ういんでぃーともみ
'76年、青森県生まれ。158cm、54kg。AJパブリックジム所属。小学6年生の時に空手を始める。中学、高校では陸上部に所属。高校3年の時、部活の引退を機に再び空手の道へ。日本女子体育短期大時代に、正道会館、極真会館の全国大会で、それぞれ準優勝、4位入賞の成績を残す。'99年、Jd'吉本女子プロレスリング(現JDスター女子プロレス)でキックボクサーとしてプロデビュー。'02年5月、スマックガール・金子真理戦にて総合デビューも果たした。キック戦績14戦7勝4敗3分。総合戦績6戦3勝3敗。

第188
WINDY智美(キックボクシング)

「女子格闘家の中で、一番強い選手は誰?」と質問されたら、格闘技ファンの間で喧々諤々の論争が起きるだろう。何しろ総合、キックボクシング、空手、ボクシング……ジャンルは様々だし、それぞれ階級も細分化されている。では、「女子格闘家の中で、一番“怖い”選手は誰?」という質問をぶつけられたらどうだろう。恐らく答えは全員一致で「WINDY智美!」となるに違いない。
 女子キック界不動のエースは、まず面構えが怖い。ぎっちり編みこまれたコーンロー(とうもろこし型)ヘアを後ろで束ね、リングインと同時に鋭い目で相手をぐっと睨みつける。「勝負はきれい事じゃない。それこそ相手を殺すつもりでいかないと駄目だから、まずは目で殺す」というのがWINDYの“流儀”だ。
 試合開始のゴングが鳴ると、正真正銘“怖いWINDY”が姿を現す。紅潮した顔はまさに般若の形相となり、問答無用に蹴りまくり打ちまくる。相手のスタイル、戦法など一切関係ない
。がしっと逞しい足で、強烈なローをお見舞いすると、ひるんだ相手を首から抱え込んで容赦なくヒザ蹴りをぶち込んでいく。相手を秒殺しても、憮然とした顔で「物足りねえんだよ」とばかりにコーナーポストをどつくこともある。見ている誰もが「もう今日はこれぐらいで勘弁して下さい!」と後ずさりしてしまうような凄みと迫力こそ、WINDY智美のファイトスタイルなのだ。
 生粋のファイター・WINDYと格闘技の出会いは、小学6年生の時にさかのぼる。
「よく、昔は不良だったんでしょとか、路上のケンカばっかりしてきたんでしょって勘違いされるんですけど、そんなことはないですよ(笑)。体育大好き、勉強苦手っていう普通のスポーツ好きな女の子でした。本を読むのも大好きで、毎日のように図書館に通っていたんですけど、その通り道に空手の道場があったんです。覗いてみたら楽しそうでやってみたいと思って親に頼みました」
 しかし両親からは大反対されてしまう。特に大工をしている父親は「女が格闘技なんてとんでもない。そんなにやりたいなら、自分で空手衣を買って月謝も払え! 道衣も自分で洗え!」とにべもなかった。だが、WINDYは父親の血を見事に受け継いでいた。「一度決めたからには後へは引かず、一途にやり通す」という職人の血だ。言いつけ通り、貯めたお金で空手道場に通い始め、空手の面白さにのめり込んでいく。
 空手からキックへの転向は、今から4年前。転向の理由は、これまたWINDYらしく、頑固なものだった。
「空手の先生と考え方が違ってきたんですよ。先生は道場生を増やそうと懸命。でも選手の私としたら、もっと集中して空手を教えてほしかった。結局ケンカしてやめてしまいました。でも格闘技は絶対に続けたくて、たまたま近くにあったキックのジムに通い始めたんです」
 空手時代には未体験の顔面直接打撃も「倒すためには顔を殴れた方がいい」と恐怖心はまったく湧かなかった。
 '99年4月、「日本女子初の総合格闘家」として知られる高橋洋子を相手にプロデビューを果たす。しかし、「勝ち負けだけにこだわり、プロとしての自覚は、正直言ってあまりなかった」。そんなWINDYに最大の転機が訪れる。'01年4月から3回に渡るオランダへの武者修行だ。
「最初は海外遠征のついでに立ち寄ったんですが、レベルの高さと選手のプロ意識には、とにかく驚きました。地元の大会を観戦したけど、選手は勝ちっぷりも負けっぷりもよくて、闘い方が華やかなんです。プロっていうのはこうじゃなきゃと痛感しましたね。ジムには女の人もたくさんいて、みんなひたむきでかっこいい。キック王国の懐の深さを感じて、絶対もう一度ここへ戻ってこようと決めました」
 渡航費が貯まるとオランダへ渡り、名門・メジロジムで数ヵ月のトレーニングを重ねながら「倒しにいくスタイル、観客に魅せるファイト」を見い出だしていくことになる。そういえば、ジムメイトから呼ばれていたニックネーム「WINDY」をリングネームにしようと決めたのもこの地だ。現在の「WINDY智美」のすべては、ここ、オランダから始まっているのだ。
 帰国後は、「女子キックの強さをアピールするために」女子総合格闘技大会〈スマックガール〉へ乗り込むなど、活躍の場をさらに広げている。
「日本一怖い女子格闘家」として知名度が高まるにつれ女性のキックボクシング人口も急増している。強敵との対戦を望んでやまないストライカーにとって、競技人口の増加は大歓迎だ。今年1月には、女子だけのキックボクシング大会〈Girls SHOCK(ガールズ・ショック)〉がついに開催された。孤軍奮闘で女子キック界をリードしてきたWINDYが、栄えあるメインを飾ったことは言うまでもない。
 今の目標は、過去2回に渡り完敗を喫しているギリシャの最強女子キックボクサー、カリオピ・ゲイツドウを、今度こそマットに這わせることだ。
「よく『女なのにどうしてキックなんかやってるの?』って聞かれるけど、いつもうまく答えられないんですよ。男だから、女だからと区別して考えたことがないから。今はリングの上で相手を倒したいという自分の気持ちに一番素直でいたいし、その気迫が顔に出て怖がられるなら、もっともっと“怖い”と言ってもらいたいですね」
 強さと怖さに磨きをかけて、WINDY智美は頑固一徹、力づくで日本の女子キック界を引っ張り続ける。


取材・文:松本幸代


WINDY智美を知る30の質問
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