なかじまひろゆき
'82年、兵庫県生まれ。180cm、77kg。右投右打。伊丹北高校時代は投手兼外野手として通算43本塁打を放つ。'01年にドラフト5位で入団後、内野手に転向。今季は開幕からスタメンに名を連ね、5月10日現在、打率.315、5本塁打、34打点をマークしている。

第218
中島裕之(プロ野球)

 思い出すだけで自然に笑みがこぼれてしまう。開幕16戦目に、人生初の満塁ホームランを放った中島裕之は会心の当たりを噛みしめていた。ファンの大歓声と出迎えてくれるチームメイト。ダイヤモンドを1周しながら、中島は野球をする喜びを感じていた。食事と睡眠以外は野球漬けの毎日を送る中島は、野球小僧という言葉がぴったり当てはまる。
「感触はもちろん覚えてます。もうメッチャ気持ちよかった。(ダイヤモンドを回る時は)たまらんかった。野球やってて良かったなぁって思える時ですよね。初めてやったけどあれは、最高。うん、サイコーです」
 バッターボックスに立つ中島に迷いはない。右ひじを高く掲げ、左足を大きく引き上げるダイナミックなフォームで、ピッチャーから投げ込まれたボールを強く叩く。野球を始めた時から変わらぬスイングで開幕からヒットを積み重ねた。5月2日には2度目の満塁ホームランを放つなどリーグトップの36打点をマークする。勝負強さが光る7番打者は、首位を走るチームの得点源となっている。
「ピッチャーとの間合い、タイミングに気をつけているだけですね。来た球をセンター方向にコンパクトに打つ。ランナーがおらんかったら自分が出塁して、ランナーがいればどんな形でも返す。絶対に打ってやるという気持ちが出ていると思います」
 王座奪還を目座す西武ライオンズの今年のテーマは、メジャー移籍した松井稼頭央の穴をどう埋めるかに絞られていた。ゴールデングラブを4度も受賞し、昨シーズンも打率3割を超え、33本塁打を記録した。オリンピックアジア予選でも日の丸を背負った日本屈指のショートストップの穴である。9年間、攻守の要としてライオンズを支えた男の後継者は誰なのか注目が集まる中、伊東勤新監督が指名したのがプロ4年目の中島だった。甲子園出場はないが、高校通算43本塁打をマークした長打力と50m5秒8の俊足を持つ男に、伊東監督も「ボールを飛ばす技術をしっかり持っている。ミスをしても使い続ける」と明言し、背番号も清原和博がつけていた「3」を託して大きな期待を寄せた。中島も指揮官の期待に応える、キャンプでは誰よりも多くバットを振り、特守を行った。「ポスト松井稼頭央」「西武のカギを握る男」という周囲の雑音に惑わされることなく技を磨いた。
「すごいチャンスをいただいたわけやから、あとは自分次第。キャンプでも周りから色々言われたけど全然気にしませんでした。プレッシャー? 全然平気。注目してもらえればファンの方にも名前を覚えてもらえる。それに、背番号3、いいでしょ? 監督から言われてびっくりしたけど、ほんまうれしかった。背中に番号があるから自分では見えないし、最初は慣れなかったけど、最近はボクの番号なんやって思えるようになってきました」
 もちろん課題もある。プロ入り後にピッチャーから転向したショートの守備では、失策を重ねている。
「守備については課題だらけです。ショートは難しい打球も飛んでくるので、前に出てええのか待った方がええのか迷う。そんな時にエラーが出てしまいますね。とにかく堅実なプレイを心がけてます。ボクにファインプレイは無理ですから、まずはできることしっかりやりたい。同じミスだけはやらんようにしないと。もしミスをしたら次の打席で返します」
 プロ4年目でようやく定位置をつかんだ中島にとって、歓喜も失敗もすべてが糧となる。
「そりゃ、ゆくゆくはクリーンアップを打ちたいですし、タイトル争いにもからみたいけど、ボクは今年ようやく試合に出られるようになったばかり。まずは1年間試合に出続けるために1日1日を積み重ねて行きたいと思います」

 チームの期待を背負う21歳の若獅子は、焦らずじっくりと力を貯めている。

取材・文:福井手結子(ぴあ)/撮影:岡本寿


中島裕之を知るための30の質問
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