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宝塚歌劇月組日生劇場公演 ミュージカル「オクラホマ!」
宝塚歌劇月組日生劇場公演 ミュージカル「オクラホマ!」写真

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テンガロンハットにバンダナ、ウエスタン・ブーツにロデオ…。アイテムはたくさん知っているものの、実際は遠い過去になりつつあるカウボーイの時代。この『オクラホマ!』は20世紀初頭のアメリカ中西部を舞台に、気は荒いが男気のあるカウボーイ・カーリーと、農場の娘ローリーとの恋を描く、明るく肩の凝らないブロードウェイ・ミュージカル。今回は1943年の初演以来、ロジャース&ハマースタインIIという強力コンビの名曲の数々で世界中に愛されている同作に、専科の轟悠と月組精鋭メンバーが挑戦。さらに『雨に唄えば』、『ファントム』等の潤色・演出で近年頭角を表した中村一徳が、演出を担当。作品、キャスト、演出と、三者がバランスよく対峙する正統派ミュージカルの幕が、日生劇場でいよいよ開く。


≪the Point-1 【古き良き西部劇の傑作】≫

『オクラホマ!』は1943年初演のブロードウェイ・ミュージカル。公演当時は未踏の2248回ロングランを記録、爆発的ヒットとなった。その要因は、なんといってもリチャード・ロジャース(作曲)とオスカー・ハマースタインII(脚本と作詞)の名コンビが送り出した、美しく覚えやすい名曲の数々。すぐにはピンとこない向きも、『サウンド・オブ・ミュージック』や『王様と私』のコンビといえば、納得がいくだろう。『オクラホマ!』はその後、’55年に映画化され、こちらも世界中で大ヒット。「美しい朝」、「ノーとは言えない」、「恋仲だと人は言う」、そしてラストの「オクラホマ!」は、ある世代にとって懐かしく、また胸躍るナンバーだ。この名作を、宝塚歌劇団では’67年に海外ミュージカル作品の第一弾として上演。大好評を博し、この成功が翌年の『ウエストサイド物語』(文化庁芸術祭賞大賞)、翌々年の『回転木馬』上演へとつながってゆく。今ではオリジナル作品と並行し、『エリザベート』や『ファントム』など、海外ミュージカルの輸入も盛んに行われている同歌劇団。『オクラホマ!』は、現在の豊かな実りをもたらした、大元ともいえる作品なのだ。


≪the Point-2 【華も実もある出演者】≫

物語は20世紀初頭のオクラホマ州。カウボーイのカーリー(轟悠)と、広大な農場を持つ家に住むローリー(城咲あい)との素直になれない恋の駆け引きに、農場で働くジャッド(霧矢大夢)のローリーへの横恋慕も絡み、物語は意外な方向へと向かってゆく。とはいえ舞台はあくまで明るく楽しく、古きよきアメリカの空気と多彩な名曲が散りばめられたミュージカル。その正統派の舞台で、今や「男らしいアメリカ男」のアイコンで語られることのほうが多い「カウボーイ」を、本来は女性である男役の轟悠が、どうリアルに演じてみせるのか注目だ。
雪組トップスターとして活躍した後、現在は専科として宝塚歌劇団の理事も兼任する轟悠だが、その芝居心は歌劇団でも屈指の実力。月組公演『暁のローマ』(’06年)では自分の宿命を受け入れて死んだカエサルを、星組公演『長崎しぐれ坂』(’05年)では凶状持ちの伊佐次に扮し、江戸時代の風情を余すところなく表して高い評価を得た轟。一方轟の相手役、ローリーを務める城咲あいも芝居の勘のよさに加え、スラリとした容姿が目をひく新進の娘役。またカーリーの恋敵となるジャッドを演じる霧矢大夢は、的確な演技力と豊かな歌声で月組の2番手男役のスター。人気、実力共に充分の3人が、真剣勝負で日生劇場という大舞台に立つ。


≪the Point-3 【多くの翻訳物を手掛ける演出家】≫

近年の宝塚歌劇団の翻訳ミュージカルといえば、大ヒットとなった『エリザベート』や、’04年に宙組、さらに今年は花組が上演して連日超満員となった『ファントム』があげられる。『オクラホマ!』で演出を担当する中村一徳は、その『エリザベート』(’02年度花組版)で潤色・演出の小池修一郎と共同演出を経験。’03年の『雨に唄えば』(日生劇場)での単独演出を経て、翌年の『ファントム』の潤色と演出で大成功を収めた新鋭。同時にタカラヅカならではのショー作品『REVUE OF DREAMS』(’05年)や『ザ・ビューティーズ』(’00年)等も手掛け、美しい色彩の調和と緻密に構築されたステージングとが、芝居だけでなくショーを楽しみに通う観客にも人気の演出家だ。「生徒」と称される宝塚歌劇団所属の出演者達をどう生き生きと魅せるかが、彼女らに「先生」と呼ばれる座付き演出家の使命でもあるのだが、そこは『ファントム』の同じエリック役でも、和央ようかには純粋さからくる狂気を、再演の春野寿美礼には母への思慕から生まれた少年性を付与した中村のこと。今回、カウボーイという男の中の男を演じなければならない轟に、どんなキャラクターを加えてくれるのか。大いに期待しつつ開幕を待ちたい。

文:佐藤さくら





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