音楽だけにとどまらない、中田ワークスの広がりとは?
プロデューサー/リミキサー/DJとして、時代の先端を担うアーティストとなった中田ヤスタカ(capsule)。音楽シーンはもちろん、映像、ファッション、サロン……と、多方面で活躍する彼が提示してくれるのは、オリジナルもあれば、モデルやブランドとのコラボもある、セレクトショップが当たり前となった時代の新しい音楽のあり方なのだ。
いまや “日本で最もオファーの多い”プロデューサーとなった中田ヤスタカだが、彼が音楽だけでなく、トータルでプロデュースしているのは、本人曰く、「本体で基地。リアルタイムの自分にいちばん近い」というcapsuleだけ。サウンドのプロデュースはもちろん、アートディレクションやミュージック・クリップ、スタイリングまでの全てを彼自身が手がけている。
『MORE! MORE! MORE!』花王エッセンシャルのCMソング『more more more』やTBS系列「どうぶつ奇想天外!」のエンディング・テーマに起用された『Pleasure ground』を含む、待望のニュー・アルバム。フレンチディスコやエレクトロはもちろん、バンドサウンドやヒップホップまで。ジャンルのバリエーションとサウンドの組み合わせが豊富で、クラバーじゃなくても楽しめるし興奮する、アッパーでポップな作品となっている。 |
『FLASH BACK』クラブカルチャーの開拓者となった中田ヤスタカの現場感覚と、ポップスフィールドからの希求が交差した、9枚目のアルバム。既発曲を最新のモードでリメイク/リアレンジしたリミックスベストをリリースしたあとの作品で、結果的にクラブカルチャーとポップスの橋渡しを果たし、capsuleの第3期の幕開けを飾る1枚となった。 | |
『Sugarless GiRL』ボッサ、ジャズ、フレンチ、ラウンジなどの要素を含んだ、フューチャーリスティックでレトロモダンな第1期を経て、より硬質でエッジーなエレクトロサウンドを打ち出した第2期の代表作。パンクやロックのテイストも増え、より攻撃的なフロア対応のアルバムとなっている。 |
ここで紹介するサウンド・プロデュースは主にふたつに分かれている。Perfumeや鈴木亜美は、詞曲とアレンジ、楽曲の全てを手がけているが、MEGやCOLTEMONIKHAはそれぞれのシンガーに歌詞を任せている。前者はいわゆるアイドルで、後者はモデルや自身のブランドのデザインも手がけるアーティストでもあるため、プロデュースというよりはコラボレーションに近い感覚なのかもしれない。
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『COLTEMONIKHA2』ひと言で言えば、ポップで踊れるファンタジー。ただ、かわいいだけではなく、やはりエッジーであり、ちょっと意地悪な、キツめのアプローチが施されている。きらびやかな衣装をまとった小悪魔的な景都の歌声は、まるで童話のようなストーリーや映像を想起させてくれる。 |
『Dream Fighter』日本武道館2daysを大成功に収めたPerfumeの最新シングル。エイティーズを思わせるディスコナンバーで、これまで以上にメロディと歌詞、それぞれの歌声が際立つ作りになっている。サウンド面で語られることが多い中田だが、彼のメロディメイカーとしての才能にも注目して欲しい。 | |
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『PRECIOUS』エレクトロでダンサブル、キャッチーでガーリーなキラーチューンに、女の子らしいキュートな主張のある歌詞と、ドロッピーな歌声の組み合わせが魅力。ジャケやミュージックビデオもスタイリッシュで、アートディレクションは、2008年9月に急逝してしまった野田凪が担当している。 |
『Supreme Show』10周年記念第1弾シングル『ONE』、第2弾シングル『can’t stop the DISCO』を含むニュー・アルバム。全曲中田ヤスタカプロデュースで、『SUPER MUSIC MAKER』の2008年バージョンも収録。エレクトロポップながらも彼女の歌声の存在感や強さも前面に押し出されているのが印象的。 |
今いちばんオントレンドなクリエイターが大集合した青山テルマの最新リミックス・アルバム『PARTY PARTY ~』で、「リズム」のリミックスを手がけるなど、リミキサーとしての評価も高い中田ヤスタカ。既存の楽曲からサウンドを除いた歌声(素材)だけをもらい、その歌声に合わせた音(洋服)を積み重ねていくという作業には、彼のデザイナー/スタイリスト的な感覚も発揮されている。
capsuleでミュージック・ビデオやジャケットのアートワークも手がけている彼は、映像界からも大きな評価を得ている。大塚寧々が主演した映画『うつつーUTUTU』のサウンドトラックに続き、戸田惠梨香×松田翔太主演のフジテレビ系ドラマ「LIAR GAME」のサウンドトラックを手がけた。スタイリッシュな映像とサスペンスフルなストーリーのドラマ音楽は緊張感をあおるようなトラックが多い。 |
実写版『キューティーハニー』と同時公開されたcapsuleのミュージック・ビデオ「ポータブル空港」は、DVD『ジブリがいっぱいSPECIAL「ショートショート」』に収録。さらに、「space station No.9」「空飛ぶ都市計画」のミュージック・ビデオに加え、百瀬義行監督と中田の対談の模様も収録されている。2006年にはスタジオジブリの短編映画『ジュディ・ジェディ』の原案と音楽を担当した。 スタジオジブリ「ポータブル空港」「space station No.9」「空飛ぶ都市計画」
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他にも、RAMRIDER「きみが好き」、リア・ディゾン『恋しよう』のリミックス(1stアルバム『Destiny Line』収録)や、ファッション・ブランド<フラボア>のコレクション音楽、アニメ「月面兎兵器ミーナ」のエンディング・テーマでのサウンド・プロデュース、ゲーム「ことばのパズルもじぴったん大辞典」(ナムコ)のリミックス、三井グリーンランドのCM音楽製作などなど、音楽、ファッションに留まらず、中田ヤスタカが手がけるシーンは次々と広がっている。
Text●永堀アツオ
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