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さとうよしひろ●'81年、愛知県生まれ。185cm、75kg。中学校2年の時に名古屋JKファクトリーの門を叩き、'98年ニュージャパンキックボクシングでプロデビュー。'01年全日本キックボクシングに移籍後、WKA世界ムエタイウェルター級チャンピオンとなる。'03年8月にムエタイの強豪ガオラン・カウイチットを相手に初防衛、翌年2月にはWPKC世界スーパーウェルター級王座を獲得、日本人初の世界2冠王者となる。昨年はタイのルンピニースタジアムウェルター級6位にランクイン。
公式HPアドレスは
http://sports.nifty.com/sato-kick/top.html |
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第251回
佐藤嘉洋(キックボクシング)
強くなりたい、強いヤツを倒したい__。ただ純粋に格闘技の根源を追求し続ける男がいる。
「名も知らない強いヤツとやることに、ロマンを感じているんです。周りにはあまり認められないかもしれないですけど、自分の中でワクワクするんですよね。2年間くらい世界を見てきて、色んなところに強いヤツはいるわけですよ。そこにいて、日本に来られないなら、こっちから出向いてやろうという感じですね」
佐藤嘉洋。まだ24歳になったばかりの若者だが、キャリアはすでに10年を数える。高校在学時にプロテストに合格し、以来27戦で24勝。現在、WKA世界ムエタイウェルター級王座と、WPKC世界スーパーウェルター級王座を持つ2冠王者である。ここ2年ほどは海外遠征を繰り返し、世界の強さを肌で感じ取ってきた。
現在、国内だけでも6つの団体が存在するキックボクシングは、世界を見渡せば数限りない団体が存在する。当然、チャンピオンベルトの権威も確立されていない。重要なのは、何を持っているかではなく、誰が持っているかだ。2つのベルトを保持する佐藤もそれは自覚している。だからこそ猛者との戦いを求めているのだ。
「どれだけ強いヤツを倒したかが価値になると思うんです。戦績なんて関係ないんですよ。例え全勝してようが、弱いヤツばかりに勝っても全然大したことない。いかに強いヤツとやって勝ったか。その人数が自分の価値だと思ってるんで。世界チャンピオンと言っても、キックってわけわからん団体がいっぱいあって、その中のひとつを獲ったに過ぎない」
人とは違う道を歩んでいるせいか、佐藤の評価は軒並み地味なものだ。「玄人好み」「相手の持ち味を消すスタイル」というのは、世間的に受けの良いものではない。立ち技最強を自負するK−1など、華々しい舞台からオファーがかからないのも、そういったスタイルが一般向けではないからだという見方もできる。だが、佐藤は世間に対して、疑問を投げかける。
「ボクはいい試合も面白い試合もするつもりはありません。いい試合をするのがプロなのか、勝ちに徹するのがプロなのか。どっちが本物なんだろうっていう疑問はありますね。ボクはエンターテイナーじゃない、アスリートなんです。まず第一に掲げるのは勝利。内容は強いヤツと強いヤツが戦えば、勝手についてくるもんですから。でも勝ちに徹するって言っても、ボクは逃げ回って勝つんじゃなくて前に出て勝ちます」
あくまでクールに構える。勝ちに徹する姿勢はもはや美学にまで昇華しつつある。理想は相手を完封した上でのKO勝利だが、決して無理はしない。しかし逃げることもない。「冷静に燃える」。それが彼のファイトスタイルを支えるキーワードである。
「練習中と試合中は一切感情を表に出さないようにしてるんです。辛い顔したり嫌な顔しても元気になるのは相手なんで。オレは何喰らっても平気だよって顔してます。格闘技って熱くなったら絶対プラスにはならないですよ。理詰め? それはあるかもしれないっすね。ひとつひとつ相手のすべきことを消していく。そして最後は相手のハートが折れる。ボクは全部が得意技なんで、相手が苦手な戦法を選ぶんです」
「何でもできる」ようになるまでには天賦の才に加え、相応な練習量が必要である。だが、佐藤はそれを実行してみせる。本人は「全て会長のおかげ。ボクは努力と工夫で成り上がってきた凡人」とかわすが、素質があったことは間違いないだろう。試合前の対策も、たった1回ビデオを見るだけで終わる。10分前後の映像から相手の弱点は見極められるのだと言う。自信は揺るがない。2月6日(日)に控える、約半年ぶりの日本での試合にも、何ら気負うところはない。まだ見ぬ強豪との戦いを欲する王者にとって、これはひとつの通過点に過ぎないのである。
「プレッシャー? いや、何も感じないです(笑)。ビデオ見た時より相手が強くなっててもいいように、いつも相手の2倍強くなるような練習をして向かっているんで。確実に勝ちます。ボクもできればKOで倒したいんですけどね。あえて危険は冒さないです。何て言ったらいいのかな。完封して、最終5ラウンドの最後の10秒くらいで倒せたらいいなって感じですかね」
信念を貫く若き王者に、油断も慢心もない。本物が本物と認められる世界になるように、自分が本物であると証明するために、佐藤嘉洋は勝利にこだわる。そしてこれからも、己の価値観を満足させるため、強者との出会いを求める旅は続いていく。
取材・文:今井雄一朗(ぴあ)
撮影:水谷佳生
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