21世紀の骨のあるヤツ

伊達公子、野茂英雄、中田英寿など世界を舞台に戦う選手の出現でおおいに盛り上がった90年代のスポーツ界。21世紀まであと1年となった今、彼らのように大きくはばたく可能性を秘めた未来のスーパースターを直撃!

第14回

加藤大治郎(ロードレース)

加藤大治郎 世界各国を転戦して行われる2輪のワールドシリーズ、ロードレース世界選手権。世界グランプリと呼ばれるこのスポーツは、ノルディックスキー、ジャンプと並び、近年では最も日本人が世界で成功をおさめている競技と言える。過去に4人の世界チャンピオンを輩出し、90年代に日本人がタイトルを獲得した回数は5度。表彰台には日本人が毎戦必ずと言っていいほど登っている。
 そして今年、新たにひとりの日本人ライダーが世界GP250ccクラスへ参戦を果たす。加藤大治郎、23歳。国内では圧倒的な速さを誇り、大舞台にも強い。'93年の原田哲也以来のデビューイヤーチャンピオンの期待がかかる超大物ルーキーだ。本人は、そんな話はどこ吹く風といったのんびりとした雰囲気を漂わせるが、すでに参戦前から、世界のトップチームが彼の走りに注目している。
「GPに参戦できて、とてもうれしいです」
 飄々とした佇まいで、おっとりと話す姿は、23歳には到底見えない。身長162cm、人懐っこい笑顔はまるで高校生のようにあどけない。最高峰となる500ccに続く250ccのマシンがやけに大きく見える。だが、そのレース歴はまさに百戦錬磨。ポケバイ、ミニバイクから始めたロードレースのキャリアは、すでに20年(!)のベテランだ。
「ポケバイをやっていた時は、世界グランプリは上の方のレースというイメージでしかなかった。参戦を意識するようになったのは、ロードレースを走り始めてから。16、17歳くらい。最終的な目標は500cc参戦ですね」
 '97年に全日本250ccタイトルを獲得した加藤は、その後1年間はマシン開発に苦しみ低迷した。しかし昨年は再び躍進してランキング2位。しかもシーズン最多の5勝という優勝回数も、獲得したポイント数も、チャンピオンと全く同数という見事な成績を残した上でのものだ(前年の成績での比較という特別規則により2位)。
 '97年に鈴鹿サーキットで行われた世界GP(日本GP)では、スポット参戦でなんといきなり初優勝。しかも翌'98年には2年連続で優勝をおさめた。8時間耐久レースでも'98、'99年とポールポジションを獲得。得意の鈴鹿で開催される第3戦の日本GPでも、優勝候補筆頭にあげられている。
「鈴鹿は好きですね。もてぎ(第15戦を開催)も好きだし、このふたつのレースは両方とも勝ちたい。あとのサーキットは初めて行くところが多いので、できるだけ周回を重ねて、コースを覚えないと。1月にスペインで走った時はそこそこでしたけど、でも、まだまだ」
 転戦地は、5月からはヨーロッパが主体になる。彼のチーム“ホンダ・グレッシーニ”の本拠地は、イタリアだ。
「ボローニャの南、リミニという海沿いの町が生活の拠点になります。移動用にモーターホームも借りました。生活については岡田忠之さん(500ccクラスに参戦中)にいろいろ教えてもらってます。向こうでの情報源はインターネットからですね。Eメールを使うのが一番多いかな。海外テストの時にも持って行ったし。英語? あんまりできないです。とりあえず徐々に覚えれば(笑)」
 体の小ささを全く感じさせないほど豪快な走りで、国内のファンを魅了してきた加藤。今年は手探りとなるはずの年だが、今までのライダーが口にした、いわゆる“勉強の年”にするつもりはないという。とらえどころのない話し方で、しかし彼はきっぱりとこう言った。
「とにかく勝ちたい。開幕してみないと状況はわからないから、始まってみてだけど。でも、走るからにはチャンピオンを目指します」

撮影:山本 潮

プロフィール

●かとうだいじろう
'76年、埼玉県生まれ。162cm、52kg。3歳からポケバイにのり、5歳で初レース。'97年全日本選手権250クラスチャンピオン。'97、'98年「世界選手権」日本GP優勝。今季よりイタリアの名門・チームグレッシーニに所属し、WGPに参戦する。

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