「スタンスは変わらない」一青窈、新たなスタート

音楽劇「箱の中の女」

音楽だけにとどまらない、中田ワークスの広がりとは?

プロデューサー/リミキサー/DJとして、時代の先端を担うアーティストとなった中田ヤスタカ(capsule)。音楽シーンはもちろん、映像、ファッション、サロン……と、多方面で活躍する彼が提示してくれるのは、オリジナルもあれば、モデルやブランドとのコラボもある、セレクトショップが当たり前となった時代の新しい音楽のあり方なのだ。

トータル・プロデュース

いまや “日本で最もオファーの多い”プロデューサーとなった中田ヤスタカだが、彼が音楽だけでなく、トータルでプロデュースしているのは、本人曰く、「本体で基地。リアルタイムの自分にいちばん近い」というcapsuleだけ。サウンドのプロデュースはもちろん、アートディレクションやミュージック・クリップ、スタイリングまでの全てを彼自身が手がけている。

capsule
2001年にシングル『ハイカラガール』でメジャー・デビューした、ボーカル<こしじまとしこ>との2人組ユニット。最新作『MORE! MORE! MORE!』を含め、10枚のオリジナル・アルバムと、ベスト盤的なセルフ・リミックス・アルバム『capsule rmx』がリリースされている。エレクトロ/ハウス/ディスコパンク/ラウンジポップ/ロック/カットアップなど、様々な要素を独自の感性で混ぜ合わせた最先端のサウンドセンスと、ファッショナブルなデザイン性から、デビュー以来、服飾や美容関係者からの熱い支持を受け続けている。代官山AIRなどのクラブでレギュラーDJを務め、ファションショーやサロン主催のイベントにもゲストDJとして招かれる彼の現場感覚がビビッドに現れるアルバムは、クラブの空気感をパッケージした内容となっていたが、中田ヤスタカとエレクトロというジャンルがポピュラリティーを得た今、彼が鳴らす音楽こそが、全てのジャンルを飲み込んだ最新のポップスと呼ぶに相応しいのではないかと思う。

これを聞け!

『MORE! MORE! MORE!』

花王エッセンシャルのCMソング『more more more』やTBS系列「どうぶつ奇想天外!」のエンディング・テーマに起用された『Pleasure ground』を含む、待望のニュー・アルバム。フレンチディスコやエレクトロはもちろん、バンドサウンドやヒップホップまで。ジャンルのバリエーションとサウンドの組み合わせが豊富で、クラバーじゃなくても楽しめるし興奮する、アッパーでポップな作品となっている。

2008年11月19日リリース

YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
(DVD付き初回盤)2940円 YCCC-10012/B
(通常盤)2625円 YCCC-10013

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これを聞け!

『FLASH BACK』

クラブカルチャーの開拓者となった中田ヤスタカの現場感覚と、ポップスフィールドからの希求が交差した、9枚目のアルバム。既発曲を最新のモードでリメイク/リアレンジしたリミックスベストをリリースしたあとの作品で、結果的にクラブカルチャーとポップスの橋渡しを果たし、capsuleの第3期の幕開けを飾る1枚となった。

2007年12月5日リリース / 2310円

YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
YCCC-10011

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これを聞け!

『Sugarless GiRL』

ボッサ、ジャズ、フレンチ、ラウンジなどの要素を含んだ、フューチャーリスティックでレトロモダンな第1期を経て、より硬質でエッジーなエレクトロサウンドを打ち出した第2期の代表作。パンクやロックのテイストも増え、より攻撃的なフロア対応のアルバムとなっている。

2007年2月21日 / 2310円

YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
YCCC-10008

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サウンド・プロデュース

ここで紹介するサウンド・プロデュースは主にふたつに分かれている。Perfumeや鈴木亜美は、詞曲とアレンジ、楽曲の全てを手がけているが、MEGやCOLTEMONIKHAはそれぞれのシンガーに歌詞を任せている。前者はいわゆるアイドルで、後者はモデルや自身のブランドのデザインも手がけるアーティストでもあるため、プロデュースというよりはコラボレーションに近い感覚なのかもしれない。

COLTEMONIKHA
“コルテモニカ”とは、音楽レーベル“コンテモード”を主催する中田ヤスタカと、ファッションブランド「メイド・イン・コルキニカ」のデザイナーで、モデルでもある酒井景都によるコラボユニット。「音楽ではない部分から音を作っていくのが好き」という中田と、「頭のなかにある世界観を落とし込むのは、絵本でも洋服でも音楽でもいい」という景都のフェイクな遊び心が詰まっている。 Perfume
2003年に活動の拠点を広島から東京に移した際に、プロデューサーとして中田ヤスタカを迎えた。デビュー以来、書き下ろし楽曲によるプロデュースを続け、2008年4月にリリースしたアルバム『GAME』でチャート1位を獲得。丸5年も関わっているだけに、Perfumeの曲調やサウンドの変化は、彼の音楽的な趣味の変化としても楽しめる。

これを聞け!

『COLTEMONIKHA2』

ひと言で言えば、ポップで踊れるファンタジー。ただ、かわいいだけではなく、やはりエッジーであり、ちょっと意地悪な、キツめのアプローチが施されている。きらびやかな衣装をまとった小悪魔的な景都の歌声は、まるで童話のようなストーリーや映像を想起させてくれる。

2007年9月26日リリース / 1785円

contemode YCCC-10009

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これを聞け!

