21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀に突入した今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第91回

田中達也(Jリーグ)

田中達也  若きフットボーラーは、選手として生きる価値をドリブルに見出し、日々、努力と研究を重ねている。
「実は、そんなに足は速くない。普通の選手と同じぐらいです。でも、どれだけ速く見せるかが大事。ドリブルのボールタッチを、ほかの人が1回のところを3回でいったりとか、工夫してます」
 ボールを持つと顔付きが一変する。利き足の右足一本でボールキープしながら、前へ疾走。 ひとりを抜いてもパスをせず、ふたり目にチャレンジすることもある。
「とにかく、ボールを持ったら、躊躇なく勝負にいきます。ドリブルで抜いて、さらにドリブルで勝負にいく。そういう選手、日本にいますか? 日本にいないような個性的な選手になれば、代表からも声が掛かるだろうし、そういう風にしてどんどんアピールしていきたいですね。ボクは前を向かないと特長が出ない。前を向けば、仕事ができる自信があるんです。ドリブルしてシュートして、それが入らなくても次にチャンスになることもある。どれだけチャンスを作れるかだと思います」
 帝京高を卒業して、今シーズン、浦和レッズに入団し、4月18日、ナビスコカップ1回戦でプロデビューを果たした。しかし、プロで本当に通用するのかという不安を抱えながら、体調管理にも苦心し、時間は矢のように過ぎていった。1stステージ6節・鹿島アントラーズ戦(4月29日)でリーグ初出場。8節東京ヴェルディ戦(5月6日)で初得点。14節ジェフ戦(7月14日)あたりから、ようやくコンディションが上向きになった。1st最終節のサンフレッチェ広島戦(7月21日)では、2ゴールをあげる大活躍を見せた。
「はじめは、プロでの自分のプレイに戸惑いがありました。コンディションが上がってきたのは、自信が付いたのと、チーム内でプレイスタイルが理解されたことが大きい。ボクのプレイはわがままで、調子の波も激しいけど、みんなが特長を生かしてくれるんです。レッズは、ほかのチームに比べて自由だから、やりやすいのは確かですね」
 チッタ前監督は、選手の能力を最大限に引き出し、個性を生かすサッカーを志向した。本来は中盤だが、攻撃力を評価しFWで起用。 攻撃に関しては、多少の守備のリスクを負ってでも選手の特長を活用した。途中出場の田中には、「前線のサイドでずっと張れ」と指示を出し、守備のことはあえて言わなかった。彼の起用は攻撃へのメッセージであり、彼の投入を契機に、レッズの怒涛の攻撃が始まる。相手に攻撃させる暇を与えず、攻めて攻めまくる。もちろん、その間は失点する心配はない。「攻撃は最大の防御」の言葉通り、超攻撃的な田中は、究極の“守備的”プレイヤーでもあるのだ。
「1stステージはまあまあだったけど、2ndステージが始まって、チームが不安定になり、その中で自分を生かし切れてない。体の調子、コンディションはいいけど、それがプレイの調子につながっていないし、体がキレててもドリブルで抜けない時もある。監督がピッタに代わって(2ndステージ4節から指揮)、これからどうなるかわからないけど、ウチは選手個々の能力は本当にすごいと思う。例えば、FWのトゥット、エメルソンには相手DFはなかなかかなわないと思うし、日本人もほとんど代表歴がある。あとは、個人と組織がバランスが取れて、折り合いがうまくいけば、もっといいサッカーができると思います」
 ワールドユース(6月、アルゼンチン)の日本代表メンバーには招集されなかった。まだ一度も袖を通したことがないブルーのユニホームへの思いは募る。だが、J1リーグには、ドリブルを得意とするFW・前田遼一(ジュビロ磐田)、MF・大久保嘉人(セレッソ大阪)という同年代のライバルがいる。
「前田さんも大久保もうまいけど、止まってフェイントをかけたり、キックフェイントをしたりして、テクニックで抜いていく。ボクは、スピードに乗って、キレで勝負して、縦へ思いっ切りどんどんいくタイプ。ドリブルでは負けてないと思うし、負ける気もしない。彼らはパスもできるうまい選手で、ぼくはドリブラーです。代表は常に狙っていきたいですね。いつ招集されてもいいように準備をして。そのためには、まずはチームで結果を残して、内容も高めたい。 監督に認められて、チームでのポジションを確立しなければいけないと思います」
 そして、自分をさらに成長させるため、海外への夢も心の内に秘める。
「今は、移籍より、まずは短い期間でもいいから、 留学して自分を試してみたい。南米かスペインに行きたいですね。やっぱり、攻撃的なサッカーが好きですから」

取材・文:石田英恒

プロフィール

●たなかたつや
'82年、山口県生まれ。167cm、63kg。サッカーの名門・帝京高に入学し、1、2年時に「高校選手権」に出場。今季より浦和レッズに入団し、4月18日の「ナビスコ杯」モンテディオ山形戦でデビューを果たす。高校時代はMFだが、プロ入り後はFWとして得意のドリブル突破を見せている。Jリーグ14試合出場3得点(第7節現在)。

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