21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀まであと半年となった今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第26回

大懸郁久美(バレーボール)

大懸郁久美 4年前のアトランタオリンピック。大林素子、吉原知子らベテランに混じってコートを駆け回る20歳のプレイヤーがいた。バレーボールの名門・旭川実業高出身、将来の全日本を背負うことになる大懸郁久美だ。
「あの時は一番年下だったので、ガムシャラにやってた気がしますね。自分のことだけで頭がいっぱいだった」と当時を振り返る大懸。
 自らがチャームポイントと認める八重歯と人なつっこい笑顔が彼女のセールスポイントだが、コートの上ではそれ以上にプレイが光る。
 身長173cmとバレーボール選手としては小柄な大懸は、豪快なスパイクを決めまくる絶対的なエースではない。だが、大型選手の高いブロックに真っ向から挑む勇敢さと、ブロックアウトを狙うテクニックが彼女の売り。このふたつを武器に、昨年のワールドカップでは全日本女子で最多得点をマークした。だが、彼女の持ち味が発揮されるのは攻撃の時だけではない。ピンチでは、強烈なスパイクを粘り強く拾い、大声を張り上げてチームメイトを叱咤激励。全日本女子には絶対に欠かせないムードメイカーの役割も負っている。
 20歳で五輪を経験した大懸も今年24歳。この4年間で技術的にはもちろん、精神面でも成長を遂げた。'97年以降のVリーグで、サーブレシーブ賞3回、敢闘賞を一度獲得。4年連続でベスト6プレイヤーに選出された。そして今シーズンは、キャプテンとしてシーズンに臨んだ。
「キャプテンになって自分のことだけじゃなくて、チームのことも考えられるようになりました。自分のプレイをするのは当たり前。その上でチームが力を出せるようにする。チームメイトとうまくコミュニケーションを取ることが大切ですね。そんな中で、私がチームを引っ張っていくんだという自覚が生まれた。精神的にひと回り大きくなった気がしますね」
 大懸主将に率いられたNECレッドロケッツは開幕から18連勝し、無敗のまま総合優勝。Vリーグ優勝と最優秀選手賞を手にした。
 だが、大懸には大きな仕事が残っている。9月のシドニー五輪出場という使命がある。全日本女子は昨年11月のワールドカップで世界の強豪国を次々に撃破しながらも6位。シドニー行きの切符をつかむことはできなかった。五輪出場権を得るためには、6月17日(土)から代々木第1体育館で行われる最終予選で、上位4位に入るか、アジア勢で1位にならなければならない。
「シドニー五輪のためにやってきたチームなので、しっかり結果を出さないと。この全日本の中では若い時から試合に出してもらっている方なので、経験豊富な分、責任を感じます。アトランタ五輪を知っているのは私だけだし。前回は9位に終わってすごく悔しかった。あの頃と比べて、周囲の選手や監督の期待は大きくなっていると思うので、それに応えられるようにしたい。
 試合前に絶対勝て勝てって言われると、ほっといてって感じで負担に思うけど、会場にファンがたくさんいると楽しくなっちゃいます。大観衆の中でプレイできるのはうれしい。最終予選ということでプレッシャーはあるけど、ファンのみんなの声援が力になるので、応援お願いします!」
 '64年にバレーボールがオリンピックの正式競技に採用されて以来、不参加だった'80年のモスクワ大会を除いて、全日本女子はすべて本大会に出場している。シドニー五輪出場は至上命令だ。果たして、全日本女子はその重圧をはねのけることができるのか。173cmの小さなエースが命運を握っている。

撮影:末石直義

プロフィール

●おおがけいくみ
'76年、北海道生まれ。173cm、67kg。レフト。20歳の時にアトランタ五輪を経験。スパイク、サーブ、レシーブすべてに高い能力を持つ。今季からNECレッドロケッツのキャプテンとしてチームをリードし、総合優勝に導いた。

大懸郁久美を知るための30の質問 バックナンバー


@ぴあ