●さいとうゆうや
'77年、東京都生まれ。185cm、100kg。サントリー所属、ポジションはナンバー8。明治大で1年からレギュラーとして活躍、関東大学対抗戦3連覇に貢献する。'00年、サントリーに入社。'01年5月、中華台北戦で日本代表初キャップを飾る。現在キャップ数は5。

第105回
斉藤祐也(ラグビー)

 おそらく、同じグラウンドに立っていたら、地響きを感じるのではないか。それくらい、芝生をバシバシ足の裏で力強く叩きながら疾走する。広い肩幅で均整のとれた185p、100s。ラグビーの全国社会人大会で決勝に進出したサントリーのナンバー8である。
 スクラムの最後尾に位置し、攻守の起点になる背番号8は、かつてはパワフルに相手を吹っ飛ばす猛牛のような存在だった。しかし、斉藤祐也は、右に左に体を揺するステップワークで防御をかわす、新しいタイプ。すでに昨春、日本代表に選ばれ、ウエールズ、カナダ、サモアといった世界の強豪国とも互角に渡り合える身体能力も証明済み。2002年、「スピードアタック」というキャッチフレーズを掲げ、6月にスタートするラグビーワールドカップ・アジア予選に臨む日本代表のキーマンでもある。
「ボクは突破役なので、そこに徹しています。昨シーズンのサントリーは、パターンを決めて、サインプレイを何度も続けていくような形でしたけど、今シーズンは、早めにトライを取っていくスタイルになった。ボクの特徴はスピードだと思うし、他のナンバー8とは違う動きで行こうと思っています」 
 中学時代はサッカー部。ラグビーを始めたのは東京高校入学後のこと。
「小さな頃から、野球、剣道、水泳、サッカーと、いろんなスポーツをやってきて、次は何をやろうかなって思っていて、たまたまラグビーを選んだんです。サッカーは、中学3年までやったけど、相手を抜いたりするのがだんだん難しくなってきて、なんか自分に合わないかなと思って。ラグビーをやりたいって先生に相談したら、東京高校を推薦されたんです。やり始めたら、面白かった。何より、ボールを持ってどこまででも走っていいのが気持ちよかったですね。高校時代に、ボールを持ったら、相手を吹っ飛ばして走ることに快感を覚えてました。でも下手くそで、ルールも把握してなかったんです(笑)」
 それでも、抜群の運動能力は関係者の目に留まり、2年生から高校日本代表に選ばれ、明治大学では1年生からレギュラー。大学随一の人気を誇る早明戦に1年生から4年間連続出場し、全勝するという快挙もやってのけた。4年生時はキャプテン。4年間で全国優勝1回、準優勝2回という好成績を収めている。
 入社して2年目のサントリーでも、すでにチームの柱だ。しかし、日本の社会人ラグビーは仕事とラグビーの両立が基本である。斉藤も、中之島にある会社の寮で6時半に起床、「時間がもったいないから」と、コンビニのおにぎりをほおばりながら麹町の営業部に朝9時に出社。新規市場の開拓を担当しながら、連日、夕方の練習に駆けつける。練習をして、寮に帰ると夜9時〜10時。床についた時は、12時を過ぎることもしばしばだ。
「ラグビー以外になかなか時間がないんですが、暇があると、ビデオを借りに行ったりして映画を見てます。アクション物が好きですね。DVDも持っているけど、使い方がわからない(笑)」
 睡眠時間が少ない分、食事には気を使っている。菓子類は食べないし、炭酸ジュースなども飲まない。怪我が少ないのも、斉藤の特長。ただ、端正な顔立ちの鼻が少し曲がっている。これは、昨シーズンの試合中に陥没骨折した時のもの。手術をしたが、完全に元には戻らなかったらしい。昨春には、オーストラリアに2ヵ月間の留学。語学を学びながら、プロのラグビー選手たちと生活を共にした。
「プロには興味あります。理想としては、好きなラグビーに一日を費やしたいですから。オーストラリアで、プロの生活を体験したのですが、すごく楽しかった。ただ、向こうのトップと比べると、まだまだパワーもスピードも足りません。今、体重が100sなんですが、110sくらいにしたいですね。レベルの高いところで、自分がどのレベルにあるか知りたいから、海外でプレイすることに興味はありますけど、今はサントリーで1シーズンごと、優勝を狙って頑張るだけです」
 インタビューに受け答えする物腰は柔らかいが、試合になれば表情が豹変する。相手が強くなればなるほど、野生の本能むき出しに向かっていく面も斉藤の魅力だ。昨年6月、日本代表としてウエールズ代表と戦った時の怖いくらいの表情は印象的だった。
「日本を代表しているという誇りがありましたね。桜のジャージーは好きじゃなかったけど、実際に自分が選ばれてみると、考えが変わりました。国同士の戦いだし、勝たなければならない試合でしたから」
 今季の目標を問いかけると、ひと言「勝つこと」。サントリーでの全国制覇、日本代表でのワールドカップアジア予選突破へ、斉藤祐也の爆発的な突進力が敵の防御を切り裂く。

取材・文:村上晃一
撮影:スエイシナオヨシ


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