵ月が過ぎた頃、福田健二の心を支配していたのは焦燥感だった。
 名古屋グランパスでツー・トップの一角を担っていた呂比須ワグナーは昨季限りでチームを去り、1stステージ終了をもって司令塔・ストイコビッチは引退する。
 今季から背番号が変わった。グランパスから用意された番号はエースストライカーの”9”。年明け早々には短期留学でサッカー王国・ブラジルのサッカーに触れてきた。来年にはワールドカップもある。入団6年目となるシーズン前には、結婚もした。今年が勝負の年になることを福田は十分理解していた。しかし、背番号9は悶々とした気持ちを胸に秘め、ベンチを温め続けた。
「試合に出られなかったけど、ピッチに出ている選手と比べて自分が負けているとは思わなかった。でも試合に出たとしても後半の残り10数分。ロングボールを多用する大味なサッカーをしている中で、ボクの役割はヘディングで競るだけ。このままじゃ、ヤバイ、下手くそになるって焦りました」
  試合に出れば結果は残す。確固たる自信を持てるだけの準備を整えていた福田は、移籍を決心する。8月末、FC東京の一員となった。
「今までズーッとリアクションの人間だったんです。普段の生活でも食事から服まで与えられたモノを受け入れているだけ。それで今回、初めて自分でアクションを起こしたんです。東京に来て、自分で動いて得るモノって多いんだなと知りました。移籍して試合に出られるようになって、9月の代表合宿にも呼ばれた。ボクがアクションを起こさなければなかったことです。それにこういう取材もなかったかもしれない(笑)」
  移籍によって人間の幅ができたと言う。また、プロサッカープレイヤーとしても幅を広げることになる。FC東京が用意したポジションは、中盤の左サイドアタッカー。本来のFWではなく、FWをサポートする役割を担うことによって、福田は新たなストライカー像を発見した。
「今まではFWの視点でしかサッカーが見えてなかった。サイドハーフに入って、初めて”中盤から見るサッカー”がわかりました。中盤の選手からしたら、FWにもっとサポートをしてほしいとか、ラストパスの前にワン・ツーで軽くパスに絡んでほしいというのがある。本来のポジションではないからと言って、決してマイナスじゃない。いずれFWに戻った時、この経験は絶対に生きます。ただ点を取るだけのストライカーじゃない。まわりをサポートできて、チャンスメイクもできる、ひと皮向けたストライカーになれるんじゃないかなと思います」
  もちろん、経験のためだけに、左サイドのポジションに甘んじているわけではない。
「チームメイトとコミュニケーションを取っているんで、このポジションにもかなり慣れてきました。だけど局面によって、まだ迷いが生じてしまう時がある。それは途中交代でベンチに下がった時に勉強してます。パスの出し手と受け手のバランスやFWとハーフの間合いなどを見ているとすごい勉強になる。とにかく今、うちはチーム状態がいいから、このバランスをボクが崩すわけにはいかない。試合をしていて、全然負ける気がしない。先制されても終盤に追いつかれても大丈夫と思えるほどチーム状態はいい」
  2ndステージ第8節終了時点で、FC東京はジュビロ磐田、鹿島アントラーズに次いで3位に位置している。トップ3が勝ち点4差にひしめく。2強との直接対決を残しているだけに優勝の可能性は十分にある。
「まだ折り返し地点ですから、優勝という言葉は口にしない方がいいと思う。あまり先を考えず、頭の片隅に優勝のふた文字をしっかりと置いて、目の前の試合をひとつずつ戦っていくだけです」
  優勝。グランパス時代、手が届きそうで届かなかった栄冠だ。爆発的な突破力と、泥臭くても最後までゴールを諦めない背番号9は、悲願達成のために何を見せてくれるのか。
「FC東京には(移籍の際に)結構大金を使っていただいたので、安い買い物をしたと言ってもらえるだけの結果を残したい。結果は勝利に導くゴールです。背番号9はハーフの番号じゃないから(笑)、やっぱり点を取らないと」

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
撮影:橘蓮二

プロフィール

●ふくだけんじ
'77年、愛媛県生まれ。179cm、73kg。FW、背番号9。習志野高2年時に全国高校選手権3位、3年時にインターハイ優勝を果たす。'96年、名古屋グランパス入り。'96年のU−19アジアユース選手権準優勝、'97年のU−20ワールドユース選手権ベスト8を経て、'99年、シドニー五輪アジア予選を戦う。'01年8月、FC東京に移籍。今季Jリーグ13試合3得点、通算119試合38得点(2ndステージ第8節終了現在)

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