わたなべしゅんすけ
'76年、栃木県生まれ。177cm、70kg。右投右打。背番号31。'00年には、日本代表としてシドニー五輪にも出場した。'01年、ドラフト4位で千葉ロッテマリーンズに入団。地上10cmからリリースされる球界唯一のアンダースロー投手。今季は、16試合に登板し、8勝6敗、防御率4.53。(7月26日現在)

第229
渡辺俊介(プロ野球)

 高校球児でも150kmを超えるピッチャーがいる中で、MAX135kmの男がプロの世界で戦っている。球界で唯一のアンダースローを操る千葉ロッテの渡辺俊介は、遅い球で強打者たちと勝負する。
「130kmのストレートを速く見せるために、100kmくらいの変化球を使う。緩急を使って打者のタイミングを崩し、内野ゴロを打たせる。スピードは遅いのに何で打てないんだ?って思わせられれば抑えられる。ボクのストレートなんか、松坂(大輔)のチェンジアップよりも遅いんですよ。でも、それでいいと思う。バッターを悩ませるのがボクのピッチング全てですから。プロというのは本来、人より速い球を投げたり、ボールを飛ばしたりする人たちの集まりだと思う。だから、たまに自分がプロにいていいのかなって思うこともありますね(笑)」
 バッターのタイミングをずらすという意味では、球界で唯一アンダースローを操る渡辺は最も打ちづらいピッチャーと言えるかもしれない。セットポジションから左足を大きく踏みだした後、地上10cmからボールを放つ。地を這うような軌道に、パ・リーグの強打者たちのバットは空をきり、凡打を重ねるのみ。
「アンダースローは、土台となる下半身が崩れたら投げられないですね。だから、足首、ヒザ、股関節、腹筋、背筋の順番でトレーニングをします。下から徐々に力が伝わるようにするので、上半身にはあまり筋肉はいらない。むしろ細い方がいい。腕はムチのようにしならせる。球が遅いので、少しでも前で投げるように意識してます」 
 野球を始めた時からアンダースローだったわけではない。転機となったのは中学2年の時。球は速いがコントロールが悪く、3番手ピッチャーに甘んじていた渡辺は、高校で通用する自信が全く持てなかった。そんな時、高校で野球のコーチをしていた父の「アンダースローをやってみるか」のひと言が彼の運命を変える。
「このままじゃ、高校でも試合で投げられないことは目に見えてましたからね。あいにく、体だけは柔らかかったので、結構安易にな気持ちで変えました。最初は違和感がありましたけど、だんだん良い球が投げられるようになって、面白くなった。それに、目立つし。今まで野球で目立つ事なんてなかったからすごくうれしかったですね」
 高校、大学では常に2番手だった渡辺だが、新日鐵君津に入社後にその才能を開花させた。抜群のコントロールとキレのあるボールと下手投げの打ちづらさが加わるピッチングで、都市対抗野球で優秀選手に選ばれ、シドニー五輪出場も果たした。そして、翌年千葉ロッテの指名を受けてドラフト4位でプロ入りしたが、渡辺は喜びよりも、不安が大きかったと言う。
「小さい時からエースとしてやっていたなら、プロ野球への憧れも強かったかもしれないけど、2番手3番手だったボクにとっては全く考えることがなかったですね。高校と大学ではセレクションから入って、社会人に行ったのもプロを目指すのではなく、ただ野球を続けたかったから。プロに入ることでもっと、野球を続けられるようになったのはうれしかったけど、アンダースローのピッチャーもいなかったので、通用するかどうかわからなかった」
 1年目に5勝、2年目こそ勝ち星に恵まれなかったが、昨年は9勝をマークしてローテーションを勝ち取った。飛躍を誓った今年は、7月26日現在、チームトップの8勝をあげている。特に、4月と5月に千葉ロッテを襲った大型連敗を2度も止め、チームをどん底から救う救世主となった。
「連敗ストップはたまたま。ただの巡り合わせですよ。それに、前半戦は打線の援護があって勝てたようなものだから。8月にはオリンピックで直さん(清水直行)と雅さん(小林雅英)がいないから、投手陣に負担が多くなる。今までのように6回、7回でマウンドを託すのではなく、完投を目指して投げて行きたいですね。今、ダイエーと西武が先を行ってますけど、3位なんて狙ってませんよ。可能性がある限り、全試合勝つつもり。1位を目指すのは当り前ですから」
 プレイオフ進出を狙う千葉ロッテにとって、エースと守護神が不在となる8月に、上位と引き離されることは致命的であることを背番号31は知っている。さらに、渡辺には結果を残さなければいけない理由がある。
「もっと、ボクのようなピッチャーがプロにいてもいいと思う。アマチュアにはたくさんいるんですよ。でも、高卒ピッチャーで150kmと130kmのアンダースローじゃ、ドラフトにかかるのは150kmでしょ。まだまだ評価は低い。そんな状況を少しでも変えるには、プロにいる選手が結果を残さないと。あいにく、今はボクしかいないんで(笑)。アンダースローだからといってプロへの道を諦めないでほしい」
 渡辺俊介には、自分をプロへと導いてくれたサブマリン投法を絶やせないという使命がある。

取材・文:福井手結子(ぴあ)/撮影:大崎聡


渡辺俊介を知るための30の質問
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