『Dream Fighter』

日本武道館2daysを大成功に収めたPerfumeの最新シングル。エイティーズを思わせるディスコナンバーで、これまで以上にメロディと歌詞、それぞれの歌声が際立つ作りになっている。サウンド面で語られることが多い中田だが、彼のメロディメイカーとしての才能にも注目して欲しい。

2008年11月19日リリース / 1000円

徳間ジャパン TKCD-73395

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MEG
2002年7月に岡村靖幸との共作シングル『スキャンティブルース』でデビュー。以降、シンガーとしての活動を続けながらも、自身のブランド<キャロライナ・グレイザー by cherry>を立ち上げ、モデルやデザイナーとしても活躍。2007年のシングル『甘い贅沢』以降の作品のプロデュースは全て中田ヤスタカが手がけており、最もファッション的な組み立てのコラボレーションとなっている。
鈴木亜美
2007年8月にリリースされた鈴木亜美のjoinシングル第4弾『FREE FREE/SUPER MUSIC MAKER』に続き、2008年は、10周年記念シングルを含む最新アルバム『Supreme Show』の全曲をプロデュース。鈴木亜美に関しては「彼女の存在が有名だけどミチだっていう不思議さを感じていたので、彼女自身がいまカッコいいと思ってる音楽にできるだけ近づけたつもり」と語っている。

これを聞け!

『PRECIOUS』

エレクトロでダンサブル、キャッチーでガーリーなキラーチューンに、女の子らしいキュートな主張のある歌詞と、ドロッピーな歌声の組み合わせが魅力。ジャケやミュージックビデオもスタイリッシュで、アートディレクションは、2008年9月に急逝してしまった野田凪が担当している。

2008年9月17日リリース / 1200円

ユニバーサルJ UPCH-5555

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これを聞け!

『Supreme Show』

10周年記念第1弾シングル『ONE』、第2弾シングル『can’t stop the DISCO』を含むニュー・アルバム。全曲中田ヤスタカプロデュースで、『SUPER MUSIC MAKER』の2008年バージョンも収録。エレクトロポップながらも彼女の歌声の存在感や強さも前面に押し出されているのが印象的。

2008年11月12日リリース / 3990円(初回盤)

avex trax AVCD-23708BX

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リミックス・ワークス

今いちばんオントレンドなクリエイターが大集合した青山テルマの最新リミックス・アルバム『PARTY PARTY ~』で、「リズム」のリミックスを手がけるなど、リミキサーとしての評価も高い中田ヤスタカ。既存の楽曲からサウンドを除いた歌声(素材)だけをもらい、その歌声に合わせた音(洋服)を積み重ねていくという作業には、彼のデザイナー/スタイリスト的な感覚も発揮されている。

青山テルマ「リズム(Yasutaka Nakata(capsule) Remix)」
※『PARTY PARTY ~Thelma Remix~』収録
2008年12月10日リリース / 2300円
ユニバーサルJ UPCH-1650
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土岐麻子「君に胸キュン(Yasutaka Nakata-capsule remix)」
※リミックス・アルバム『TOKI ASAKO REMIXIES WEEKENDSHUFFLE』に収録
2007年11月21日リリース / 2415円
Pacific
LDCD-50038
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m-flo loves MINMI「Lotta Love」(-yasutaka nakata capsule mix-)
※リミックス・アルバム『electric COLOR -COMPLETE remix-』に収録
2007年9月26日リリース / 2940円
rhythm zone RZCD-45631
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サウンドトラック

ミュージック・クリップ

capsuleでミュージック・ビデオやジャケットのアートワークも手がけている彼は、映像界からも大きな評価を得ている。大塚寧々が主演した映画『うつつーUTUTU』のサウンドトラックに続き、戸田惠梨香×松田翔太主演のフジテレビ系ドラマ「LIAR GAME」のサウンドトラックを手がけた。スタイリッシュな映像とサスペンスフルなストーリーのドラマ音楽は緊張感をあおるようなトラックが多い。

サウンドトラック『LIAR GAME サウンドトラック』

2007年5月23日リリース / 1785円

contemode / YCCW-50004

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実写版『キューティーハニー』と同時公開されたcapsuleのミュージック・ビデオ「ポータブル空港」は、DVD『ジブリがいっぱいSPECIAL「ショートショート」』に収録。さらに、「space station No.9」「空飛ぶ都市計画」のミュージック・ビデオに加え、百瀬義行監督と中田の対談の模様も収録されている。2006年にはスタジオジブリの短編映画『ジュディ・ジェディ』の原案と音楽を担当した。

スタジオジブリ「ポータブル空港」「space station No.9」「空飛ぶ都市計画」
※DVD『ジブリがいっぱいSPECIAL「ショートショート」』に収録

2005年11月16日リリース / 3990円

ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント / VWDZ-8078
©2005 STUDIO GHIBLI

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他にも、RAMRIDER「きみが好き」、リア・ディゾン『恋しよう』のリミックス(1stアルバム『Destiny Line』収録)や、ファッション・ブランド<フラボア>のコレクション音楽、アニメ「月面兎兵器ミーナ」のエンディング・テーマでのサウンド・プロデュース、ゲーム「ことばのパズルもじぴったん大辞典」(ナムコ)のリミックス、三井グリーンランドのCM音楽製作などなど、音楽、ファッションに留まらず、中田ヤスタカが手がけるシーンは次々と広がっている。

Text●永堀アツオ