桜井良太

さくらいりょうた●’83年三重県生まれ。
194cm、75kg。四日市工業高校3年時に51点をあげる活躍で能代工業を倒し、その名を全国に轟かせた。愛知学泉大学では、東海学生リーグ4連覇を達成し、4年生時にはMVPに選ばれた。昨年から日本代表チーム入り。今年4月からJBLのトヨタ自動車アルバルクに所属。

第264回
桜井良太(バスケットボール)

 
 試合前の練習で、ある男のプレイにスタンドがどよめく。ボウスハンド(両手)の豪快なダンク! 右手、そして左手による鮮やかなワンハンドダンク!! 190cmを超える長身が、軽やかに宙を舞い、地上305cmのリングに次々とボールを叩き込む。すさまじい運動能力を持つこの選手は、何者なのか? 大会プログラムをめくると、そこにはこう書かれているはずだ。桜井良太、22歳、と。
 高校時代から、知る人ぞ知る存在だった。四日市工業高校3年生の時、ひとりで51点をあげる活躍で、田臥勇太を輩出した能代工高を撃破した。愛知学泉大学では東海リーグ4連覇を達成。4月から、JBLに所属するトヨタ自動車の一員となった。そして、そのトヨタの練習に参加する時間がないほど、今は日本代表チームで徹底的に鍛えられている。
 代表でのポジションは、得点を求められるSG(シューティングガード)だ。5月に行なわれた「アジア選手権」予選では、中国戦の勝利に大きく貢献。世界ランク12位を相手に、チーム最多となる14点をあげた。また、今春からは、ジェリコ・パブリセビッチ代表監督の元、パスをさばくPG(ポイントガード)にも挑戦している。大型化を進めるジェリコ監督は、194cmの彼を「PGとSGの両方をこなせるガード」として育てていくつもりだ。構想通りに成長すれば、得点力とアシスト能力を兼ね備え、さらに派手なダンクでファンを魅了するような、ニュータイプのガードが誕生することになる。
 元々、得点を取ること以上に、パスには興味があった。漫画『スラムダンク』でいうと、仙道彰という人気キャラの「周りを生かす大人のプレー」が好きだと言う。
「リバウンドの後すぐにボールをもらって、どんどん速攻を出していって、そこから味方にパス、というのが楽しいですね。PGは機会があればやってみたかったんですよ。やればやるほど難しさを感じるし、周り(代表にいるほかのPG)のうまさを実感します。でも、速い展開に持ち込めば少しは通用するかも、と思う」
 話をするとわかるのだが、桜井は多くを語るタイプではない。謙虚で、控えめで、言葉の端々に気遣いを感じさせる。実は、昨年ジェリコ監督に見出されるまで、代表の経験はゼロだった。A代表はもちろん、各世代の代表にすら選ばれていない。それに対するコメントが、またおもしろい。
「代表に自分が入るということ自体、まったく考えてなかったので、選ばれないことに不満はなかったです。逆に、選ばれた時に、『何で入れたんだろう』とびっくりしちゃって」
 当初、代表入りの報せに戸惑った桜井だが、今では8月20日(土)から始まる「キリンインターナショナル」に向けて、静かに闘志を燃やしている。世界6位のリトアニア、18位のトルコ、20位の韓国を迎える同大会は、ジェリコ・ジャパンの行く末を占う意味でも重要である。
「韓国には負けられないですね。大会の初戦という意味でも大事です。チーム力は向こうに負けてないと思うし、自分たちの方が強いと信じたい。韓国はスクリーンを使って外からのシュートというパターンが多いので、そういうところで穴を作らないように、まずディフェンスから入っていこうと思います。この前の試合(キリンカップ)は(五十嵐)圭さんひとりにがんばらせてしまって、自分は頼りない部分もありました。韓国戦では、コートに出ている以上、戦う気持ちを持ってプレイしたい」
 確かに、7月末の「キリンカップ」では世界8位のオーストラリアに完敗だった。彼自身、第1戦で12点・2アシストをあげたものの、それ以降は思うようなプレイができていない。だが、随所に目覚しいパフォーマンスを見せたのもまた事実であり、マジック・ジョンソン張りのアシストパスやNBA級のブロックショットで、桜井良太という素材のさらなる可能性を示した。
 来年の夏、日本で初めて「世界選手権」が開かれる。現在、日本は世界23位だが、それまでに強豪国との差をできるだけ詰めておきたい。本人は謙そんして否定するだろうが、日本代表の未来は、やはりこの男の成長にかかっている。

取材・文:小尾慶一
撮影:フレンダー田中


桜井良太を知るための30の質問
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