21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀に突入した今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第74回

田原豊(サッカー)

田原豊 「骨のあるヤツ」というタイトルに、これほど当てはまるアスリートもいないだろう。横浜F・マリノスの田原豊である。プロ入り1年目のルーキーとは思えないほど、彼のコメントは大胆で歯切れがいい。
 5月18日に中断する前に行われたJリーグ1stステージにおいて、田原は全10試合のうち7試合に出場している。F・マリノスが下位に低迷しているため、チャンスが巡ってきているのは事実だが、高卒の新人では群を抜いている。
 だが、彼はまったく満足していない。
「チャンスが早く来たとかは思わないです。ボクの考えでは開幕スタメンの予定でしたから。得点も1点しか取ってないですし。初ゴールはやっぱりうれしかったけど、最低でも得点王が目標ですから。今のチーム状況では難しいかもしれないけど、このままずっと悪いわけじゃないし、2ndステージになれば今よりずっと良くなる。そこで毎試合3点ぐらい取ればいいでしょう?」
 6月17日(日)からアルゼンチンで開催されるワールドユース選手権では、U−20(20歳以下)日本代表の得点源として期待されている。20歳以下のワールドカップとも言える大舞台にも、まるで臆するところがない。世界を身近に感じている新世代のJリーガーならではだが、それにしても彼は、「緊張」とか「萎縮」という言葉とかけ離れている。余裕すら感じさせるほどだ。
「楽しみと言われればそうですけど、移動がだるいっすね。ヤバいっすよ。アルゼンチンまで30時間ぐらいですから。まあ、大会は楽しみにしてますよ。スタメンで出て点数を取って活躍して、世界にアピールできれば最高。そうなるように頑張ってきますよ。前回の日本は準優勝だったけど、別に気にしてません。ボクたちの目標は優勝だから。油断はできないけど、どことやりたいというのもない。優勝すればいいんですから」
 2002年のワールドカップも視野に入れている。「日本代表入りを目指す」と公言してはばからない。
「間に合わせたいですね、2002年に。でも、ボクだけじゃなくてみんなそうじゃないですか。世界を見れば、高校生ぐらいの年代でもワールドカップに出るのが当たり前になってる。そういう考えを持ってないとおかしいですよ」
 Jリーガーには海外サッカーのフリークが多い。とくに20歳前後の若手選手たちは、海外移籍を現実的に考えているだけに、ヨーロッパのリーグ戦をよくテレビで観ている。世界のトップクラスのプレイと自分を照らし合わせ、レベルアップへの材料にしているのだろう。
 だが、田原はほとんど観ない。好きな海外のプレイヤーも「いない」と言う。
「高校時代までは、ほとんど観なかったですね。今もそんなに。テレビを観てると眠くなっちゃうから(笑)」
 すべてがこんな調子なのである。
 その一方で、発言には責任が伴うことを、彼は理解している。自分に足りないものを把握した上での発言だけに、「課題は?」という質問にもすぐに返事が返ってきた。
「チーム状態が良くないと、FWの責任だと言われるし、実際、そういうことですから。サイドからの攻撃が少ないというのはありますけど、それ以前に自分のポストプレイが正確じゃない。シュートも決めなきゃいけないし。これを決めておけばという場面が、出た試合では必ず1本はあるんです。自分が決めてれば、チームがいい流れになる場面があった。決定力は課題ですね。とにかくどんなにいい結果を出せたとしても、満足はしない。サッカーをやってる以上はずっと満足なんてできないですよ。納得はできる? それもないですよ(笑)。自分でここまでというものを作りたくないから」
 21世紀の日本サッカー界を背負うべき大型ストライカーは、どこまでも上を目指している。そして、田原豊は単なるビッグマウスではない。

取材・文:戸塚啓
撮影:末石直義

プロフィール

●たはらゆたか
'82年、鹿児島県生まれ。184cm、83kg。サッカーの名門として名高い鹿児島実業高から今年、横浜F・マリノスに入団。高校2年の時の「高校選手権」で活躍し、全国的に名前を知られるように。昨年の「アジアユース選手権」でも3ゴールを決め、将来の日本代表のエースストライカーとして注目されている。4月29日の第6節・広島戦でJリーグ初ゴールを決めた。

田原豊を知るための30の質問 バックナンバー


@ぴあ